皆さんこんにちは!
今日は、映画『トップガン マーベリック』を観てきました。
主演は、トムクルーズ。前作『トップガン』(1986年公開)から、36年の時を経て
続編の『トップガン マーベッリク』が5月27日に公開されました。
私は前作(1986年当時)、ちょうど戦闘機に乗り始めたばかりでたいへん感動した
記憶しかありません。確か2回続けて観ました。
今回も前作同様、戦闘機の飛行シーンは手に汗握る迫力がありました。
今回の作品も、我々戦闘機乗りが視てもたいへんよくできています。
皆さんも是非、ご覧になってください。
さて、トップガンに出てくる戦闘機について
前作(1作目)はF-14 トッムキャット
今回の戦闘機は・・・F/A 18 E/F スーパーホーネットです。
よく、F/A18 ホーネットとこのスーパーホーネットは姿形はたいへん似ていますが
全く別の戦闘機です。
それでは、解説していきましょう。
ここではホーネットとスーパーホーネットとして区別していきます。
まずは、両機とも、アメリカ、マクドネルダグラス社(現ボーイング社)が開発した
戦闘機です。ホーネットとは『スズメバチ』という意味です。
ホーネットは1970年から1980年代に開発された戦闘機です。
1970年代初頭、アメリカ空軍はF-4ファントムの後継機として、F-16を
採用しました。一方、アメリカ海軍はF-14を採用していました。F-14は
艦隊防空に特化した優れた戦闘機でありましたが、可変翼を採用していたために
高価になってしまい、F-4の後継機として更新がなかなか進みませんでした。
同じ頃、海兵隊もA-7 コルセアⅡの後継機を探していました。
F-4ファントム
A-7 コルセアⅡ
ちなみに、頭文字の『A』は攻撃機(Attacker)のA、『F』は戦闘機(Fighter)を
表しています。そして、海軍は攻撃機を兼ねたF/A 18 ホーネットを採用したのです。
時は流れ、ソ連が崩壊した翌年1992年、東西の冷戦が終結し軍縮が叫ばれる中、
アメリカ海軍は次期戦闘機の選定に追われていました。新しく戦闘機を開発することは
国内外にも問題があり、軍事予算の承認が難しいと判断し、F/A18ホーネットの
改良型という名目で承認を得たのでした。
それが、F/A 18E/F スーパー ホーネットの誕生です。
単座機をF/A 18 E、複座機をFとして新型機にもかかわらずホーネットに似せて
作ったのでした。
ホーネットとスーパー ホーネットはどのような違いがあるのでしょうか?
まずは大きさは一回り大きくなりました。
ホーネット スーパーホーネット
全長 17.07m 18.38m
全幅 11.43m 13.62m
主翼面積 37.2m 46.45m
見た目の違いは、エンジンの空気取り入れ口の形状の変更です。
左がホーネット、右がスーパーホーネットです。
性能ですが、高性能のF141というエンジンに変更しました。
F141エンジンは、完全自動化デジタル式電子制御システム(FADEC)を装備。
これにより、エンジンの故障が格段に少なくなりました。
ただし、エンジンのサイズを変更せずに高推力化したために騒音が大きくなりました。
ちなみに、私が今民間航空会社で乗っているA320(エアバス社)のエンジンも
FADECを装備しています。これによりスムーズな加速やエンジンの失速防止
燃費の向上などたいへんメリットが大きいです。ちまたで噂されているスーパーホーネットの
加速が悪いというのはこのFADECの影響だと思います。
次にレーダーの高性能化です。
従来のものと比べると約2倍の性能を持つと言われています。イラク戦争(2003年)で
初めて実戦投入されたときに、その性能が証明されました。
そして、空中給油システムの追加です。
内部タンクと増槽4本、合わせて最大29000ポンド(13トン)の燃料を搭載することが
できます。これにより、大幅な進出距離を確保できます。
スーパーホーネットは第4.5世代の戦闘機と言われています。
第4.5世代の戦闘機とは?
① フライバイワイヤー(操縦系統)
② ステルス機能
③ マルチロール化(艦載機など多様化)
(米) F15E、F16、F/A18E/F
(ロ) MIG29,Su30、34,35,37
(ヨ) ユーロファイター タイフーン
(中) J10、J16
(日) F2
この中にあって、スーパーホーネットは世界最強の戦闘機ランキングで第4位です。
1位 F22 ラプター
2位 F35 ライトニングⅡ
3位 J20
4位 F/A18E/F スーパーホーネット
そして、スーパーホーネットは最強の艦上戦闘機と呼ばれています。
その理由は、『ブリングバック』、直訳すると『持ち帰り』です。
ブリングバックとは、兵器装備をしたまま空母に着艦できることです。
全ての航空機(軍用機、民間旅客機)は、最大着陸重量が決まっています。
つまり、離陸ができてもある程度重量を減らさないと着陸できないのです。
これは、着陸装置(タイヤや脚)の強度によるものです。
民間機でも離陸直後にトラブルがあった場合、この重量になるまで燃料を減らして
着陸しなければなりません。
戦闘機においては、大量の爆弾やミサイルを積んで行ったとしても、そのミッションが
不成立(敵と遭遇しなかった、悪天候で引き返さなければならなかったなど)だった場合
爆弾やミサイルを無駄に落とすわけにはいきません。特に極めて狭い空母の飛行甲板に
着陸しなければならない艦上機は厳しいものがあります。
スーパーホーネットはその制限がありません!
これが、最強の艦上戦闘機と言われる理由です。
これらをわかった上で『トップガン マーベリック』を観ていただくと
より楽しめるのではないでしょうか?
なお、映画を見終わった後の自動車の運転には十分気をつけてくださいね。
思わずアクセル全開になりますよ。スーピードの出し過ぎに注意しましょう。
それでは今日はこの辺で。
またお会いできる日を楽しみにしています。
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