皆さんこんにちは!
水素燃料電池を使用した飛行機を開発しているイギリスの会社、ゼロアビアは、スペイン領
カナリア諸島の航空会社と契約を行いました。
スルカル航空に、ZA600水素電気エンジンを提供
2022 年の秋から、スペインには水上飛行機だけで構成される機体で運航する新しい航空会社
が設立されました。新しい航空会社の名前はスルカル航空で、カナリア諸島で運航されます。
年間最大 15,000 人の乗客を乗せ、列島の主要都市間を 30 分以内のフライトで結びます。
スルカル航空の水上飛行機はコペンハーゲン、バンクーバー、シアトルなどの都市の人々を
繋ぐ運行をしています。これらの都市では、人々は 30 年以上にわたって水上飛行機を利用
しています。
この新しい航空会社の背後には、地元政府とデンマークの航空会社ノルディック・シープレ
ーンズによる投資があります。ノルディック・シープレーンズは 2 機の DHC-6-300 ツイン
オッター 水上飛行機を保有しています。
スルカル航空は、水素を動力とするツインオッター水陸両用航空機を使用して、カナリア諸
島間のゼロエミッション地域航空サービスの開始を目指しています。8月2日に発表された合
意に基づき、この新興企業は自社の航空機をゼロアビアの600キロワットのZA600水素燃料
電池推進システムを使用するように転換すると発表しました。
計画されているフライトには、北アフリカの大西洋岸沖にあるスペインのカナリア諸島間の
観光旅行が含まれます。サンタクルスとラ・パルマ間を飛行スル計画です。
カナリア諸島とライバル会社
カナリア諸島
八つの島からなるカナリア諸島は人口約220万人(2021年)の自治州で「常春の島」と
呼ばれています。その名の通り避暑・避寒地として有名で、スペイン本土だけでなくドイ
ツやイギリス、北欧などからも観光客が詰めかけます。2017年には史上最高となる約
1431万人の外国人観光客数を記録。「北アフリカ沖に浮かぶ欧州の楽園」と言えます。
マリンスポーツやビーチリゾートも充実、美しい海岸も多い一方、火山島であるため荒々
しい溶岩地形も広がっています。東側に行くほどアフリカの気候の影響を受け乾燥し、砂
漠地帯が見られます。スペイン最高峰のテイデ山(3718メートル)があり、高山植物も
豊富。大西洋の海の道の要所であるため中南米との関係が深く、食や農業にそれが表れて
います。「常春の島」という言葉だけでは言い尽くせない多様性が、この島の魅力です。
サンタクルス・カナリア諸島 ビーチリゾート
テネリフェ島・カナリア諸島
ライバル航空会社
現在、カナリア諸島の8つの空港間で4,226便の定期便が運航されています。これらの
ルートを運航している航空会社は、ネオス、ビンターカナリアス、カナリー フライ、
カナリアス航空、トランサヴィア、TUIfly です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック前の2020年1月のレベルと
比較すると、便数は19.7%減少しています。空席も19.0%減っている状況です。
この地域の主要ルートはテネリフェ島とラ パルマ島を結び、定期便が 498 便あります。
続いてラ・パルマ-ランサローテ島間で、2022年1月までに482便が計画されています。
ラ・パルマ-フェルテベントゥラ間も400便以上の定期便が運航されています。
ビンター カナリアスは、800 便以上の定期便を運航するこの地域の主要な航空会社で、
カナリアス航空 (695 便)、カナリー フライ (434 便) がこれに続きます。
ビンターカナリアスは、29 機の航空機を保有しており、そのすべてが ATR 72-500、
72-600、エンブラエル E190-400 ユニットで構成されています。カナリアス航空は
ATR 72-600を12機、カナリーフライはATR 72-500を6機(貨物機2機を含む)保有。
しかし、カナリア諸島にはまだ、水上飛行機は運航していませんのでチャンスはありそ
うです。
ゼロアビアの水素エンジン
ゼロエミッション技術の飛行試験における画期的な瞬間! (画像:ゼロアビア)
ゼロアビアは、ドルニエ 228 の左側プロペラに動力を供給するために、プロトタイプの
ZA600 エンジンを改造しました。この航空機は、2023 年 1 月 19 日に画期的な初飛行を
行いました。その後の飛行はすべて、政府による認証申請に先立って理解を構築するための
当社の取り組みの一環です。2025 年までにゼロエミッションの民間航空機に電力を供給す
る予定です。
現在、ドルニエDo228 試験飛行機の 10 回目の飛行に成功し、プロトタイプ ZA600 を使用
した最初の飛行テストが完了しました。このテスト飛行は、システムを使用して将来の航続
距離を予測するための基礎を築き、テストとデモンストレーションの次の段階として最初の
コースの国での飛行を開始します。
1月の初飛行以来、ゼロアビアはさまざまな分野の性能をテストしてきました。この試験飛行
では、航空機が高度 5,000 フィートを超えて飛行し、23 分間の耐久テストを実施し、CAA
(イギリス航空局)が発行した飛行許可に基づく最大許容速度に達することが確認されまし
た。
ZA600 は、固定翼プラットフォーム用の 500 ~ 750 Kw の連続水素電気パワートレインで
す。気体水素タンクを燃料とし、最大 300 NM の乗客を運ぶことができます。
ZA600エンジン(画像:ゼロアビア)
ZA600は、タービンエンジンと比べますとメンテナンスのためのオーバーホール時間は
10,000時間(タービンは~3,600 ~ 8,000 時間)。
1時間あたりの燃料消費量は、25~30kg(タービンは165 kg)。
もちろんCO2排出量はゼロです。
2021年12月、ゼロアビアはツインオッターの型式証明を保有するカナダのデ・ハビラント
と覚書を締結しました。ゼロアビアはZA600の型式証明を完了する予定で、補足型式証明
に基づいて9席から19席のさまざまな航空機を改造する予定です。
またゼロアビアは、より高度な開発に取り組んでいます。 最大700マイル(1126km)
飛行する40席から80席の航空機用のエネルギーZA2000パワートレインで、2027年に商業
運航を開始できるよう準備することを目指しています。
スペイン、交通分野のカーボンニュートラルを目指す
スペインの国家エネルギー・気候変動計画は、2050年までに完全なカーボンニュートラル
な交通システムを達成することを目指しています。それまでに、2030年までに温室効果ガ
スを55パーセント削減するという欧州連合の広範な目標の下で、段階的な脱炭素化が予想
されています。
スペインは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きな打撃を受けました。経済の回復
と成長のため、総額7,500億ユーロ(115兆円)に上るEUの復興基金から、補助金と融資
を含めて最大1,400億ユーロ(21兆円)の割り当てを2026年まで受ける予定です。
復興計画のうち、グリーン投資は40%と最大部分を占めています。脱炭素化に関わる主要
投資分野としては、(1)建築物の省エネ改修(68億ユーロ)、(2)モビリティーの電動化(
65億ユーロ)、(3)再エネの技術革新と産業・建築物への再エネ導入(32億ユーロ)、
(4)エネルギー貯蔵と電力系統のデジタル化(14億ユーロ)、(5)グリーン水素の製造と運輸
・産業部門での活用(16億ユーロ)、などがあります。公的資金の投下先は、電動化や省
エネ対応が遅れている分野へのテコ入れや、新技術の実用化、新産業エコシステムの構築
支援が中心となっています。
まとめ
新たなエネルギー源として、水素の活用に注目が集まっています。水素は、エネルギーと
して使用する際に二酸化炭素(CO2)を排出しないという特徴があります。産業界では既
に水素が利用されてきましたが、その多くは天然ガスなどの化石燃料を用いて生産した水
素であり、水素生産時のCO2発生が避けられない状態です。そこで、再生可能エネルギー
を用いた水の電気分解で生産された、生産から使用までCO2を排出しない水素の導入に向け
た動きが進展しています。このような水素は、「低炭素水素」や「クリーン水素」、「グリ
ーン水素」などと呼ばれており、CO2の排出量が多い製鉄業や、航空・海運業などにおいて
製品の低炭素化または脱炭素化を可能にするエネルギーとして期待が寄せられています。
トヨタも完全なEV(電気自動車)から水素エンジンへ切り替えを行っています。
航空業界やAAM(アドバンスドエアモビリティ)の世界でも、完全な電気推進ではなく
水素燃料やハイブリッドと呼ばれる内燃機関を使って発電する方式が支流になって来る
と予想します。バッテリーのみの性能では、耐久性や安全性に限界があることがわかって
きたからです。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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