皆さんこんにちは!
1956年9月27日に、アメリカの超音速実験機X-2が墜落、パイロットも
帰らぬ人となりました。今日は、音速の幕開け時代のパイオニア、X-2と初め
て音速を超えたX-1についても見ていきます。
超音速実験機X-2
X-2は、アメリカで開発された超音速実験機です。愛称はStarbuster(スター
バスター)。製造はベルエアクラフト社です。1956年に非公式ですがマッハ3
を記録しています。
1945年10月、ベル社はドイツから持ち帰った技術である後退翼を持った、高
速実験機の開発をスタートしました。やがてこの機体はアメリカ空軍の目に留
まることとなり、同年12月にXS-2として、マッハ3.5の超音速と高度40,000m
弱の上昇、および空力加熱について研究を進めることになりました。
実験機2機が作成されることとなり、1950年11月11日、ナイアガラフォールズ
の工場において、先に2号機が完成しました。空中母機の開発遅延により1952年
から滑空試験を開始しました。1953年5月12日、2号機による初の動力飛行が計
画され、母機B-50Aに搭載、オンタリオ湖上空において、試験が行われること
となりました。しかし、母機からの発進前に爆発、母機は帰還できたものの試験
機は失われ、ベル社のテストパイロット、ジーン・ジーグラーと観測員1名が死亡
しました。また、1号機は1955年11月18日から動力飛行を開始しました。
1956年7月23日の9回目のフライトで、フランク・エベレストの操縦する1号機は
3,058km/h(マッハ2.8706)の速度記録を樹立。1956年9月7日の12回目のフ
ライトでは、アイブン・キンチェローの操縦により高度38,376mに到達しました。
1956年9月27日の13回目のフライトにおいて、ミルバーン・アプトが2,178
マイル毎時(マッハ3.3)を記録しますが、帰途に操縦不能となり、機体から脱出
カプセルは分離したものの、アプトはカプセルからの脱出が間に合わずに死亡し
ました。2機とも事故で失われたため、実験は終了しました。
XS-1
XS-1(X-1)とは、アメリカの有人実験機で、世界で初めて水平飛行で音速
を突破した有人航空機(ロケット機)であります。
第二次世界大戦の影響もあり、1930年代から1940年代にかけてレシプロ
エンジンは急激に進化し、それに伴い航空機の速度も右肩上がりに増加していき
ました。しかし航空機の速度が700km/hを超えるあたりになるとプロペラの先端
や翼上面の空気流が音速(マッハ 1)に近づき、衝撃波が発生して空気の性質が
激しく変化するようになります。抗力が急増すると共に、機体が異常な振動(バ
フェッティング)を起こし、場合によっては操縦不能、空中分解ということもあ
りました。これがいわゆる音の壁と言われるものです。
1940年代になると、各国でジェットエンジンが開発されたことにより、音速飛行
は現実味を帯びてきました。
1944年にベルエアクラフト社がXS-1を開発し、1946年1月19日に初
飛行を開始しました。
チャックイエーガー
チャックイエーガー(陸軍大尉)は、1947年10月14日、イエーガー自身
50回目のフライトでマッハ 1.06 を記録、人類初の有人超音速飛行となりまし
た。音速突破時には予想されていた衝撃波による振動もほとんど無く、意外なほ
どにあっさりと音速を超えてしまったといいます。実際、私もF-4ファントム
でマッハを超えたときも何も変化はありませんでした。唯一、マッハ計の針が
ピクンと跳ね上がる(マックジャンプと呼ばれています)のです。
イェーガーは音速突破をおこなう 2 日前の 12 日の夜間に乗馬していたところ、
落馬し肋骨を骨折していました。イェーガーは当日、痛む患部を隠しながら XS-1
に搭乗しようとしましたが、XS-1 の搭乗口を閉めるには前かがみになる必要があ
り、骨折している身には困難なことでありました。しかし、そのことが周りに知れ
ればテストパイロットから降ろされることは明らかであったため、イェーガーは
同僚のリドレイ大尉にのみ事実を伝え、どうすればいいか相談をしました。リド
レイはモップの柄によって搭乗口を閉めることを提案し、無事イェーガーは XS-1
の搭乗口を閉めることができた。このエピソードは映画『ライトスッタフ』にも
描かれています。
チャックイエーガーはその後、次々と音速の記録を塗り替え、1953年12月
12日にX-1Aでマッハ2.44を記録しました。1962年からはアメリカ空軍の
テストパイロット学校の校長を務めたり、ベトナム戦争では指揮官を勤めるなど
貢献してきました。そして2020年12月7日に97歳で人生の幕を閉じました。
勇気は勇気は
初めて何かをするときには、とても勇気がいります。テストパイロットは、それ
まで誰も乗ったことのない飛行機に乗るわけですから、心中穏やかではありません。
それでも、人類のため、世界のためにその身を立ち向かう勇気は見習いたいと
思います。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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