失敗を受け入れる——それが、翼になる

飛行機

皆さんこんにちは!吉川哲也です。

今月、アメリカの航空専門誌AINにこんな言葉が掲載されました。NTSBのジェニファー・ホーメンディ委員長が女性航空人の国際会議(WAI2026)で語ったスピーチです。

「失敗を受け入れなさい。そして、もう一度試みなさい。失敗を恐れていると、自分自身に『ノー』と言ってしまう。他の誰かに言わせる前に、自分で諦めてしまう。あなたの夢を追うための代償が、時々失敗することなら——それは払う価値のある代償です」

この言葉を読んだとき、思わず手が止まりました。

私もそうだった——と。

■ 私の「失敗」を正直に話します

63歳になった今、若い頃の自分に伝えたいことがあります。それは「お前の挫折は、ちゃんと意味があった」ということです。

少し、私の話をさせてください。

航空自衛隊から民間へ——そして最初の壁

私は航空自衛隊で戦闘機パイロットとして飛び、その後、民間航空会社に転職しました。自衛隊では操縦には自信があった。でも民間航空は、まったく別の世界でした。

最初にぶつかったのが、計器飛行証明の試験です。

落ちました。

自衛隊で何百時間も飛んできた私が、試験に落ちた。その時の屈辱感は今でも覚えています。「戦闘機パイロットが、なぜ」という気持ちと、「いや、これは別物だ」という現実の間で、しばらく揺れました。

機長昇格試験という壁

計器飛行証明の次にぶつかったのが、機長昇格試験でした。

今でも、あの試験の前夜のことを覚えています。準備は十分にした。イメージフライトも何度もした。それでも、試験という特別な緊張の中で、自分が思い描いた通りにいかないことがある。人間とはそういうものです。

「試験に落ちた」ということは、「その時点での自分には、まだ何かが足りなかった」ということです。これは恥ずかしいことではない。それが現実を教えてくれる、最も正直なフィードバックです。

それだけではない

思い返せば、自衛隊時代にも、キャリアの節目節目に「うまくいかなかったこと」の連続でした。操縦の技量、訓練の評価、試験の結果——数知れないほどの「失敗」がありました。

でも今、63歳になって振り返ると、不思議なことに気がつきます。

あの失敗がなければ、今の自分はいない。

■ 失敗が教えてくれたこと

ホーメンディ委員長のスピーチにはこんな一節があります。

「私は失敗を恐れることをやめなければならなかった。失敗を抱きしめなければならなかった。それが怖くても、恐れずに生きるための代償だった」

これは、まさにパイロットの世界の真実でもあります。

訓練の中で「失敗」を経験しないパイロットは、いません。シミュレーターの中で墜落させる。試験で手順を間違える。本番のフライトで焦ってミスをする。大切なのはそのあとです。「なぜそうなったのか」を正面から受け止め、「次はどうするか」を具体的に考える。

これは訓練の話だけではありません。人生そのものの話です。

計器飛行証明に落ちて、わかったこと

計器飛行の試験に落ちたとき、私は初めて「民間航空の手順の緻密さ」に真剣に向き合いました。自衛隊では「感覚」で飛べた部分が、民間では「手順」と「正確さ」として求められていた。この違いを体で理解できたのは、失敗したからこそです。

機長昇格に落ちて、わかったこと

機長試験に落ちたとき、私は「責任者の重さ」を改めて考えました。副操縦士として飛ぶことと、機長として飛ぶことは、技術だけではなく「覚悟」が違う。その覚悟を問われ、私は一度、跳ね返された。でもその経験が、今の私の姿勢を形作りました。

失敗は、成功した後では「あの学びがあったから」と笑って話せる。でも失敗した瞬間には、それが見えない。だからこそ、あの時に諦めなかった自分を、今は誇りに思います。

■ 道半ば——残りの人生をかけて

63歳の今、私は新しい挑戦の真っ只中にいます。

  • UPRT JAPAN——日本初の異常姿勢回復訓練専門機関の設立
  • LSAフライトスクール——日本初の軽スポーツ機を使ったフライトスクールの創設
  • このブログ「遙かなる大空」——航空の本質を伝える発信の場
  • YouTube「吉川空塾」——映像で飛行訓練と航空安全を伝えるチャンネル(準備中)

正直に言います。まだ何も「完成」していません。まだまだ道半ばです。資金も、人材も、仕組みも——これから作らなければならないことが山積みです。

でも、諦める気はまったくありません。

あの計器飛行試験の夜も、機長試験の後も、「もう終わりだ」とは思わなかった。失敗を正面から受け止めて、もう一度準備して、もう一度挑んだ。今も同じです。

「失敗を恐れるより、挑まないことを恐れよ」——これは私が自衛隊時代に先輩から言われた言葉です。あれから40年、この言葉は今も私の中で生きています。

■ あなたへ

このブログを読んでいる方の中には、今まさに「挫折の真っ只中」にいる方もいるかもしれません。

試験に落ちた。昇進できなかった。計画が思い通りにいかなかった。夢に向かって動き出したのに、現実の壁にぶつかった——。

ホーメンディ委員長の言葉をもう一度、引用させてください。

「あなたが夢を追うための代償が、時々失敗することなら——それは払う価値のある代償です。そして失敗した後に何をするか、そこに魔法がある」

私は63歳です。パイロットとしての残りの飛行時間は、そう長くはないかもしれない。でも地上でできること——UPRTを日本に広めること、LSAで空への扉を開くこと、このブログで何かを伝えること——これはまだまだ続けられる。

残りの人生をかけて、取り組みます。

失敗は終わりではない。失敗は「次のフライト計画」の出発点です。

今日も空は、どこかで誰かを待っています。

 

参考:AIN「NTSB Chair to WAI Attendees: Embrace Failure, Try Again」(2026年3月20日)

参考:Jennifer Homendy Remarks, Penn State Harrisburg Fall 2024 Commencement

 

吉川哲也 / 元航空自衛隊戦闘機パイロット・現役民間航空機機長・UPRT JAPAN設立準備中

ブログ「遙かなる大空」 / YouTube「吉川空塾」(準備中)

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