チェコのLSA Part2

飛行機

皆さんこんにちは!

昨日に引き続き、今日もチェコ共和国のLSAの歴史と共に紹介していきます。

チェコ共和国

歴史

現在のチェコ共和国は、民主主義国家としてNATO(北大西洋条約機構)の加盟国です。

皆さんの中にはチェコスロバキアという名前の方が馴染みがあるかもしれません。

今のチェコ共和国になったのは、1993年の事ですから今年で建国30周年とまだ若い

国家なのです。それでは、その歴史を見ていきます。

中世(9世紀から15世紀)

チェコを始めヨーロッパの歴史は、多民族の移動の歴史といっても過言ではありません。

この間に多くの王国や帝国と呼ばれる国が、小国を支配するという戦争の歴史でもあり

ます。中世(9世紀から15世紀)にかけてこの地方も多くの王国が支配しました。

モラヴィア王国(833~907年)

スロバキア地方を中心とした王国でスラブ人が支配していました。

ボヘミア王国(907~1918年)

現在のチェコ共和国の前身となった王国で、神聖ローマ帝国の領邦の1つであり、ボヘミ

ア王は選帝侯の一人でした。ボヘミア王は歴史的地域としてのボヘミアを中心とした領土

を治めていました。

神聖ローマ帝国内のボヘミア王冠領(1618年)

近世(16世紀から第1次世界大戦)

16世紀以降も多くの帝国がこの地方を支配します。ハプスブルグ帝国(1526~1804)

オーストリア帝国(1804~1867)、オーストリア・ハンガリー帝国(1867~1918)。

1913年のオーストリア=ハンガリー帝国の領域

1873年(明治6年)6月に岩倉使節団がオーストリア=ハンガリー帝国を訪問しています。

1892年(明治25年)、後にサラエヴォでセルビア人民族主義者により暗殺され第一次世

界大戦勃発のきっかけとなった皇太子フランツ・フェルディナント・フォン・エスターラ

イヒ=エステが世界一周旅行の際来日しています。

第1次世界大戦(1914~1918年)

三国同盟(ドイツ・オーストリア・イタリア)と三国協商(イギリス・フランス・ロシア)

との対立を背景として起こった世界的規模の戦争。1914年6月のサラエボ事件をきっかけ

に開戦。同盟側にはトルコ・ブルガリアなどが、協商側には同盟を脱退したイタリアのほか、

ベルギー、日本、アメリカ、中国が参戦しました。4年あまりにわたってヨーロッパ戦線を

中心に激戦が続きましたが、11918年11月、ドイツの降伏によって終結しました。翌年の

パリ講和会議でベルサイユ条約が成立しました。

チェコスロバキア(1918~1992年)

チェコとスロバキアが合併して、1918年にオーストリアハンガリー帝国から独立し、建設

された共和国。1939年、ナチスドイツに併合。1944年に第2次世界大戦が終わり、1960年

に社会主義共和国となり、1969年に連邦制へ移行。東欧民主化の中で1989年に共産党政権

が崩壊します。1993年、チェコ共和国とスロバキア共和国に分離して今の態勢になりました。

チェコ共和国(1993年~現在)

歴史的に工業化が進んでいたチェコ共和国(旧・チェコ社会主義共和国)の国内総生産は

1990年代初頭、スロバキア共和国(旧・スロバキア社会主義共和国)に比べ20%上回って

いましたが、成長率の伸び悩みが大きな問題となっていて、チェコの政界ではスロバキアが

経済的な重荷となって経済成長が妨げられているとの見方が広まっていました。

こうした状況を背景に1991年1月、チェコ共和国はスロバキア共和国に対する経済支援資金

の拠出を停止しました。

東欧革命以後、ソビエト連邦やユーゴスラビアなど旧共産圏の諸連邦国家で、連邦を構成する

「民族共和国」の分離に伴って武力による激しい対立が発生したのと対照的に、チェコスロ

バキアでは流血の事態を招くことなく、立法・行政手続きに基づいた連邦解体が行われたこ

とから、外国メディアを中心に「ビロード(滑らかな布)離婚」と呼ぶようになりました。

1993年、EUヨーロッパ連合が発足。チェコも2004年に加盟しました。

チェコ共和国

国土の面積は78,866平方キロメートル(日本の約5分の1)、北海道と同じ広さです。

人口は、1,051万人(2022年3月末現在)。北海道の人口が539万人ですので約倍の

人口になります。首都はプラハ。

主要産業は、(自動車を始めとする)機械工業、化学工業、観光業。

チェコ地図

 

チェコ共和国気温 - 旅行のとも、ZenTech

チェコ経済は、輸出依存度が高く、輸出の牽引役は、自動車関連品目であり、最大の輸出先

はドイツです。ドイツの自動車部品輸入相手国を見ると、チェコがトップであり、ドイツの

自動車産業にとってチェコの自動車部品産業は非常に重要な存在です。欧州の自動車産業に

おけるチェコの存在感は大きく、自動車生産台数を見ても、チェコはEU域内第5位であり、

また、自動車部品生産額の国別ランキングにおいて、チェコは、EU域内でドイツに次ぐ第

2位です。

チェコは、第二次世界大戦前に世界屈指の先進工業国であったという歴史的背景から、ハイ

レベルの工業基盤を持っています。また、チェコの教育水準の高さは、欧州でもトップクラ

スです。他方で、チェコの人件費は西欧に比べて格段に安く、チェコの1時間当たりの労働

コストは、独仏の1/3にすぎません。西欧と同等以上の質の高い労働力を、格安のコストで

雇えることが、対チェコ投資の大きな魅力でもあります。

チェコの航空機産業

チェコの代表的な航空機製造会社アヴィア・モータースAvia Motors)は、1919年に

設立しました。プラハ近郊の都市で航空機製造を行っていました。

第2次世界大戦時にはナチスドイツ空軍の機体製造も行っています。メッサーシュミット

Bf109、双発の爆撃機ハインケル He111、アヴィア S-199とうい戦闘機などの開発、製造

を行いました。

メッサーシュミットBf109G-6 第2次世界大戦でドイツの主力単座戦闘機となったメッサーシュミットBf109は、19…

第2次世界大戦中のドイツの主力戦闘機、メッサーシュミットBf109

1935年の初飛行から45年のドイツ敗戦までの間に3万3000機余りが生産され

ました。低翼単葉、全金属製セミモノコック構造、引き込み式主脚、密閉式キャノピー

など、近代的な戦闘機の標準スタイルを確立した機体で、格闘性能よりも速力や上昇力

を重視した先進的な思想で設計されたのです。

第2次世界大戦後、アヴィアは S-199とうい戦闘機を開発して、イスラエル空軍に供与

しました。 S-199は、戦後残された設計図をもとに、エンジン等ドイツからの供給で賄

っていた部分は代用品に置き換えて再度生産を開始して製造した機体です。

当時イスラエルが各国から武器禁輸の封じ込めを受けていたなかで、チェコスロバキア

政府とアヴィア S-199の購入についての交渉を行った結果、イスラエルは25機を購入し、

うち2機を除いて納入されました。

アヴィア S-199画像 に対する画像結果

アヴィア S-199、イスラエル空軍が運用、メッサーシュミットBf109と同じ機体
アヴィアは戦後に自動車産業に参入し始めました。トラックに加えて、同社は軍用の装甲
兵員輸送車も製造していました。小型トラックの生産に関する、フランスの SAVIEM 社
とのライセンス契約を締結しています。
チェコは、古くから機械工業が盛んで、第2次世界大戦で数々の戦闘機の開発・製造を
行った技術が、今日のLSA製作に大きく役に立っています。

LSA企業紹介

Czech Sport Aircraft

Czech Sport Aircraftは、チェコのモラビア地域における航空機の設計、開発、製造を

80 年以上にわたり行っている企業です。

EASA認定の軽量スポーツ航空機(ELSA含む)、アメリカ認定のLSAの開発・製造を行

っています。

代表的なのが、PS-28 Cruiserです。

複座で全金属製低翼単葉構造、従来の尾翼を備えた片持ち翼、三輪車用固定着陸装置。

すべての EASA 諸国で VFR Day 運用が承認され、新たに VFR Night 運用も承認されま

した (EASA 型式証明書を受け入れている他の国では)。

エンジンは、エンジン冷却の強化されたRotax 912S2 EASA認定エンジンが搭載されてい

ます。

翼幅は8.6m、全長6.6m。

最大巡航速度は、119 ノット (220 km/h)、失速速度、31 ノット (55 km/h)。

翼が大きい(アスペクト比が大)ために低速での飛行に特化しています。

搭載可能燃料は114リットルで、燃費も17.5 リットル/時ですので953km飛行可能。

アビオニクスは、2x SkyView SV-HDX1100 タッチ スクリーンを標準装備しており

オプションでオートパイロットが装備できます。コックピットはクラス内で最も広い

スペースを誇り、飛行乗組員に最高レベルの快適性と高度に人間工学に基づいた配置

を提供します。

Distar

2010年、DISTAR CZ Compは、航空機市場に参入し、ウスティ・ナド・オルリシの

自社部門DISTAR AIRを通じて有名な超軽量航空機サンバXXLとモーターグライダーラ

ンバダの生産を開始しました。2012 年にノヴィー・ビジョフの工業地帯に新しい組立

ホールが建設され、そこで航空機の生産を拡大。最近、私たちはEU の支援を受けたプ

ロジェクト Inovace – DISTAR 内で新しいタイプの航空機を開発しました。

Samba XXL (画像:DISTAR)

Samba XXL は 2 人乗り、単発エンジン、全複合材構造の中間翼です。

胴体構造はカーボンコンポジット製です。翼はサンドイッチ構造で形成されており、翼の

フランジはカーボンロジニー製です。

スロット付きのダブルスロット電気制御フラップがあります。

Rotax 912エンジンを標準搭載。お客様のご要望に応じて、Rotax 912ULS または

Jabiru 2200 エンジンを搭載することができます。

翼幅: 10m、長さ: 6m。

最高速度: 270km/h、巡航速度:220km/h、最低速度: 65km/h。

Evektor-Aerotechnik

Evektor-Aerotechnik は、1936 年以来航空機産業で知られる地域であるクノヴィツェ

空港に拠点を置いています。Evektor-Aerotechnik の歴史は、Aerotechnik が小型一般航

空飛行機の製造会社として設立された 1970 年に遡ります。その最初の航空機はジャイロ

コプターとモーター グライダーでしたが、その後、ズリン航空機ファミリーを含むさまざ

まなチェコの一般航空航空機のオーバーホールとメンテナンスに多角化しました。

軽量スポーツ航空機と高度な超軽量航空機の生産は 1996 年に開始され、P220UL コアラ

航空機から始まり、EV -97 ユーロスター(1997 年に導入) とスポーツスター続きました。

スポーツスターは、2004 年にアメリカ連邦航空局(FAA)によって承認された最初の軽量

スポーツ航空機となりました。

EV97 EuroStar

EV -97 ユーロスター(画像:Evektor-Aerotechnik )

EuroStar SL

翼幅:8.15m、全長:6m。

エンジン: Rotax 912 ULS(100HP)

巡航速度:124ノット、230 km/h 。失速速度: 31 kts、58 km/h。
巡航距離は920km、燃料タンク120リットル。
特記事項は、ロードファクター(重力性能)が設計上:+6G/-3G。アクロバット飛行や
スピン訓練なども可能です。
Jihiavan Airplanes

Jihiavan Airplanesは、22年以上にわたり、 「 SKYLEADER」の商標で全金属および

炭素複合材料の軽飛行機 (超軽量 / マイクロライト / LSA カテゴリ) の設計、製造、販売、

メンテナンスを専門としています。5 タイプからなる航空機ポートフォリオは、娯楽飛行、

パイロット訓練、特殊作戦向けに設計されています。これらは、厳格な ASTM 国際規格

に従って製造されています。

Jihiavan Airplanesは、航空研究、設計、商業生産に深く関わっています。同社は、エア

バス A320 旅客機のドアの製造と組み立てに加え、その他の認定された航空の下請けを

行っていました。

スカイリーダー 600 は、台形翼を備えた全金属製の 2 人乗り低翼構造の航空機です。

この航空機には、ホイールパンツ付きの三輪車牽引固定着陸装置と操縦可能な前輪が装備

されており、格納式ギアのオプションもあります。この航空機は主に娯楽飛行、パイロッ

ト訓練、特殊作戦用に設計されています。

航空機はお客様の要件に基づいてカスタマイズできます。修理とメンテナンスが簡単なた

め、運用コストが低く抑えられます。

スカイリーダー 600(画像:Jihiavan Airplanes)

翼幅:9.9m、全長:7.1m。

巡航速度:122ノット、220km/h。失速速度:33ノット、61km/h。

最大巡航距離:1600km。燃料タンク120リットル

エンジン:Rotax 912UL。(80HP~115HPターボチャージャー付き)

Jihiavan Airplanesは、世界各国に販売網を展開しており、ヨーロッパ内、アメリカ、

カナダ、南米(チリ、アルゼンチン)、フィリピン、韓国、インドネシア、中国など

世界18カ国に販売代理店を持っています。

まとめ

前回(昨日)と今回、チェコの航空の歴史とLSA(ELSA)開発・製造企業を数社紹介し

ました。企業については、カタログに載っているほんの一部の会社しか紹介できてい

ません。

また、第2次世界大戦後も航空機を造る技術を継承し、発展していったことは、日本と

大きく違うところです。北海道くらいしかない小国ですが、自動車や航空機といった

特化した技術、産業を武器に世界でも有数の経済国に発展しました。今の日本の航空

産業は、チェコに追いつくことができるのでしょうか?

また、チェコ(ヨーロッパ)では、LSAを航空機の訓練機に使用していることも注目

すべきポイントです。そうすることで、誰でもが気楽に飛行機を楽しむことができる

のですから。やがてそれは、航空機産業の明るい未来につながって行くでしょう!

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました