新たなるLSA基準、アメリカの提案

飛行機

皆さんこんにちは!

7月19日に、FAA(アメリカ連邦航空局)がライトスポーツ航空機(LSA)についての大きな

法改正を行うと発表しました。

MOSAIC

特別耐空証明の近代化 (MOSAIC) 改革

FAAは7月24日に規則制定案通知NPRM:Notice of Proposed Rulemaking )を発表し、

これが採択されれば早ければ今年末までにGA(General Aviation:一般航空)大きな利益

をもたらすことになります。この通知は公衆縦覧のために7月19日に公開されました。

MOSAICとは、Modernization of Special Airworthiness Certificateの各単語の頭文字を

とったもので、「特定耐空証明制度の近代化」という意味です。

FAAは、ライトスポーツ航空機の製造、認証、運用、保守、改造に関する規則を改正するこ

とを提案しています。提案されている修正案は、安全性と性能の向上を可能にし、多くの

スポーツパイロットとライトスポーツ航空機の規則に基づく特権を増やすことになります。

これらの機能強化には、飛行訓練、限られた空中作業、個人旅行への適合性の向上が含まれ

ます。

この規則案は、スポーツパイロットが操縦できる航空機の内容を拡大することになります。

この NPRM には、制限カテゴリー航空機の特殊目的運用を修正する提案も含まれています。

実験用航空機の期間、適格な目的、運用制限を修正し、法的文言を成文化するために、宇宙

支援ビークルの飛行に従事する実験航空機に適用される運用制限を追加します。

MOSAICの遍歴

2004 年に FAA は、ライトスポーツ航空機の製造、認定、運用、およびメンテナンスに関

する規則を確立した「ライトスポーツ航空機の運航のための航空機および飛行士の認証」と

題された最終規則を発表しました。この規則は、重量が 1,320 ポンド(600kg)(水上で

の運航を目的とした航空機の場合は 1,430 ポンド(650kg))未満の航空機の運航および

製造を規定しました。これらの「軽量スポーツ」航空機には、飛行機、グライダー、気球、

動力付きパラシュート、体重移動制御航空機、ジャイロプレーンなどが含まれます。

2004 年の最終規則を制定する際、FAA は意図的に、意図された運航特権と航空機の能力

を考慮して、ライトスポーツカテゴリーの航空機の認証を、通常カテゴリーの航空機と実験

証明書を保有する航空機との間で厳密に定めました。

そして、アマチュアのカテゴリー(レジャー用途)とスポーツパイロットのような高技術を

要するカテゴリーに分けていたのです。

しかし、最近の航空機製造技術の発達やアビオニクスなどの計器類の進歩により、航空機の

性能が向上し、安全性が高まってきました。

ライトスポーツ航空機の制度は、機体規模を「小型軽量」に限定しながら、機体の認証や操

縦資格取得に必要な要件を見直すことで新型機の導入を促し、同時にパイロットや整備士な

どの航空従事者も増やしていくことを目的にしていました。

FAA はライトスポーツカテゴリーの航空機の死亡事故率が実験航空機と通常カテゴリーの航

空機の間に収まると予想しました。この予想を死亡事故のデータと照らし合わせて検証する

ために、FAAはライトスポーツカテゴリーの飛行機と、ライトスポーツカテゴリーの飛行機に

最も類似した他の航空機カテゴリーまたはタイプ、つまり単発レシプロエンジンと固定着陸を

備えたアマチュア製の実験用飛行機のデータを比較しました。これらの航空機について 2011

年以降にまとめられた死亡事故率データ ライトスポーツカテゴリーの航空機の死亡事故率が

実験用カテゴリーと通常カテゴリーの航空機の中間に位置することが実証されました。いわば、

安全性が証明されたのです。

MOSAICの改定内容と利点
重量制限を緩和

ライトスポーツ航空機は、重量が600kg未満という制限があります。今回の改定でその重

量は、事実上撤廃されます。段階的に初めは、3000ポンド(1360kg)に制限される予定

です。ちなみにセスナ172型は1160kgです。

重量制限を撤廃すると、メーカーには次のような機会が提供されます。

  • 追加の安全性を強化する設計と装置を組み込む
  • 飛行訓練環境向けに、より頑丈な機体を設計します。
  • 燃料積載量と航空機の航続距離を増加させ、
  • より大きな乗員の身長と体重を可能にするためにキャビンのサイズを大きくすることができます。
  • 突風、乱気流、横風時の航空機の操縦性を向上させます。

この提案は、ライトスポーツカテゴリーの航空機が容量と能力を向上させて安全に飛行でき

るように、ライトスポーツカテゴリーの航空機に新しい設計および製造要件を適用するもの

です。

FAAはさらに、航空機の失速速度を上げて航空機の重量を増やし、より堅牢な機体、安全性

を高める装備の設置、燃料容量の増加、座席数の増加を可能にすることを提案しています。

これにより、プロペラについては可変ピッチプロペラの採用や固定式脚から格納式の着陸

装置、2人から4人乗りなるなどの規制緩和がメインになります。これにより、飛行距離が

大幅に延長され、観光や個人の旅行などの拡大、精度の高い訓練機として使用が可能にな

るメリットがあります。

より重い重量を実現することで、メーカーは高度な失速耐性機体、荷重率の回復力の向上、

客室衝突安全機構の改善、弾道安全パラシュート、旅客用エアバッグ、より強力で耐久性の

高い着陸装置、より多くの燃料など、安全性を強化する設計や機器を組み込むことが可能

になります。

スポーツパイロットが操縦できる航空機の変更

この改定でスポーツパイロットが操縦できる航空機の範囲を拡大することになります。

今までスポーツ パイロットは、乗客 1 名のみの搭乗に限定されていましたが、より重い

航空機や、最大 4 席の航空機を操縦することができます。この乗客 1 名という制限は、

4 人乗りの飛行機で飛行訓練を行うスポーツ パイロットの評価を持つ飛行教官にも適用

されます。さらに、この提案には特定の機能の拡張が含まれています。 制御可能なピッ

チプロペラを備えた航空機、格納可能な着陸装置を備えた航空機、および夜間運用を行う

航空機に対して、訓練と承認を通じてスポーツパイロットの特権を与えることを提案。

このの提案は、スポーツパイロットの評価を伴う飛行教官証明書の特権と制限に影響を与

える規制にも、対応する変更を加える予定です。

これらの改正により、スポーツパイロットが操縦できる航空機の種類が拡大され、スポー

ツパイロットの操縦権限が拡大され、一部の試験要件が改訂され、スポーツ パイロット

の訓練として、FAA 認定の航空訓練装置 (ATD) およびフライト シミュレーション訓練

装置 (FSTD) の使用を許可します。さらに、FAAは、これらの新しい航空機の安全な運航

を確保するために、簡素化された飛行制御指定で航空機を運航しようとする者に対するト

レーニングとインストラクターの承認要件を提案しています。

つまり、今までよりは、パイロットは大きな航空機に乗れることにはなりますが、その

分訓練する時間は多くなります。またインストラクターも新たに資格を取得しなければな

らなくなるでしょう。ただ、FAA は、 スポーツ パイロットが 2 人乗りの飛行機を操縦す

るために現在必要とされる最低限のパイロット スキルは、4 人乗りの飛行機を操縦するの

に必要なスキルと同等であるとしています。

一般的に、座席が 4 つを超える飛行機は大型化、複雑化するため、安全に運航するにはパ

イロットのスキルの向上が必要になります。FAAは、スポーツパイロットに4席以上の飛行

機の操縦を許可すると、国家空域システム(NAS)での運航に許容できないリスクの増大

をもたらす可能性があると判断したために、座席を4席に制限しました。

業務範囲の拡大

航空機の性能が向上することによって、それまで禁止された業務などが可能になるかもし

れません。その一つが夜間飛行です。

FAAは米国の多くの州が冬季の日照時間を短縮していることを認めています。日照時間が

少ない日には、スポーツ パイロットは、天候や予期せぬ出来事による遅延のため、日没後

であっても飛行を完了しなければならないというプレッシャーにさらされることがあります。

FAAはスポーツパイロットに一定の訓練と経験の要件を満たし、認定インストラクターから

の承認を得ることで夜間操縦の資格を与えることを提案しています。

具体的には、スポーツ パイロットが夜間に安全に航行するために必要なスキルを持ってい

ることを証明するために、FAA は新しいリスク軽減訓練要件を提案しています。例えば、

3時間の夜間飛行、10回以上の夜間離着陸、夜間航法などです。

FAAは、スポーツパイロットがヘリコプターの特権を保持できるようにすることを提案す

ることに加えて、スポーツパイロットのインストラクターがヘリコプターの特権を取得する

か、インストラクターの特権にヘリコプターの特権を追加できるようにすることも同様に

提案しています。

ライトスポーツ航空機の可能業務として農業、森林および野生動物の保護、などが引き続き

含まれます。 FAA が指定する測量、パトロール、気象管理、航空広告に加えて、農業分野

では害虫防除、粉塵防除、果実乾燥および霜防除を追加することになります。

残された課題、騒音

航空機が大きくなると、どうしてもエンジンの出力も大きくしなければなりません。

今までのライトスポーツカテゴリーの航空機は、軽量でエンジンの騒音も抑えられてきま

した。そもそも騒音については明確な規制はありませんでした。今後、新たなカテゴリー

で運行するとなると、騒音問題が付いて回ります。

FAA は 2016 年に小型型式認定航空機の耐空性基準を改正しました。この基準では、最大

座席定員が 19 名以下、最大離陸重量が 19,000 ポンド以下の航空機をリスクベースで区分

しています。型式認定を受けた航空機は、航空機騒音に関する既存の基準を満たさなければ

なりません。現在、米国では騒音基準はライトスポーツ機には適用されていません。

騒音問題は、航空法だけではなく騒音認証とは異なる法定および規制基準、たとえば 国家環

境政策法 やその他の特別目的法に基づいて個別に評価されます 。

FAAは、適切な認証基準を決定し、メーカー側にその基準を遵守させる事を目指しています。

まとめ

提案された規則は、ライトスポーツ航空機分野における機会を大幅に拡大します。これらの

拡張により、安全性とレクリエーション上の利点がもたらされる可能性があります。また、

関連する設計および製造が拡大し、コストが削減される可能性もあります。

提案された規則では、騒音基準もこの分野に適用され、時代遅れで騒音が大きすぎる技術が

ライトスポーツ航空機に導入されるのを防ぐことになります。FAA は、業界のコンセンサス

基準を使用すれば、騒音基準への準拠は最小限になると予想しています。

FAA は、コンセンサス基準を使用して、新興航空機タイプを含むライトスポーツカテゴリー

の航空機として認証される可能性のある航空機クラスの革新を拡大し、可能にするこの提案

を検討しています。安全性を高める設計や装備の導入を妨げる規定の重量制限を撤廃。パイ

ロット訓練環境のためのより堅牢な航空機を実現します。乗客、燃料、貨物の収容能力を向上

させることができます。また電気推進を可能にします。個人旅行により適した、より高速で

高性能な航空機を実現します。コンセンサス基準を満たさないアマチュア製航空機の魅力的な

代替機を可能にすることで、安全性を強化することを目指しています。

現在、アメリカの製造業はインフレの影響と人手不足により大きく落ち込んでいます。

このFAAの提案が、アメリカ小型機製造業に大きな恵みを与えてくれることになるのでしょう

か?

そして、現在日本はこのLSAさえ無い、航空鎖国状態です。

まずは、日本にLSAを!これから始めましょう。そうでないと、日本の航空業界の夜明けは

永遠に来ることはないでしょう!

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

 

 

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