皆さんこんにちは!
ベンチャー企業は夢があり多くの技術者が憧れ、開発に情熱を注ぐ姿は幸せな未来を期待せずにはいられません。
しかし現実は、多くの企業が開発に時間がかかり、資金調達の問題に直面しています。
2025年に倒産したドイツのリリウム、何とか再生を図ったボロコプター。そして今、危機に直面している韓国のスーパーナル。
ヒュンダイのeVTOL部門スーパーナルが従業員の大半を削減
スーパーナルは従業員の80%にあたる296人を解雇

スーパーナルは、2024年7月にファーンボロー国際航空ショーでS-A2 eVTOL航空機のモックアップを展示した。
韓国の自動車メーカー、ヒュンダイの都市型空中移動(アーバンエアモビリティ)子会社
スーパーナルは先週、従業員の約80%にあたる296人を解雇しました。eVTOL機開発プロ
グラムの維持に苦戦する同社だが、広報担当者はAINに対し、スーパーナルは「閉鎖するわけではない」と述べました。
2月27日に発表された今回のレイオフは、昨年7月に52人の人員を削減した一連のレイオフ
に続くものです。当時、スーパーナルは今回の決定について、「事業における技術開発
フェーズから製品開発フェーズへの組織再編」と説明していました。
カリフォルニアを拠点とする同社の広報担当者は今週、「スーパーナルの当面の焦点は今回
の決定によって影響を受けることはなく、引き続き会社の安定化、新たなビジネスモデル
の構築、商業的に実現可能な航空機の開発に注力していく」と述べ、同様の見解を示しました。
「今回の決定は、市場に適合した航空機設計の長期的な実現に向けて、人員配置とコスト
構造を最適化するための戦略的な転換です。現代自動車グループは、将来のモビリティ
ビジョンの一環として、先進航空モビリティ事業への取り組みを継続しており、スーパー
ナルは引き続きグループの航空機開発におけるAAM(高度航空モビリティ)実行専門機関
として機能していきます」と、広報担当者は電子メールで声明を発表しました。
スーパーナルは、実機実証機による初飛行を1年前の2025年3月1日に達成しましたが、
計画されている4人乗りのS-A2型機の量産型プロトタイプ機の飛行試験はまだ開始してい
ません。同社は以前、2028年の型式証明取得と商業運航開始を目指していると発表していました。
現代自動車グループは8月、ジェイウォン・シン氏がスーパーナルのCEOおよび現代自動車
の先進航空モビリティ部門の責任者を退任し、顧問に就任すると発表した。シン氏の後任は
まだ指名されておらず、その間、事業開発担当シニアディレクターのデビッド・ロットブラット氏が暫定最高執行責任者(COO)を務めています。
ベンチャーの行方
スーパーナル社の大規模レイオフのニュースは、次世代航空モビリティ(AAM/eVTOL)
業界に吹き荒れる厳しい「冬の時代」を象徴しています。航空宇宙やディープテック
(深層技術)分野におけるベンチャー企業の資金難は、世界共通の深刻な課題です。
巨大企業のバックアップがあっても「資金が枯渇する」現実
まず前提としてお伝えしたいのは、スーパーナルは純粋な独立系ベンチャーではなく、
世界的な大企業である「現代(ヒュンダイ)自動車グループ」の子会社であるという事実です。
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大企業ですら耐えきれない燃焼率(バーンレート): 記事にある通り、スーパーナルは従業員の80%(296人)を解雇し、組織を縮小しました。2028年の型式証明取得と商業運航を目指す中で、航空機開発には毎年数百億円から数千億円単位の資金が溶けていきます。自動車という巨大な収益源を持つヒュンダイでさえ、市場の立ち上がりの遅さと開発コストの重さに耐えかねて「コスト構造の最適化」に踏み切らざるを得なかったのです。
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「死の谷」の深さ: リリウムの破産やボロコプターの苦境も同様ですが、航空機開発は「飛ばす(技術実証)」までよりも、「安全証明(型式証明)を取り、量産化する」フェーズで莫大な資金を必要とします。ここを民間資金だけで乗り切るのは至難の業です。
米国・中国が強い理由:国家・軍という「巨大な初期顧客」
ご推察の通り、米国や中国のeVTOL・宇宙ベンチャーが開発を推し進められる最大の理由
は、国や軍が「資金提供者」かつ「最初のお客さん」として機能しているからです。
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米国(国防総省の存在): 米空軍には「AFWERX(アジリティ・プライム)」というプログラムがあり、ジョビーやアーチャーといったeVTOL企業に多額の資金援助と軍事基地での試験環境を提供しています。軍が「人員輸送や物資輸送に使える」と判断して先行購入してくれるため、民間市場が立ち上がるまでの強力な命綱となります。
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中国(国家の全面支援):イーハングやオートフライトなどは、政府の強力な補助金と、特区を活用した法規制の超スピード緩和(実証実験の許可や型式証明の早期発行)によって恩恵を受けています。国家戦略として産業を育成する姿勢が明確です。
日本ベンチャーの難しさと将来性
日本のスペースワン社による「カイロス」ロケットの事例に触れられましたが、まさに日本のディープテック・ベンチャーが直面する構造的な難しさがそこにあります。(※補足すると、スペースワンもキヤノン電子やIHIなどの大企業が出資する合同プロジェクトですが、それでも開発の壁は極めて高いです)。
日本のハードウェア・ベンチャーが抱える難しさ
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「忍耐強い資本(Patient Capital)」の不足: 日本のベンチャーキャピタル(VC)はITやソフトウェアなど、3〜5年でリターン(上場や売却)が見込める分野への投資を好みます。航空宇宙のように10年以上の赤字掘りを前提とする産業への民間資金の供給力は、米国に比べて圧倒的に細いです。
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防衛費(軍事)の壁: これまで日本は、軍事技術と民生技術を明確に分ける傾向が強く、米国のように「自衛隊がベンチャーのドローンやeVTOLを初期費用を負担して大量購入し、育成する」というエコシステムが機能していませんでした。
日本ベンチャーの将来性と活路
決して絶望的というわけではなく、日本でも生き残りをかけた新たなアプローチが始まっています。
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「デュアルユース(防衛・民生両用)」への転換: 日本政府も危機感を抱き、防衛省がスタートアップの技術(ドローンやAIなど)を積極的に採用・資金援助する枠組み作りを本格化させています。これが機能すれば、日本のベンチャーにも「国という初期顧客」が生まれます。
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大企業との戦略的連携(オープンイノベーション): 日本の強みは、三菱重工、川崎重工、スバルといった航空宇宙産業の厚いサプライチェーンと職人技術です。ベンチャーが単独でゼロから工場を作るのではなく、日本の既存の重厚長大産業の生産ラインと上手く統合していくことが、生き残るための現実的な解になります。



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