地球温暖化阻止へ、歩調が合わない航空業界

飛行機

皆さんこんにちは!

地球温暖化が危機的な状況になっている現在。一番のCO2排出量が問題となっている

航空業界ですが、その足並みはバラバラです。

それでは、何が原因なのでしょうか?今日は、SAF(持続可能な燃料)の現場から

見ていきましょう。

EUで航空燃料をグリーン化する法案「ReFuelEU Aviation」が成立へ

e-fuelを含むSAF(持続可能な航空燃料)の使用が義務化される

2023年4月25日、欧州議会は、EU域内の空港で供給される航空燃料をグリーン化

する法案「ReFuelEU Aviation」について、欧州理事会と暫定的な政治的合意に達

したことを発表しました。合意内容によると、EU域内の空港に航空燃料を供給する

事業者は、供給する燃料全体に占める持続可能な航空燃料(SAF: Sustainable

Aviation Fuel)の割合を2025年までに2%、2030年までに6%、2035年までに20%、

2040年までに34%、2045年までに42%、2050年までに70%にすることが義務付

けられます。

なお、SAFとして認められる燃料については、e-fuel(二酸化炭素と再エネ由来の水

素から製造される合成燃料)、農作や林業の残渣、藻類、使用済みの食用油などを

原料とするバイオ燃料(飼料・食料用の作物やパーム油、大豆を原料とするバイオ

燃料は除く)、グリーン水素が含まれています。

また、航空燃料の供給事業者は、供給する燃料全体に占めるe-fuelの割合を2030年

までに1.2%、2032年までに2%、2035年までに5%、2050年までに35%にするこ

とも併せて義務付けられることになるのです。

今回の合意に至る背景として、欧州委員会は、2030年までにEU域内の温室効果ガス

を1990年比で少なくとも55%削減する目標の達成に向けた政策パッケージ

「Fit for 55」の一環として、「ReFuelEU Aviation」を2021年7月に提案していま

した。当時、欧州委員会が提案していたSAFの導入比率に対して、欧州議会は同比率

を大幅に上げることを求めたことから、その帰着がEU加盟国間で注目されていました。

欧州委員会と欧州議会がそれぞれ示したSAFの導入比率、及び今回合意された同比率

を以下に示します。(表1)

今回の発表を受けて、世界の民間航空会社が加盟する国際航空運送協会(International

Air Transport Association:IATA)は、2023年4月26日にプレスリリースを発表して

います。 IATAは、EUにおけるSAFの導入義務化に対して歓迎の意を示す一方で、

SAF生産のコスト削減や供給ルールに関する包括的な政策がなければ、SAFの普及には

つながりにくいと指摘。EU全域でSAFの柔軟な供給体制を整備していくために、今後、

専門家や利害関係者と共にEUでの協力関係を強化していく必要があると述べました。

航空会社、ヨーロッパのSAF目標に対して警報を鳴らす

ヨーロッパの航空会社は、 持続可能性の難題を回避する唯一の方法しか考えていません。

今後数年間で、灯油代替燃料の量を増やすことを目的とした ReFuelEU 法に基づいて

設定された持続可能な航空燃料目標が発効します。しかし、地域の生産量は依然とし

て業界がこれらの目標を達成できる水準をはるかに下回っており、航空会社はインセ

ンティブの形でさらなる規制措置を求めています。

地域の通信事業者はSAFを含む「平等な競争条件」を望んでいます。

ReFuelEUの目標を達成するにはインセンティブが必要だとA4E航空会社は主張。

3月20日にブリュッセルで開催されたヨーロッパ向け航空会社(A4E)サミットには、

この地域の主要航空会社のほとんどのトップが集まり、持続可能な航空燃料(SAF)

に対するさらなる行動を求める声で一致しました。要するに、コンセンサスは、この

重要な脱炭素化手段でヨーロッパを後手に回らせれば、米国やその他の国々に対して

不利な立場に置かれることになるという警告だったのです。

A4Eイベントに招集された航空会社は、欧州委員会(EC)と加盟国に対し、昨年採択

されたReFuelEU法に基づいて合意されたSAFの義務順守を支援するよう求めました。

これらすべては、欧州の航空輸送の脱炭素化を目指す広範な取り組みの一環として行

われており、この地域が2050年までに広範なネットゼロ排出目標を達成するには緊

急の課題となります。

環境ロビー団体「Transport & Environment」による最近の報告書では、他の部門の

脱炭素化が急速に進み、航空輸送からの排出量が増加したため、運輸部門がEU全体の

排出量に占める割合は1990年の17%に対し、2022年には29%となったと指摘。

欧州の航空会社はまた、大陸で急成長するSAF産業を支援せず、自国の航空会社への

手頃な価格の供給を確保しないことは、他の地域の航空会社との競争力を損なうこと

になると警告しました。

代替航空燃料は、最近のシングル・ヨーロピアン・スカイ・ルールに関する合意が不

十分であると考えているヨーロッパの航空会社のもう一つの争点である機材更新や空

域改革と並んで、業界の主な希望とみなされている。水素などの画期的な技術がより

大きな役割を果たし始める前に、今後数年間で大幅な脱炭素化が実現する可能性があ

ります。

エールフランス・KLMオランダ航空のベン・スミス最高経営責任者(CEO)は、航空

会社はSAFに対して「平等な競争条件」が必要であり、大量生産を促進する点では

米国の規制枠組みの方が有利であると広く考えられていると述べました。 「競合他社

の多くにはSAFの義務がなく、炭素価格も設定されておらず、航空に対する国税も課

されていない」とスミス氏は語りました。 「もちろん、それは大きな挑戦です。」

「私たちが持つ主な手段の1つは、新しいテクノロジーを購入することです」と彼は

付け加えました。 「主要な競合他社が持っていないコストを当社が抱えているために

不利な状況にある場合、当然のことながら、それははるかに困難になります。」

スミス氏は、エールフランス、KLMオランダ航空はエアバスA350型機とA220型機、

ボーイング787型機をエールフランスとKLMオランダ航空の機材に追加するなど、

機材更新に50億ユーロ(54億ドル)をコミットしていると述べました。

「私たちが従いたくないわけではありません。私たちは遵守したいのです」と、エア

リンガス、ブリティッシュ・エアウェイズ、イベリア航空、レベル航空、ブエリング

航空の親会社であるインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)の最高経

営責任者(CEO)、ルイス・ガレゴ氏は述べました。ガレゴ氏によると、IAGは昨年、

世界のSA​​F供給量の約12%を購入し、2030年までに世界のSA​​F供給量の10%を目指

しているということです。

しかし、IAGはまた、新工場への投資の90%が米国で行われているSAF生産を奨励す

るインセンティブと、欧州でのSAF使用義務との間の矛盾が競争力にとっての災難で

あると見ているのです。

「私たちが求めているのは助けです」とガレゴ氏は語った。 「私たちはヨーロッパ

でSAFを望んでいます。欧州では任務を、米国ではSAFを任務とするのは意味があり

ません。」

「私たちにとって今最も重要なことは、SAFの任務とSAFのコストが同じであること

です」とスミス氏は言いました。 「ヨーロッパ以外では、他の通信事業者が対処す

る必要のない追加の入力はありません。」

航空会社の多くはすでに欧州の義務を超える目標に取り組んでいますが、規制当局の

支援がなければ、2025年に2%から始まり、2025年には6%まで増加するReFuelEU

の義務を満たすのに十分な量を増やすことは不可能だと警告。 2030 年には 70%、

2050 年には 70% に達し、e-fuel の下位義務が組み込まれています。

「2030年までに市場に十分な[SAF]が存在するとは思わない」とノルウェーのCEO、

ゲイル・カールセン氏はカンファレンスで語りました。 「ヨーロッパでは我々は大き

く遅れをとっています。」

欧州議会選挙と今年の新EC発足でこの地域は転換点にあり、航空会社は行動を求め

ています。

ライアンエアのマイケル・オレアリー最高経営責任者(CEO)は「SAFの生産をさら

に奨励する必要がある」と述べました。 「SAFは2020年代後半から2030年代に向け

て進むべき道だが、欧州はSAFの生産を奨励するために十分な努力をしていない。」

ルフトハンザ グループのカールステン・シュポーア最高経営責任者(CEO)は「私た

ちのほとんどは世界で競争している」と語りました。 「それには明らかに、SAF の

ためのグローバルなソリューションが必要です。しかし、その逆が起こっているの

です。」同氏は、SAFの比率は現在の約0.2%から来年までに10倍に跳ね上がる必要

があると付け加えました。

現在、バイオマスベースのSAFよりもさらに高価であるが、最終的には規模拡大が容

易になるはずの電子燃料の見通しには、それ自体の課題があるとシュポーア氏は述べ

ました。

「ルフトハンザだけでも、我が国の航空機専用の電子燃料を生産するには、ドイツの

すべての再生可能エネルギーが必要になるでしょう。首相からそれを聞いてもらえる

とは思えません」とシュポーア氏は皮肉りました。 「電子燃料は、グリーン電力を

燃料に変える効率が大幅に低下します。欧州の主権、欧州が自国で保有する電力量、

CO 2の影響を軽減するために電力をどのように利用するのが最善かという問題は、

次回の委員会で議論されることになるだろう。」

ボロテアのカルロス・ムニョス最高経営責任者(CEO)は、「われわれは規制を機

能させるためにここにいるので、義務付けに問題はない」と語りました。 「私たち

が委員会と加盟国に求めるのは、欧州におけるSAFの生産量増加に役立つ産業政策

を講じることです。」

航空会社のCEOらは、シングル・ヨーロピアン・スカイ改革に関する最近の合意に

対して不満を表明しましたが、この合意は十分に進んでおらず、空域の効率化に

よってもたらされる約10%の排出量削減の機会を逃したことに同意しました。

彼らはまた、加盟国の環境計画からの収入がSAF生産の奨励に確実に使用されるよ

うECに圧力をかけるよう求めました。

中国、新たなHEFA施設を通じてSAF生産を拡大へ

シノペック

中国のシノペックとフランスのトータルエナジーズは共同で中国に持続可能な航空

燃料(SAF)生産拠点を設立します。

新しい施設では、水素処理エステルおよび脂肪酸 (HEFA) プロセスを使用して食用

油と動物性脂肪を精製し、年間 230,000 トンの SAF を生産することを目標として

います。 トータルエナジーズは、「技術、運用、流通分野における経験と専門知識

をプロジェクトに活用する」と述べました。

HEFA施設はシノペックとトータルエナジーズが共同所有し、非公開のシノペックサ

イトに位置します。

シノペックはすでに独自の SAF 製品である SRJET を持っており、2022 年 9 月に

中国民間航空局 (CAAC) から認証を取得しました。 シノペックによると、SRJET

は使用済み食用油から作られており、浙江省寧波市の鎮海製油所で生産されていま

す。年間10万トンの燃料を生産できるそうです。

鎮海発のSAFは主に、天津にあるOEMの最終組立ラインから出てくる航空機のエアバ

ス配送便に使用されています。 2023年7月、中国国際航空は10%SAF混合燃料で

杭州と北京間を飛行し、中国の商業便で初のSAF使用を宣伝しました。

まとめ

航空業界が2050年の排出削減目標を達成するには、持続可能な航空燃料(SAF)の

使用を急速に増やすことが不可欠です。しかし、SAF の価格は高く、生産量は現在

ごくわずかです。需要の増加は価格の低下につながるはずですが、これは十分な場

合にのみ起こります。

一方で、e-fuelの比率の引き上げにより各国リファイナリーの製造設備への投資が進む

と推察されます。日本ではe-fuelの航空燃料への導入が進んでない中、e-fuel製造の

ユニコーンが日本にも登場するでしょうか?

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

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