皆さんこんにちは!
現在、エアタクシー(eVTOL)を牽引しているのは、ジョビー(米)、アーチャー(米)
少し遅れてバーティカル・エアロスペース(英)、EHang(中)です。
その戦場に名乗りを上げたのが、スペインのクサリオンです。後発の強みを生かした
戦いができるのでしょうか?
私たちはクリサリオン・モビリティです
空と地上の移動を両面からイノベーションするクサリオンモビリティ(画像:クサリオン)
クサリオンの eVTOL 業界に対するビジョンと危機感
クサリオンの マヌエル・エレディア氏が、同社の eVTOL 業界に対するビジョンと、
商業化への道のりで直面している危険信号について語ります。
自動車産業の初期の頃、米国と英国は「レッドフラッグ法」を制定し、1台の車に
3人の運転手を乗せることを義務付けました。2人は車内に座り、1人は前を歩いて
赤旗を振り、他の道路利用者に警告します。また、車は市街地では時速2マイル
(3.2キロ)、田舎では時速4マイルという厳格な速度制限を守らなければなりませ
んでした。
1865 年の法律は、自動車が自分たちに取って代わることを恐れた駅馬車業界と機関
車業界のロビー活動によって成立しました。また、一般の人々が自動車の進化する技
術にまだ信頼を寄せていなかったため、法律の施行は比較的容易でした。この法律は
1896 年に廃止され、制限速度は時速 14 マイルに引き上げられました。
「レッドフラッグ法などの法律を振り返って考えると、今では不合理に思えますが、
それは車がどこにでもある今日の視点から見ているからです」と スペインのeVTOL
開発企業、クサリオンモビリティのMD、マヌエル・エレディア氏は語ります。
「携帯電話について考えてみると、誰もが 1 台、あるいはそれ以上持っています。
しかし、最初の携帯電話は大きくて不便で高価でした。おそらく、エリート層向けの
ものだと思われていたのでしょう。確かに、最初はそうでしたが、一歩踏み出して、
今後数年間で物事がどのように進化していくかを想像する必要があります。
「この業界は少々苦しい状況にあると思います。誇大宣伝曲線のどこにいるかを考え
ると、再び上昇に向かうまでにはまだ少し時間がかかると思います。」
業界に残る課題
エレディア氏は、初期の eVTOL 業界に対して、業界の同僚の多くほど楽観的では
ないことを公言しています。同氏は、この業界への需要は認めているものの、市場
機会をつかむための競争は「まだ続いている」 と考えているのです。そして、その
競争は、その過程でいくつかの特異な事態を引き起こすことは間違いないでしょう。
「来年、eVTOL機が就航することを考えると、もしそうなったとしても、エコシス
テムがまだ整っていないため、その範囲は非常に限られると思います。認定された
電気航空機を持っているだけでは十分ではありません。どれほど素晴らしいもので
あっても。充電器がなければ、何の役にも立ちません。」
「垂直離着陸場のインフラも必要です。確かに、垂直離着陸場の運用コストは 30%
安くなりますが、建設する必要があります。世界的に見て、これは人類がこれまでに
考えた中で最も大規模なインフラ事業の 1 つです。さらに、航空管制について考える
と、今日のソリューションでは、提案されているように、一度に数百機もの新しい航
空機が飛行するのに対応できる規模がありません」と エレディア氏は言います。
これらは解決が必要な2つの問題に過ぎないと、元エアバス副社長は言う。メンテナン
スにも独自の課題があり、eVTOL産業の展開と拡大を妨げる可能性があります。
現在のメンテナンスネットワークは長距離飛行が可能な航空機に対応するように設定
されているため、大陸ごとにメンテナンスセンターがわずかしかありません。電気航
空機には、今日の自動車工場に似たネットワークが必要であり、これも構築する必要
があります。これは、雇用やより広い地域への人材の分散にもプラスの影響をもたら
すとエレディア氏は付け加えます。
保険も、eVTOL や電気航空機全般にとって重要な課題です。 「保険は統計に依存す
る業界であり、そのデータがなければ、保険会社は本当に限界に追い込まれます。」
「上記の要素がすべて整うまでには時間がかかるだろう」と 彼は言います。
サウジアラビアの現実主義
エレディア氏はサウジアラビアを例に挙げ、 「ここでは風がすべて正しい方向に吹い
ている」と語ります。1月に同王国は、eVTOLの運用を従来の航空システムや他の輸送
手段と統合する計画を概説したAAMロードマップを発表しました。同国には、初期の
商用eVTOLサービスの理想的なインキュベーターとなるために必要な政治的意志、資
金、顧客、最新のインフラがある、とエレディア氏は言う。
「しかし、パズルのピースをすべて組み合わせるには、まだ2~3年かかると彼らは言っ
ています。その後、市場が供給主導になるのは5~10年だろうと彼らは考えています。
その後、おそらく15~20年後に、OEM間の本当の競争が始まるでしょう。」
それでも、eVTOL 業界が飛び立つかどうかではなく、いつ飛び立つかが問題だとエレ
ディア氏は言います。現在、業界全体で 11,000 機以上の eVTOL が発注されています
が、拘束力のある契約を結んでいるのはわずか 4% だ。これはこの航空機に対する需要
の証拠であると同時に、顧客が認定品が到着したときに、その機会を利用していろいろ
と調べ、購入するであろうことも示しています。
クリサリオンのフライフリーテクノロジー
レボリューションエアロ(インターネットニュース)は、「後発者優位」を固く信じてい
る電動航空機開発企業を数多く取り上げてきました。クサリオンモビリティもこのカテゴ
リーに属します。空中および地上向けの電動モビリティ ソリューションを開発している
同社は、2019 年にドローン スタートアップの ウミレスネクストからのスピンオフとし
て設立されました。現在、クサリオンはスペインのマドリードに拠点を置き、スペインの
ビルバオとカタールのドーハにオフィスを構えています。
同社はスペイン最大の民間研究開発センターであるテクナリアと関係があります。同セン
ターはクリスアリオンの技術パートナーとして信頼されており、この新興企業のプログラ
ムの加速に貢献しています。
クリサリオン社が特許取得済みの「Fly Free」推進技術の開発を開始したのは、テクナリ
ア社の本社でした。航空機の全方向の動きを制御できるこのシステムは、各推進ユニット
を独立して制御できる高度なローター制御ソフトウェアで構成されており、すべての飛行
段階で安定性、安全性、機敏性が向上します。
クリサリオンは当初、マルチコプターで Fly Free システムをテストしました。これは
ウミレスネクスト が選択した構成でしたが、範囲は約 15 km (9.3 マイル) に制限され
ていました。 「これはオペレーターに提供できるものではありません。ビジネスケースが
ありません。そのため、業界との綿密な協議の結果、今日ご覧になっている航空機にたど
り着きました。」
「電動飛行機で意味のある距離を飛行できるのは翼のおかげです。当社の設計を見ると、
比較的従来型で、未来的な特徴は組み込んでいません。まっすぐな翼とT字型の尾翼があり
ヘリコプターと飛行機の中間のような外観です。私たちは、混乱を招く恐れのある領域の
リスクを意図的に減らすように努めました。バッテリー、電気推進システム、飛行制御シ
ステムは、私たちが限界に挑戦している部分です。」
インテグリティと名付けられた クサリオンの eVTOL 機には、パイロット 1 名と乗客 5
名が搭乗できます。これは、最大積載量 400kg、最大離陸重量 2.8t に相当します。この
機体の航続距離は予備機を含めて 130km (80 マイル) で、巡航速度は時速 180km
(111mph) です。Fly Free システムは、機体の両側の 2 つのアームに配置された 16 個
のモーターによって機能します。各アームは、モーターの差動推力によって、ピッチとロー
ルの推力ベクトルを独立して変更できます。
「航空業界では安全性が重要です」と エレディア氏は言います。「しかし、安全である
だけでなく、安全だと感じられる航空機も作りたかったのです。小型航空機、特に高層
ビルの近くを飛ぶヘリコプターであれば、乱気流の影響を感じることに慣れているでしょ
う。ですから、Fly Free の背後にあるアイデアは、一般の人々が安心して飛行できる航空
機を作ることでした。成功する航空機を作りたければ、自分の母親が乗りたがるような航
空機でなければならないとよく冗談を言います。当社のシステムは慣性が非常に低く、
ベクトル推力を素早く方向付けることができるため、キャビンを乱れから守ることができ
ます。」
同社は急成長を遂げています。5~10人から始まったクリサリオンは、現在70人の従業員
を抱え、年末までに110人にまで拡大する計画です。また、現在テスト中の実物大の飛行
実証機もあります。同社はスペインの公的および民間投資家、主にグルポ・イベリカから
約2000万ユーロ(32億円)を調達しました。また、今年後半には公的および民間投資家
と低利融資からさらに2000万ユーロを調達する予定だとエレディア氏は言います。「来年
は1億ユーロ(160億円)を調達する予定で、その時点でスペイン国外、例えば中東などの
地域に目を向け始める予定です。」
スペイン人であることを誇りに思うエレディア氏は、スペインがクリサリオンのような企
業に提供できるメリットを固く信じています。 「航空宇宙の面では、スペインは強力な
存在です。過去 50 年間で、新型大型貨物機 A400M をエンドツーエンドで飛行させた数
少ない国の一つです。CR925、MRTT、ユーロファイターにも直接関わっています。新型
航空機を飛行させるために必要なすべての分野が、スペインで互いに近い距離で見つかり
ます。また、熟練した労働力の面では、カリフォルニア、ドイツ、英国などよりもスペイ
ンでの雇用ははるかに競争力があります。」
無人操縦の計画
前述のように、クリスアリオンは空中と地上の両方のソリューションを開発しています。
同社は、両業界の自動化トレンドのクロスオーバーを認識した2022年に、陸上モビリテ
ィソリューションへの拡大を行いました。エレディア氏は、自動運転車分野が世界中で
注目を集め始めたのを見て、クリスアリオンは航空にヒントを得た自律運用へのロード
マップで参加することを決定したと述べました。
「暗黙的に、自律走行へのロードマップには常に 3 つのステップがあります」と 彼は
言います。 「まず、パイロットを通常の航空機に搭乗させ、次にパイロットを地上に
降ろして、実質的にドローンにします。その後、地上のパイロットから航空機に機能を
徐々に移行します。自動運転車の分野を見ると、さまざまなプロジェクトやプレーヤー
が中間ステップをスキップして、通常の車から都心部での無人車両統合に移行しようと
しているのがわかります。これは非常に難しいことです。」
エレディア氏は、自動車業界と同様に、eVTOL 業界にもそれが当てはまると語ります。
「社会の受容、技術の成熟、規制当局の信頼という 3 つのことに並行して取り組む必
要があります。これらはすべて相互に関連しています。」 彼の言う通りだ。自動車の場
合、ラウンドアバウトを走行したり、ゴミ収集車を追い越したりできるほど技術が強力
でなければ、一般市民の不満を招き、規制当局の製品に対する信頼を失わせることにな
ります。
「そこで私たちは、この悪循環を断ち切る方法を見つけたいと考え、遠隔操作ソリュー
ションを提供することに価値があることに気付きました。」 現在開発中のこのシステム
は、インテリティドライブと呼ばれています。これは、運転センターから遠隔コントロー
ラーによって操作される協調運転車列内のあらゆる種類の車両の遠隔操作を組み合わせた
ものです。候補地には、大規模なインフラ プロジェクト、空港、物流配送拠点などがあり
ます。
「まだ大部分は公道を走行できませんが、制限された環境内に管制センターを設置できる
場所はたくさんあります。これにより、規制当局が大規模な展開を許可する準備ができる
前に、ビジネスケースを構築し、技術を成熟させ、運転手をホワイトカラーの役割に変え、
社会的受容を高めることができます。また、航空機の生産が始まる前に会社として現金を
生み出すことにも役立ちます。」
中国の自治が意味するもの
米国とEU、FAAとEASAの間では調和が進みつつあるが、世界はこれら2大陸だけでは
ありません。エレディア氏によると、中国で起きていることは世界の多くの国にとって
大変革をもたらす可能性があります。 「1万1000機の航空機が発注されているのに、
それを操縦するパイロットはどこにいるのか?中国では昨年、初の自律飛行航空機が
認証されました。つまり、世界は2つの正反対の方向に向かっていると我々は見ており、
そのすべてに注意を払う必要がある」と 同氏は言います。
「現在、中国で何が起こっているのかを外部から見るのは難しいですが、国内で成功
すれば、これらの航空機は他の場所でも運用され始めるでしょう。そうなると、2つ
のことが起こる可能性があります。安全な運用を実証し、私たち西側諸国が問題を抱
えることになります。なぜなら、私たちは非常に迅速に対応する必要があるからです。
あるいは、個人的には、彼らが問題を抱えるようになると思います。これは私たちに
とっても悪いニュースです。なぜなら、中国で認証されたからといって西側諸国で認
証されたわけではないことを投資家コミュニティや一般大衆に説明する必要があるか
らです。西側諸国には異なる要件があります。これは難しい話し合いになるでしょう。」
赤い旗が警告として使われた最初の記録は、1777年に北フランスのカレー港で洪水の
危険を知らせるために使われたものだ。今日では、赤い旗はミーム文化を指し、恋愛
相手の奇妙な、不快な特徴を警告するものとして使われることが多い。eVTOL業界が
商業化に近づくにつれ、その過程でさらに赤い旗が使われるようになるでしょう。
開発者は、投資家がこれらに惚れ込まないよう願うでしょう。
まとめ
奇しくも本日(8月3日)、NHKの『プロジェクトX』の再放送がありました。
携帯会社Jホーンが、今ではあたり前の携帯にカメラを付けたり、メール画面を
付けたりする機能を開発しました。大手企業の後発である利点を生かした例です。
今後、クリサリオンが第2のJホーン以上のシエスタ(自由な風)を吹かしてくれ
ることを期待します。
シエスタは、スペイン語で『休息』という意味で使われます。しかし、休憩を取
ることで、睡眠不足を解消し健康を回復します。スペインの海岸の心地よい風が
人々に自由を与え更なる活力を生み出す大切な習慣です。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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