2つの航空機事故から考える

飛行機

皆さんこんにちは!

今日は、最近世界で起こった2つの航空機事故について考えてみます。

2つの航空機事故は、メカニカル的な故障ですが、パイロットの判断と操作が結果を分けた

形となりました。どちらもケガ人も出ずにすみましたが。

スパイスジェットの与圧事故

スパイスジェット ボーイング 737-800

航空事故調査によると、運航乗務員が公表された手順を遵守しなかったこと、適切な乗務

員リソース管理の欠如、航空会社の運航およびメンテナンス業務の不備が重なり、2021年

11月にスパイスジェットボーイング737-800型機で重大な客室与圧インシデントを引き起

こしました。

スパイスジェット (SpiceJet) は、 インド の 格安航空会社 です。2005年 5月 から就航

を開始。 当初は、国内線のみの運航でしたが、 2010年 10月 から、カトマンズ、スリラ

ンカ共和国コロンボに就航開始し、国際線に進出しています。

スパイスジェットSG391便は、その日の第2行目となるインドのアーメダバードからインド

のパトナへ向かう途中でした。AAIB( Air Accidents Investigation Branch :イギリスの

事故調査局)によると、パトマへの降下初期にパイロットらはマスターコーションと与圧シ

ステムの「自動故障」の表示を受けました。自動故障/予定外の圧力変化の非正常チェック

リスト で求められているように、自動バックアップ システム を選択しても、問題は解決

されませんでした。パイロットは次の非正常チェックリストの ステップに進み、手動の客室

圧力制御モードに切り替えました。ここで、パイロットは主に開閉を設定できるアウトフロ

ーバルブ  を通じてキャビン圧力を制御します。

ボーイング社のガイダンスでは、手動モードでアウトフローバルブ を調整する際は慎重にな

るようパイロットに警告しています。

ボーイング社のパイロットマニュアルチェックリストのガイダンスには、「流出バルブの小さ

な動きが、客室の上昇または下降速度に大きな変化を引き起こす可能性がある」と記載されて

います。「流出バルブを手動で作動させると、機内の圧力が大きく急速に変化し、乗客や乗務

員に不快感や怪我を引き起こす可能性があります。」

しかし、パイロットたちはシステムを手動で操作する方法を理解していませんでした。副操縦

士はバルブスイッチを「開」に操作。機長がスイッチを 20 秒間押し続けたところ、バルブが

完全に開き、客室内圧力が完全に失われました。

AAIBによると、同機が高度3万5000フィート(10km)で飛行中、機内の圧力が「急速に」

上昇し始め、機内高度警報が発令されたといいます。副操縦士は直ちに乗客用酸素マスクを

展開し、自分の酸素マスクを着用し、機長にも同じようにするようアドバイスしました。

これは 高度1万フィート(3km) 以上の与圧問題に対する手順です。

その代わりに、機長は緊急事態を宣言し、機内高度警告と急速減圧チェックリストの両方を

放棄して、副操縦士に緊急降下チェックリストを読むよう求めました。機長は約8分で航空機

を 高度1万フィート(3km)まで降下させるよう指示しました。AAIBは「そして手順に従

って緊急降下の記憶行動を実行しなかった」と述べました。

機長は降下開始から3~4分が経過するまで緊急用酸素マスクを着用しませんでした。

その結果、彼は「おそらく」「低酸素症による一時的な無力化」を経験したとAAIBは述べ

ています。AAIBは、パイロットらが与圧問題について客室乗務員に警告しなかったため、

「客室内が混乱し、乗務員の状況認識の欠如につながった」とも述べています。

混乱に拍車をかけたのは、客室乗務員が降下中は着席したままであるように言われたこと

です。AAIBは「客室乗務員は、安全上の緊急手順に従って必要とされる、飛行機が着陸

るまで乗客の健康状態を確認することを機長から全く許可されていなかった」と結論づけ

ました。 

乗組員は管制官に「メーデー(緊急事態)」を宣言しましたが、後に機体が高度1万フィー

トを下回ると非常事態宣言を解除しました。飛行機は無事にパトナに着陸。乗客184名と

乗務員6名に怪我はありませんでした。

報告書によると、捜査当局は重大インシデントの「直接の原因」は機長が「手動モードでの

加圧システムの取り扱いに関する知識が不十分で、オート/アルトフェイル状態中に客室の

圧力を維持するための標準的な操作手順」を順守しなかったことであると結論づけました。

不十分な乗組員リソース管理と不十分な訓練が「潜在的な原因」として報告されました。

デルタ航空、前輪出なかった

デルタ航空 ボーイング 717

アメリカ、ノースカロライナ州シャーロット・ダグラス国際空港で28日、前輪が出ない問

題に見舞われた旅客機が無事に着陸しました。

問題が起きたのは午前7時25分にアトランタを出発したデルタ航空1092便のボーイング717。

乗客96人を乗せていました。

地元のテレビ局によると、乗員乗客に怪我はありませんでした。インタビューに答えた乗客

はいずれも、人々を冷静に保ち、スムーズな着陸を成功させた機長に感謝を示したという。

機体は一度目の着陸を試みた後、再度上昇して旋回をくり返しました。この間、前輪に故障

が生じたとして、乗客は不時着時の姿勢をとるよう告げられ、非常口の場所やその他の指示

もアナウンスされました。

着陸時に機内で撮影された動画には、乗客らが前の席を両手でつかみ、前屈みの姿勢をとる

様子が撮影されています。無事に着陸すると、機内で拍手が沸き起こりました。

そして乗客らは緊急脱出スライドで脱出し、バスでターミナルに移動しました。

デルタ航空は同局に対する声明で「このような事態は稀」としつつ、「デルタ航空の乗務員

は多くのシナリオを安全に管理できるよう幅広く訓練しており、1092便は負傷者の報告もな

く無事に着陸した」と説明。「次の焦点は手荷物を回収し、最終目的地まで安全にお送りする

ことを含め、フライトにご搭乗したお客様のケアをすることです。お客様にご迷惑をおかけし

たことをお詫び申し上げます」と述べました。

まとめ

この2つの事故をご覧になって、皆さんはどう思われましたか?

1つ目のインドの事例の与圧の不具合は、大なり小なりよく起きることなんです。

また、定期的に訓練も行っており比較的対処方法は理解しているものなのです。

一方の前輪が出ないという事例は、本当にまれなことです。緊急事態の時のチェックリスト

には手順は書いてありますが、実際にシュミレーターで模擬することはできません。

それではなぜ、対照的な結果となったのでしょうか?

パイロット個人の能力にも問題はあると思いますが、根本は安全に対する企業意識の違い

にあると私は思います。

AAIBレポートの詳細は、スパイスジェット内のより深い問題を浮き彫りにしています。

2020年4月、ボーイングは運航乗務員に機内の圧力を手動で制御する方法を確実に理解させ

ることの重要性を強調する運航者向け速報を発行しました。この速報は、減圧イベント中の

「運航乗務員の混乱」に関する運航中の報告がきっかけとなったことでした。スパイスジェ

ットはこの報告書を「電子メディアを通じて」すべてのパイロットに配布しましたが、いか

なる「運用文書」にもそれを含めていなかった、とAAIBは発見しました。

スパイスジェットの加圧システムに関するトレーニングは、規制要件に従って年に 1 回行わ

れました。しかし、調査員らは特に手動モードに関する指示が「2回目のバックアップシステ

ムだったため、綿密なものではなかった」ことを発見したと報告書は述べています。

また、スパイスジェットでは、過去同じ様な与圧システムの不具合が報告されていましたが

十分な整備を怠っていました。

そして、パイロットと客室乗務員と合同で行う「CRM(Crew Resource Management)訓練」

が十分に行われていなかったことも指摘されています。

実際のところ、LCC(格安航空会社)の一部や、新興国の航空会社では安全よりコストが

優先されているかのようなところもあります。

パイロットや整備士、客室乗務員などの教育は、直接安全に繋がるものです。企業側は

その意識をしっかり持ってもらわないといけません。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

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