飛行船の静かなる戦い

飛行機

皆さんこんにちは!

空飛ぶクルマeVTOLや電機航空機に目が行きがちな昨今ですが、密かに飛行船が注目を

集めています。なんとそのエンジン(動力)は、ハイブリッド(水素)なのです。

今日は、水素動力飛行船を開発製造しているH2 Clipper と新しい電気モーターの飛行船

Hybrid Air Vehicles、同じくハイブリッドの空飛ぶクジラFlying Whales を紹介します。

太陽光発電からの水素燃料電池:H2 Clipper

H2 Clipper is developing a large, long-range airship called the "Pipeline-In-The-Sky"

H2 Clipper の「Pipeline-In-The-Sky」(画像:H2クリッパー)

H2 Clipperは、カリフォルニアに本拠を置くスタートアップ企業です。その開発して

いる大型飛行船を Pipeline-In-The-Sky (空のパイプライン)と名付け、2028 年

に実物大のモデルを飛ばすことを目指しています。

飛行船は、側面に取り付けられた 4 つの 6 ブレード可変ピッチ プロペラ エンジンと、

後部に取り付けられた単一の可変ピッチ 8 ブレード プロペラ エンジンを使用し、

合計 33,200 SHP の馬力を提供します。5 つのエンジンはすべて、搭載された燃料電

池を動力源とする電気モーターを使用しているため、100% カーボンフリーの飛行が

可能です。サイド モーターは、低速操縦制御を提供するために独立して作動させるこ

とができます。安定性は、弾丸型の胴体の後端にある 3 つのフィンによって支えられ

ており、H2 クリッパーは最新のフライバイワイヤ飛行制御を使用します。

抗力を最小限に抑えて高速化と燃料効率の向上を実現するために、飛行船には典型的な

外部ゴンドラ コンパートメントがありません。代わりに、H2 クリッパーの膨大な内部

容積の一部を貨物の保管用に確保し、固定レール システムを使用して積み降ろしを容易

にする予定です。

H2 Clipper の推進システムは、太陽光発電アレイによって補完された水素燃料電池であ

り、電気モーターがプロペラを回転させ、陽子交換膜燃料電池によって生成された電力と

太陽光発電の組み合わせから電力が供給されます。同社によると、水素を燃料源と飛行船

の揚力ガスの両方に使用することで、推進効率と浮力の両方を最大化できます。

速度は時速150マイル(214km/h)、航続距離は6000マイル(9656km)。

ペイロードは4万ポンド(150トン)以上で35個の輸送用コンテナを搭載できます。

これは通常の貨物船の2倍のペイロード、10倍の貨物量になります。また、航空貨物便

より70%もコストを抑えることになります。

飛行船の予想耐用年数は、定期的なメンテナンスを行えば 50 年以上、従来の航空機よ
りもはるかに長く使用できます。
H2 Clipper は今月、計算流体力学 (CFD) を使用してその設計を評価するシミュレート
された風洞試験の完了とともに、水素動力飛行船を市場に投入する計画の進捗状況を
報告しました。
H2 Clipper は、既存の石油とガス、または水道のパイプラインを使用して最大 1,000
マイル(約1600km)まで燃料を運ぶ水素分配システムも開発しています。同社は 2 月
に、燃料を配送するための「Pipe-Within-a-Pipe」技術と呼ばれるアメリカの特許を取得
しました。

飛行船のパイオニア Hybrid Air Vehicles (HAV)

Hybrid Air Vehicles' Airlander 10 airship

Hybrid Air Vehicles の Airlander 10 飛行船(写真:Hybrid Air Vehicles)

イギリスに本社を置くHybrid Air Vehicles (HAV) は、開発中の Airlander 10 飛行船

のハイブリッド電気バージョンを 2025 年までに商業運転用に認定し、2030 年までに

全電気バージョンを認定することを目指しています。

Collins Aerospace は、Airlander 10 飛行船に提供する最初の 500 kW 電気モーターの

製造を開始しました。このE-HAV1 モーターは推進器を直接駆動し、1,000 ボルト DC

電源で約 2,000 rpm で動作します。HAV は、プロパルサー ユニット用の 3 枚羽根プロ

ペラを開発しています。推進システムには、水素燃料電池が組み込まれます。

HAVは最大約 425 km (265 マイル) の航空路線をサポートできると述べています。

エアランダー 10 の最高速度は約 75 ノット (時速約140km) で、従来の航空機よりも

大幅に遅くなります。しかし、HAV は、乗客が空港を完全に迂回して、あるダウンタウン

の場所から別の場所に直接飛行し、海辺、ドック、または陸上の平らな面から離陸する機

会を提供することで、競争力を高めることができると考えています。

場合によっては、エアランダーは代替輸送手段よりも 75% 少ない CO2 排出量を生成する

と HAV は述べています。

たとえば、エアランダー 10 でシアトルのダウンタウンからバンクーバーの中心部まで

205 km の飛行を行うと、4 時間 12 分かかり、乗客 1 人あたり 4.61 kg の CO  2が発生。

空港への送迎、長いチェックインおよびセキュリティ プロセスを考慮すると、現在の航空

会社による同じ移動には 3 時間 6 分かかりますが、乗客 1 人あたり 53.15 kg のCO 2

が発生します。

別の例はスカンジナビアで、政府は空の旅による二酸化炭素排出量を削減することを目的

とした政策を展開しています。HAV によると、エアランダー 10 は、ノルウェーの首都

オスロの中心部からスウェーデンのストックホルムまでの 423 km の旅を 6 時間 33 分

で行うことができ、これは 3 時間 49 分の飛行機の旅よりもかなり長いですが、航空便

の 64.28 kg と比較して、乗客 1 人あたりのCO2はわずか 4.58 kg です。

同社は現在、今年後半に民間認証プロセスを開始し、2023 年までに 3 機の航空機を試験

飛行させる予定です。 エアランダー 10 は、年間 12 機のペースで生産されます。

エアランダー 10 飛行船は、2025 年から地域の航空会社で最大 100 人の乗客を運ぶ準備

が整っているとのことです。豪華なツアーやオンデマンドのアーバン エア モビリティ サ

ービスから、スケジュールされた都市間運行用の高密度バージョンまで整っています。

Hybrid Air Vehicles Airlander 10 cabin

優れた乗客体験を提供する可能性を実証するために、さまざまなキャビン インテリア コン

セプトをリリースしました。(画像:Hybrid Air Vehicles )

空飛ぶクジラのエンジンもハイブリッド

A rendered image of Flying Whales' LCA60T heavy-lift airship

Flying Whalesの LCA60T 重量物飛行船(画像:Flying Whales)

フランスを拠点とし、カナダに子会社を持つスタートアップ企業Flying Whalesは 、

2012 年からハイブリッド電気飛行船を開発してきました。

LCA60T 飛行船は、長さ 200 メートル (650 フィート) で、最大 60 トン (130,000

ポンド) の貨物を輸送することができます。Flying Whales は、飛行船の航続距離は

最大 1,000 km (620 マイル) になると述べていますが、実際には約 100 km (62 マ

イル)の短い飛行に使用されます。  

10 個の非加圧ヘリウム セルで構成されている LCA60T は、コストのかかる地上イン

フラストラクチャを必要とせずに、垂直に離着陸することができます。そのハイブリッ

ド電気パワートレインは、Honeywell の 1 メガワットの発電機と、ジェット燃料また

は持続可能な航空燃料で動作するギアボックスおよびタービンを統合します。発電機は

電気エンジンに電力を供給します。電気エンジンは、従来の燃焼エンジンよりも効率的

で、二酸化炭素排出量が少なくなります。

4 月 5 日にパートナーシップを発表した Honeywell は、2022 年後半に実施された最新

の地上試験で、1 メガワットの発電機が期待を上回ったと報告しました。これらの最近の

試験では、発電機は 1.06 MVA (1 MW) の電力レベルで動作しました。Honeywell によ

ると、テストは 1,000 キロワットで継続的に実行され、約 8 kW/kg の高い電力密度と

約 97% の効率率が実証されました。

Flying Whales は当初、LCA60T を使用して、到達が困難な農村地域から伐採された木材

を輸送することを計画していました。現在、同社は航空機のより幅広い顧客ベースをター

ゲットにしています。たとえば、風力タービンや建設資材などの重くてかさばる貨物を

輸送できます。また、ロケットの部品を輸送する可能性もあります。打ち上げプロバイダ

ーのアリアンスペースの親会社であるアリアングループは最近、フランス領ギアナにある

アリアンスペースの施設でアリアン 6 ロケットのコンポーネントを輸送するために LCA60T

を使用できるかどうかを調査するために、Flying Whales との同意書に署名しました。

LCA60T のプロトタイプは 2023 年に製造される予定で、Flying Whales は 2025 年に

航空機の最初の生産バージョンを飛ばすことを目指しています。同社は、今後 10 年間で

150 機の飛行船を製造する予定です。

まとめ

これまでの飛行船のイメージとしては、機体に広告を載せたりと人や物を運ぶという

イメージはありませんでした。しかし、近年は水素が燃料として認められてきました。

しかし、水素=爆発=危険というレッテルは払拭できていません。

水素の安全性については各企業(自動車会社を含め各企業が様々な実証実験を行って

その安全性を証明しています。

たとえば、ガソリン、ディーゼル燃料、または天然ガスで満たされたタンクに向けて

ライフルを発射すると、タンクが爆弾のように爆発することがよく知られています。

ただし、水素で満たされたタンクに近距離から同じライフルを撃つと、タンクに穴が

開き、そこから水素が放出されますが、爆発はしません。

また、車から漏れたガソリンに引火すると、タンクが爆発し、車全体が急速に燃え尽

きてしまうこともよく知られています。しかし、水素タンク内で漏れに点火するとい

う同じことを行うと、すべての水素が使い果たされるまでタンクから青い炎が漏れ出し

ます。ガソリン タンクとは異なり、これは爆発を引き起こさず、車両の内部温度を数

度以上上昇させることさえありません 。

その理由は、水素の膨張率が非常に大きいことと、水素が空気よりも軽く、放出される

と急速に膨張することにあります。これらのような厳密なテストにより、水素は人類が

知っている最も安全な燃料であることが確認されたのです。これは、水素事故が発生し、

その後爆発が起こらなかった場合に常に実証されていることです。実際にホンダ、トヨタ

ヒュンダイは現在、カリフォルニアで水素燃料電池車を販売しています。

また、水素を燃料電池に使用することは今ではハイブリッドとして一番効率が良いことは

周知の通りです。水素を使うことはCO2を排出しないことなのですから。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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