チェコのLSA Part 1

飛行機

皆さんこんにちは!

LSA(Light Sports Aircraft)先進国である、チェコ共和国

ヨーロッパの小国ではありますが、飛行機や自動車の製造に関しては世界で最も進んでいる

国です。それでは、チェコ共和国航空アマチュア協会(LAA CR)の活動と一緒に見ていきま

しょう。

チェコ共和国航空アマチュア協会(LAA CR)

チェコ共和国航空アマチュア協会(LAA CR)の活動

チェコ共和国航空アマチュア協会(LAA CR)とは、スポーツ飛行装置(SLZ)の分野で

管理活動を行うためにチェコ共和国運輸省から許可を受けた管理団体です。協会の原則

から、管理局の会員または会員から選出された評議会の監視下に置かれており、それに

よって業務の効率性を保つ要件になっています。協会の活動の基本は、非営利、レクリ

エーションおよびスポーツ飛行です。

スポーツ飛行装置(SLZ)、パラグライダー、動力パラグライダー、ハンググライダー

回転翼航空機、ヘリコプター、重心制御航空機、空力制御航空機、離陸重量600kg

までのアマチュア製の超軽量航空機(ELSA)、超軽量グライダー、および超軽量気球

を意味します。

LAA CRには約6,400人の会員がいて、7,900機の航空機と10,000人のパイロットが

登録されています。この観点からするとこの種の団体としてはヨーロッパ最大規模

言えます。

LAA CRは、4つの団体があり、それぞれの組合は総会で選出された独自の理事会によ

って管理運営されています。その4つの団体は

① ハンググライダー協会

② パラグライダー協会

③ モーターパラグライダー協会

④ 超軽量航空協会

この超軽量航空協会の中に、ELSAが含まれています。

またLAA CRは、損害傷害保険など充実した保険制度を取り扱っており、会員になると

優遇措置が設けられており、安全に関する取り組みも評価されています。

ELSAのカテゴリーと基準

ELSAとは、アマチュア製の空力制御飛行機(設計の3分野である・エンジン・

構造といった要素技術を飛行制御システムによって統合し、その機体の運用目的を効率

よく達成する制御技術として定義されている航空機)のカテゴリーです。

カテゴリーの正確な定義は、アメリカでのLSAカテゴリーに使用されているASTM F2245

規制に基づいた基準を採用しています。

この国際規格は、世界貿易機関貿易技術障壁 (TBT) 委員会によって発行された国際規格、

ガイドおよび推奨事項の開発のための原則に関する決定で確立された、国際的に認められ

た標準化原則に従って開発されています。

離陸重量が最大600kgのアマチュア製LSAです。操縦、運用、保守については、LAA

CRによって発行されたSLZの規制が適用されます。ELSAとSLZの違いは、設計基準が異

なっており、ELSAの基準はSLZよりも厳しくなっています。なぜこのような基準になっ

ているかと言いますと、ELSAで十分な経験を積むことを目的として、既存のSLZ規制へ

の追加条件の形で発行され、同時に既存のSLZ規則に影響を与えないようにしているか

らです。

また技術証明書(TC:Technical certificate)の基準も、個人で製造された飛行機のプロト

タイプの耐空性を示すタイプZ(有効期間は1年)。タイプPは、LAA CRタイプ証明が

付与された航空機の耐空性の技術証明書(有効期限2年)。型式証明を付与された航空機

の文章にしたがって自社で製造された航空機の証明書のタイプA(有効期限2年間)の

3タイプに分類され、厳しい基準が設けられています。

ELSAの基準はアメリカのLSAの基準とは同じではありません。以下が条件です。

格納式着陸装置と調整可能なプロペラ(可変ピッチプロペラ)の使用

(アメリカのLSAは固定脚、固定ピッチプロペラ)

・最大離陸重量600kgを超えない(救助システムを含む)

・失速速度(Vso) 75km/h(40.5ノット)(アメリカは45ノット)

・エンジンは、非タービンエンジン1基

・非加圧キャビン

・固定翼機

・最小ペイロード 最大離陸重量600kgの時は250kg、450kg以下は150kg

・最大エンジン出力 89kW(120K)

このように、アメリカや他の国のLSAより、高性能な機体の基準を求めています。特に

格納式着陸装置を装備することで、巡航中の抵抗が減り速度性能が格段に向上します。

しかしそれは、機体の構造が複雑になりますし、装備部品が増えることで機体重量が

増えてしまいます。そうなるとカテゴリー条件の600kgを超過してしまう結果になり

ます。裏を返せば、それだけの技術を持っていることの証明になります。それだけ、

チェコの航空機製造技術が優れているということです。

ELSAのパイロットライセンスは、LAA CRが定めたライセンスを取得することで条件

を満たします。また海外への渡航(飛行)も、その国の許可が下りれば可能となります。

ELSAの値段

取得コストは、航空機を自分で製造するか、工場で製造された新しい航空機を購入する

かによって大きく異なります。数千時間の自作作業を除けば、自社での製作コストは数

十万のオーダーに及びます(最も大きなものは適切なエンジンで、車のエンジンを改造

することで比較的手頃なコストで入手できます)。

工場生産の航空機の価格は100万から200万CZK(624万~1248万円)の範囲です。

運航コストは、航空機を所有するか、チャーター機を運航するかによって異なります。

現在、パイロットに航空機をレンタルするレンタル事業者が多数存在します。飛行時間

の価格は、種類と航空会社によって異なりますが、1000 CZK から 2000 CZK です。

(62,400円~124,800円)。

独自の航空機の運航コストは、いくつかの要因によって異なります。最初の、ただし必ず

しも最も重要な要素ではありませんが、稼働資材の消費です。これは、一人乗りウルトラ

イトの約 7 リットル/時間から二人乗りの約 13 (ただし、場合によっては最大 20) リッ

ル/時間の範囲です。もう一つの項目は、航空機の保管コストです。格納庫内のスペース

年間賃料は15,000〜30,000 CZK(9,4000~19,8000円)の範囲です。サービス検査の

費用は最大で数万単位になります (交通の種類と強度によって異なります)。

また国内には、数多く(おおよそ100箇所)の訓練センター(訓練所)があります。

LAA CRの歴史

1990 年 3 月 17 日、ブルノでチェコスロバキア LAA の設立会議が開催されました。それ

に先立ち、さまざまなグループの会議が行われ、その後 1989 年 12 月に準備委員会が開催

されました。航空アマチュア協会は、航空アマチュア協会を組織するという目標を設定しま

した。ハンググライダー、パラグライダー、超軽量飛行機、電動ハンググライダーのパイロ

ット、およびこれらの航空機の製造者の新しい航空移動を対象としました。

アマチュア航空協会の使命は、1926 年 3 月 7 日に設立された戦前のマサリク航空連盟の
流れを継いでいます。
時代の経過と共に、LAA CR はヨーロッパ内で独自のユニークな現在の形に発展しました。
LAA CR は、チェコ共和国における SLZ の認証、パイロット許可の発行、および運営を行
う認定組織の役割を担うようになったのです。

代表的なELSAメーカー

SHARK.AERO

Shark Aeroは、昨年、最年少世界一周記録を樹立した弟のマック、姉のザラ・ラザフォード

姉弟が使用した機体を開発しているメーカーです。

世界記録
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皆さんこんにちは! 最年少世界一週飛行ギネス記録に挑戦しているマック・ラザフォートさん、17 歳が8月23日に最終目的地の手前のベルギーに到着しました。今回は、LSA について見ていきましょう。 最年少世界一周飛行記録 マック・ラザフォード...

Shark UL (画像:Shark Aero)

格納式ギア、小型の翼、可変ピッチプロペラを備えた高性能ヨーロッパ UL。

Shark UL は、最大離陸重量 600 kg を想定して設計およびテストされています。

デザイン上の特徴は、ヨーロッパのULおよび米国の軽量スポーツ航空機基準に従って

設計されています。クラシックなテールとタンデムシートを備えた複合低翼デザイン。

構造は、グラスファイバーとカーボンファイバー/エポキシの機体、サンドイッチ パネル

に PVC フォームとアラミド ハニカム コアを使用。一体型フィンを備えたモノコック胴

体は、肘掛け、背もたれ、床、計器盤が一体化されています。カーボンファイバーの主桁

と、フラップ レバーとエルロン ヒンジを備えた補助桁を備えた複合翼は、後縁の 60 %

が強力な単一スロット フラップで占められています。翼と水平尾翼は輸送や保管のために

素早く取り外すことができます。

エンジンは、可変ピッチ複合材プロペラを備えた 75 kW/100HP Rotax 912ULS フラット

4 エンジン 1 台。翼に一体型燃料タンク、容量 100 リットル搭載可能。

Shark UL のコックピット、前後2人乗りのタンデムタイプ(画像:Shark Aero)

最大巡航速度は、300ノット(555km/h)にもなります。 普通の小型旅客機並です。

サイズもコンパクトで、翼幅が7.9m、全長6.9mです。

ATEC

エイテック(A viation TEC)hnology) は、先進的な複合軽量スポーツ航空機の製造に

おけるチェコのリーダーの 1 つです。典型的な T テールを備えた伝説的な ATEC 122

ZEPHYR は、90 年代に現れ、チェコ共和国で製造された最初の複合航空機の 1 つでし

た。ZEPHYR は、最初の発表後すぐに、設計と建設に関するさまざまな賞を受賞しまし

た。そのアップグレード版は 2021 年まで生産されていました。その概念に基づいて、

非常によく似た ATEC 321 FAETA 航空機が設計され、2003 年に導入されました。

並外れた性能を備えたこのフルカーボン複合航空機は、エアロトウ(フランス・トゥール

ーズで開催する世界最大規模の航空宇宙分野の展示商談会)でも認定されています。

2016 年に、クラシックテールを備えた最新バージョンの ATEC 321 FAETA NG が市場

に発表され、600 kg MTOW の認定を取得しました。効率的な運航だけでなく、航空学校

でも当社の飛行機は人気があります。非常に高速で操作性の高いシングルシーターの ATEC

212 SOLO は、スポーティな飛行スタイルを好む人向けに特に設計されています。

水陸両用機 OMSIDER 航空機のプロジェクトは、水上と地上の両方での運用を想定して設

されていたため、さらなる開発に多くの経験と実績をもたらしています。

ATEC 321 Faeta(ファエタ)(画像:ATEC)

三輪車固定ギアを備えた 2 人乗り片持ち低翼航空機は、当社の伝説的な ATEC 122 ZEPHYR

の設計から派生しています。Faeta は、最高品質のカーボンファイバーとその構造に適用され

るカーボンコンポジットの最先端の加工方法を利用して、ファッショナブルな空力デザインを

維持しています。この航空機は、MTOW 525 kg までの UL カテゴリおよび MTOW 585 kg

までの LSA カテゴリでの運航が承認されています。Faeta は、MTOW 750 kg までのグラ

イダーとバナーの航空牽引にも認定されています 。

巡航速度は、 134 ノット(248 km/h )。燃料タンクは50リットルを2つ搭載(合計100)。

航続距離は2000kmとかなりの長距離を飛行できます。

ATEC 321 Faetaのコックピット サイドバイサイド(画像:ATEC)

標準的にROTAX 912iS SPORT 100HP、ROTAX 912 ULS 100HP、またはROTAX 912 UL

80HPエンジンを3枚または2枚ブレードプロペラを備えた構成で設置しています。

プロペラは固定、地上調整、または飛行中に調整可能で、手動または電気制御が可能であり、

可用性も備えています

ATEC 321 Faetaのエンジンルーム(画像:ATEC)

テールユニットはオールカーボンコンポジットの T 字型構造で、固定スタビライザーとエレ

ベーターを備えたテーパー付き水平尾翼で構成されています。エレベーターのトリムは機械

式または電気式のいずれかです。

ATEC 321 Faetaの特徴あるT尾翼(画像:ATEC)

まとめ

今回は、チェコのアマチュア航空機を管理、統括しているLAA CRを見てきました。

航空大国、チェコの実態が少しでもおわかり頂けたでしょうか?

次回は、チェコ共和国の歴史から見える航空機産業の今と未来を解説していきます。

また、今回紹介しきれなかった他のメーカーも次回、紹介させていただきます。

こんなに多くの製造メーカーがあることに驚いてください。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

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