英国、水素推進で世界制覇を目指す

飛行機

皆さんこんにちは!

進行する地球温暖化。その対策で、世界各国は2050年までにCO2排出「ゼロ」とい

う課題を突きつけられています。とりわけヨーロッパでは、国民意識も強く国として

も積極的に政策を進めていかなければなりません。やり玉に挙げられているのは、

航空機です。そのため、各航空会社はSAF(持続可能燃料)、電動化、そして水素エ

ンジンなどで対応しようとしています。

その中、英国は水素で世界の頂点を目指しています。

ローガンエア、2027年までに水素エネルギーによる島民運航を目指す

水素電気アイランダーを採用

クランフィールド航空宇宙ソリューション

水素電気アイランダーは、オークニー諸島カークウォールからのローガンエアの島間便で使用される予定(クレジット: クランフィールド航空宇宙ソリューション)

スコットランドの地域航空会社ローガンエアは、2027年までにオークニー諸島カーク

ウォールで水素電気のブリテン・ノーマン・アイランダー号を運行させることを目的

として、クランフィールド・エアロスペース・ソリューションズとの協力を強化して

います。

クランフィールド・エアロスペース・ソリューションズ(CAeS)は250kWの水素を

開発しています。英国政府が支援するプロジェクト・フレッソンのもとで、9人乗りア

イランダー用の燃料電池パワートレインが開発され、2026年末までの認証を目指して

います。ローガンエアは、2019年の開始以来、このプロジェクトを支援してきました。

CAeSとローガンエアは、新たな覚書の下で、さらなる提携を目指します。水素電気

アイランダーの商用展開を確実にするという目的での協力であり、特にオークニー地

域内での運航サービスへのゼロエミッション航空機の導入を目標としています。

「私たちは、詳細な運用分析、運用コスト、インフラストラクチャ要件、標準、規制、

利害関係者の関与に関してローガンエアと緊密に連携することで、この新しいテクノ

ロジーの導入に対して共同で実用的かつ現実的なアプローチをとっています」と

CAeS 最高戦略責任者の ジェニー・カバナー氏は述べています。

ローガンエアーは、オークニー諸島の島間路線でピストン駆動のアイランダーを運航し

ていますが、同機用の水素電気パワートレイン転換の購入にはまだ約束していません。

オーストラリアのチャーター航空会社トーレス・ストレイト・エアは、モンテ・エアク

ラフト・リースを通じて最大10人の島民を変換する契約をCAeSと締結しました。

ローガンエアは、グラスゴーから離れた空港にサービスを提供するデ・ハビランド・

カナダ DHC-6 ツイン オッター 3 機を改造する可能性も検討しています。英国と米国

の新興企業であるゼロアビア は、600 kW の水素電気パワートレインを開発中で、最

初はセスナ キャラバンで、その後はツイン オッターで利用可能になる予定です。

ゼロアビアは、2025年にZA600を認証する予定です。スコットランドのエディンバラ

に本拠を置く新たに就航した地域航空会社エコジェットは、2024年に従来型動力のツ

インオッターで運航を開始する予定で、貸主モンテとこれらの航空機をZA600水素電

気パワートレインに転換する契約を締結しました。

ローガンエアはATR 72も運航しています。 70 席の地域用ターボプロップ機用の水素と

電気の推進変換は、ゼロアビアと米国の新興企業 ユニバーサル ハイドロゲンの両社に

よって開発中です。エコジェットは、計画されている ATR 72 のフリートを変換するた

めの ZA2000 エンジンについて、既に モンテ およびゼロアビア と契約を結んでい

ます。

ローガンエア

ローガンエアは、イギリスからマン島、ノルウェー、デンマーク、アイルランド

18路線に就航しています。

ローガンエアは、1962年に設立されたスコットランドのコミューター運航会社

です。保有機種は、アイランダーやサーブなど15人から30人乗りの航空機です。

ERJ-145(エンブラエル)を含め、現在稼動機数は38機(2023年度現在)です。

Kiyo.Hさんのローガンエアー ATR 42 (G-LMRA) 航空フォト

ローガンエアATR42(クレジット:FLT TEAM)

近年では、重大インシデントも発生しています。

ローガンエア6780便事故は、2014年12月15日にシェトランド諸島で発生した

航空事故です。

アバディーン空港からサンバラ空港へ向かっていたローガンエア6780便(サーブ

2000型機)が着陸進入中に落雷に見舞われ、その後超過禁止速度(VMO:これ以上

の速度では機体が破壊する恐れがある速度)を上回る速度で急降下しました。

高度1,100フィート (340 m)まで降下しましたがパイロットは機体を立て直し、

アバディーン空港に緊急着陸しました。乗員乗客33人は全員無事でした。

ブラックボックスの記録から、パイロットは落雷によって自動操縦が解除されたと

思い込んでいましたが実際には解除されておらず、パイロットと自動操縦が相反する

操作を行ったため機体の制御が一時的に失われたとの結果でした

この後、航空事故調査局(AAIB)はこの事故を受けて、自動操縦のシステム変更な

どに関する5つの安全勧告を発行しました。

Ecojetは環境に優しい英国のフラッグ・キャリアとなることを目指している

2023年12月にゼロアビアは、新設の航空会社Ecojet(エコジェット)と、最大70機の

水素電気ゼロエミッションエンジンに関する契約を締結しました。

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エコジェットは環境に優しい英国のフラッグ・キャリアとなることを目指しています。

2024年にエジンバラ発着の路線を従来の動力機で運航を開始し、その後、世界初の電気

航空会社となることを目指して機体を転換する予定です。

同航空会社は、認証取得後、航空機にゼロアビアのZA600エンジンを搭載することで目標

を達成するとしています。エコジェットは、ゼロアビアのZA600貸出パートナーである

MONTE(モンテ)と協力し、この技術を市場に投入する予定。ゼロアビアは、2025年

のZA600エンジンの型式証明を目標としています。

新しく就航する航空会社エコジェットは、より強力なZA2000エンジンも大量発注しており

これは最大80席のリージョナル・ターボプロップ機用に設計されており、就航目標は

2027年を予定しています。これにより、世界中のリージョナル路線ですでに人気の高い

ATR72やダッシュ8 400などの航空機を飛ばす可能性が広がります。

ゼロアビア、エコジェットおよびモンテは、空港および他の業界パートナーと協力して、

水素電気商業運航への最初の道筋を特定し、資金を調達するとしています。ゼロアビア

の分析によれば、英国の風力発電によるグリーン水素を動力源とする場合、国内線の旅客

1人当たりのライフサイクル炭素排出量は、完全乗用自動車、国内鉄道、長距離バスを含

む現在の一般的な交通手段のどれよりも少なくなるという試算です。

昨年6月、ゼロアビアは、貸主のモンテとエンジン100基の最終売買契約を締結したと

発表しました。モンテは、エコジェットのパワートレイン購入、設置、運用のための資金

を提供する予定であり、エコジェットは賃貸業者として最初の確定顧客となって、現在

ゼロアビアに予約されている生産枠を受け取ることになる予定です。

ゼロアビアは昨年、英国のグロスターシャー州ケンブルにある拠点で、Dornier 228型

機用のZA600試作機の10回の試験飛行プログラムを完了しました。5月には、ZA2000

エンジンをテストするためのテストベッド機、アラスカ航空から提供されたダッシュ8

400 76人乗り機を発表し、これらの大型機を飛行させるためのコア技術の開発が急速に

進んでいることを発表しています。

電気 CTOL/STOL ニュース【2023 年 最新版】
皆さんこんにちは! 昨日から新社会人になった方も多いかと思います。ワクワクドキドキですね。 今日は、電機航空機の2023年最新ニュースをまとめました。 複数の国や企業にまたがる新しい契約、パートナーシップ、飛行試験により、高度な エアモビリ...

 

英国が水素関連能力を強化する研究を開始

航空宇宙技術研究所 Flyzero コンセプト

FlyZeroプロジェクトのスタッフは、液体水素を燃料とする中型航空会社が航空機の排出量の大部分に対処できる可能性があると結論付けた。(クレジット: 航空宇宙技術研究所)

2023年4月、英国の水素関連の試験能力とスキルに対処するために、航空宇宙技術研究所

(ATI)は、業界が液体水素(LH2)を航空燃料として採用するのを支援するセンター

・オブ・エクセレンスのコンセプトを開発するプロジェクトを立ち上げました。

12か月にわたる調査では、水素能力ネットワークが試験インフラ、LH2の供給と貯蔵

スキルという3つの主要分野で英国の航空宇宙産業をどのようにサポートできるかを

検討します。 ATIは政府資金として129万ポンド(161万ドル)を提供しています。

最初のフェーズ 0 の目標は、LH2 燃料航空機技術の開発を加速するために設計された

オープンアクセス施設のグループの運用モデルを確率することです。研究チームは、

施設運用開始までに水素能力ネットワークの概念を開発する計画です。

フェーズ 0 のステップでは、テスト インフラストラクチャ要件を提供し、テストと

研究用の LH2 の供給に合意し、スキル開発を加速するために LH2 アカデミーを設立

し、ネットワークの初期運用能力を確立するための資金を調達します。

2022 年、ATI の 2 年間、1,500 万ポンドの FlyZero (フライゼロ)プロジェクト

には、英国業界全体から約 100 人の専門家が集まり、ゼロエミッション民間航空に関

する集中的な研究が行われました。この研究では、LH2 が最良の燃料であると特定さ

れ、その推奨事項の 1 つは、センター・オブ・エクセレンスの創設を通じて英国産業

の限られた水素関連能力に対処することでした。

フライゼロ プロジェクトでは、基本的な水素の作動 (極低温を含む) の研究を促進す

るため、オープンアクセス施設を備えた分野横断的な水素技術センターを設立し、

安全な取り扱い、規格と規制、材料特性と試験に関する要件を策定することが推奨

されました。

ATI の最高イノベーション責任者、ハリー・マリンズ氏は次のように述べています。

「このプロジェクトは、フライゼロ プロジェクトが提示した推奨事項を実施すること

により、航空宇宙分野の脱炭素化を推進し、インフラストラクチャー、スキル、能力

を確保する全国的な資産ネットワークを構築します。英国はこの世界的な産業におい

て競争上の優位性を維持する必要がある。」と。

まとめ

水素電気エンジンは、燃料電池で水素を使用して発電し、その水素で電気モーターを動

かして航空機のプロペラを回転させる。排出されるのは水だけです。

自動車業界でも、EV(電気自動車)の開発が進む中、安価を売りに中国の自動車メーカ

ーが台頭しています。それまで、比較的技術面で有利とされていたヨーロッパ各社は

思いのほか苦戦を強いられています。EVでは、完全に後れを取っている日本の自動車

メーカーですが、水素を含めたハイブリッド型エンジンに商機を見いだす動きも出て

きています。

水素エンジンはとても環境に優しいのですが、課題も多いのが現状です。

課題は生成、運搬、管理保管といったインフラ整備です。特に航空機の場合はタンク

の容量が大きくなってしまいペイロードが減ってしまうというリスクがあります。

それをいかに解決していくかが今後の課題です。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

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