皆さんこんにちは!
第2次トランプ政権になってから半年経ちました。米国の産業は活性化したのでしょうか?
数々の大統領に署名をしたトランプ大統領。その中で力を入れているのがAAM(アドバンスエアモビリティ:次世代モビリティ)です。その影には・・・
運輸長官がAAM車両の迅速化プログラムを発表
ニコラ・サーク氏(右)、アーロン・エスコ氏(左)。米国ニューヨーク州の企業であるESCO AEROSPACE社(航空宇宙・防衛部門では、軍用機や民間航空機向けの部品などを製造している)の創設者です。
ショーン・P・ダフィー米国運輸長官は、先進航空機動(AAM)車両の配備を加速するため
に連邦航空局(FAA)内で新たなパイロットプログラムを発表したとプレスリリースで報じられています。
eVTOL統合パイロットプログラム(eIPP)として知られるこのプロジェクトは、州政府や
地方自治体、民間企業と官民パートナーシップを形成し、安全な運航を可能にするための
新しい枠組みと規制を開発することを目的としています。
ダフィー氏は、「航空分野における次なる偉大な技術革命は今まさに到来しています。米国
がその先頭に立つことで、輸送技術革新における世界のリーダーとしての地位を確固たるものにすることができるでしょう」と述べました。
彼は続けて、「これは、高給の製造業の雇用と経済機会の増加を意味します。これらの
未来的なエアタクシーやその他のAAM車両の安全な運用試験を行うことで、人々の移動と
製品の移動を根本的に改善することができます。」と述べました。
eIPPには少なくとも5つのパイロットプロジェクトが含まれます。最初のプログラムの
運用開始後、3年間実施されます。想定されるeIPPの運用には、以下のものへの有人および無人アプローチが含まれます。
:短距離の空中タクシー。
:長距離の固定翼飛行。
:貨物。
:緊急管理、医療輸送、またはオフショアエネルギー施設に役立つ物流と供給。
:自動化の安全性の向上。
リリースでは、「これらの新技術は、アメリカの農村地域への接続の拡大、都市部の道路
渋滞の緩和、緊急サービスや医療輸送の強化など、航空業界を変革する可能性を秘めている」と説明されています。
この行動は、アメリカのドローン優位性を解き放つというトランプ大統領の大統領令に従ったものです。
FAA長官のブライアン・ベッドフォード氏は、「このプログラムは、米国全土における
安全なeVTOLと先進航空モビリティの運用を加速させる新たな機会となります。これらの
プロジェクトから得られた教訓を活かし、全米で安全かつ拡張性の高いAAM運用を実現していきます」と述べました。
ジョビー、アーチャー、ベータテクノロジーズなど米国の大手eVTOL企業がこのパイロット
プロジェクトで重要な役割を果たすことになります。
ベータの政府および規制問題担当責任者であるクリステン・コステロ氏は、「このプログ
ラムの開始は、航空宇宙分野における米国のリーダーシップを維持するための重要なステッ
プであり、米国のイノベーションの新時代を可能にするという政権の取り組みを強化するものです」とコメントしました。
アーチャー・アビエーションの創業者兼CEOであるアダム・ゴールドスタイン氏は、
「これは私たちの業界と国家にとって画期的な瞬間です。政権は、実用的な方法で完全な
認証取得に先立ち、米国の都市におけるeVTOL運航の統合を優先しています」と断言しました。
同氏はさらに、「これらの初期飛行は、先進航空分野におけるアメリカのリーダーシップを
確固たるものにし、大規模な商業運航の土台を築くのに役立つだろう」と付け加えました。
FAA は、eIPP の一環として、米国国民に新たな利益をもたらす形で eVTOL 航空機を
含む新しい AAM テクノロジーの実現可能性を実証するための官民パートナーシップ プログラム への参加者を募集しています。
申請者は、米国を拠点とする民間セクターのパートナーを持つ州政府、地方政府、部族政府、または準州政府でなければなりません。
参加者は、有人、任意有人、または無人のAAM航空機を使用します。これらの航空機は
通常1,320ポンド(600kg)以上で、乗客を乗せることも可能となります。また、これらの
航空機を国家空域システムに安全に統合するための技術についても検討します。
電動垂直離着陸 (eVTOL) および先進航空機移動航空機統合パイロット プログラム (eIPP)
2025年6月6日付の大統領令14307号「米国のドローン優位性の解放」において、大統領は
UAS技術の安全な商業化を加速し、UASを国家航空宇宙システム(NAS)ならびにeVTOL
およびその他のAAM航空機の運用に完全に統合することが米国の政策であると宣言しまし
た。大統領は運輸長官に対し、FAA長官を通じて科学技術政策局(OSTP)局長と連携し
州、地方、部族、および準州(SLTT)政府が、eVTOLまたはその他のAAMの開発、製造
運用、またはNASへのAAMの統合を可能にする新しい支援技術において実績のある民間組織
と提携できる統合パイロットプログラムを設立するよう指示しました。大統領令の文言に
従い、少なくとも1つの民間パートナーと提携し、1つ以上の国家目標を達成する計画を
持つSLTT政府(eIPP提案者として)は、eIPPへの参加を申請できます。 SLTT は、地域
社会の利益を代表する重要な責任を担いながら、運営と計画のホストとして重要な役割を果たします。
このSIRでは、様々な組織と協力することで成功を収められる提案者を求めています。
これにより、航空業界に期待される高い安全基準に沿って、これらのプロジェクトを加速
させることができます。これらのプロジェクトが成功すれば、AAMセクターを支援・監督
するより広範な規制枠組みの構築に役立つ、豊富なデータと教訓が得られることが期待されます。
中国との関係性
eIPP自体は、特定の国を名指ししたものではありませんが、eVTOL開発を巡る米中間の競争は、その背景に存在していると考えられます。
- 技術的優位性の確保: eVTOL技術は、単なる「空飛ぶクルマ」に留まらず、将来の航空宇宙産業や防衛産業における重要な技術と見なされています。米国政府は、eIPPを通じて国内企業を支援し、この分野での技術的優位性を確保しようとしている可能性があります。
- 防衛・軍事への応用: eVTOLは、軍事的な用途にも応用可能であり、米空軍はeVTOL機を「空飛ぶジープ」と称して、人員・物資輸送や偵察、救護活動などへの利用を検討しています。米空軍のプログラム「Agility Prime」を通じて、eVTOL企業と契約を結び、技術実証や機体納入を進めています。
このように、eIPPは直接的には民間向けの商業化プログラムですが、その背後には
eVTOL技術を巡る国際的な競争、特に中国を含む他国との技術開発競争が存在していると考えられます。
eIPPは中国を直接のターゲットとした大統領令ではありませんが、米国の技術的リーダー
シップを維持し、将来の防衛・安全保障分野での優位性を確保するという広範な戦略の一環と見なすことができます。
民間産業との協力という新しいアプローチ
eIPP(eVTOL統合パイロットプログラム)は、トランプ政権の民間産業分野への注力姿勢
を象徴するものであり、ご指摘の軍事費削減やNASAの経費削減とは、必ずしも相反するも
のではなく、むしろ共通の戦略の一部と見なすことができます。
トランプ政権の宇宙・防衛政策と民間産業
トランプ政権の宇宙開発や防衛に関する政策は、以下のような特徴が見られます。
- 「米国第一」と技術的優位性の確保: 中国を含む外国との競争を強く意識し、宇宙や航空といった重要技術分野での米国の優位性を維持しようとしています。
- 民間との連携強化: NASAの予算要求では、月軌道上の宇宙ステーション「ゲートウェイ」のような政府主導の巨大プロジェクトを縮小・廃止する一方、月や火星への探査は継続し、その実現にはSpaceXのような民間企業のサービスを積極的に活用する方針を示しています。これは、コスト削減と開発スピードの加速を同時に目指すものです。
- 民間技術の軍事転用: 軍事費削減というよりは、むしろ軍事費を効率的に使うため、民間企業が開発した先進技術(eVTOLなど)を軍事目的に転用・活用することに積極的です。米空軍の「Agility Prime」プログラムは、その代表例です。
eIPPの背景
eIPPは、トランプ政権が発令した「米国ドローン優位性の解放(Unleashing American
Drone Dominance)」と題する大統領令に盛り込まれています。この大統領令には、以下の目的が含まれています。
- 国内産業の振興: 外国、特に中国からのドローンへの依存を減らし、国内のサプライチェーンを強化すること。
- 規制緩和: eVTOLの商用運航を加速させるために、FAA(連邦航空局)に規制緩和を指示し、企業が早期に試験運用できるようにすること。
したがって、eIPPは軍事費やNASAの経費を直接削減するものではありませんが、政府の
資金を大規模な公共事業に投入するのではなく、規制緩和や官民連携を通じて民間企業の
技術開発と商業化を後押しすることで、結果的に国防と宇宙開発の目標をより効率的に達成しようという戦略の一部と言えます。
トランプ政権は、軍事費やNASAの経費を「削減」するのではなく、民間産業との協力と
いう新しいアプローチで「より効率的に活用」することで、国防と宇宙開発の両面で米国の競争力を高めようとしているのです。
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