皆さんこんにちは！
世界の2大航空機メーカー、ボーイングとエアバス。現在、アメリカ空軍の次期空中給油機の
発注を巡って、激しい空中戦を行っています。はたして生き残るのはどちらか？
アメリカ空軍の次期タンカー調達
ボーイングか？エアバスか？
アメリカ空軍は次期空中給油タンカーの調達に向けて動きだしています。
数百機の古いボーイングKC-135タンカーが退役する予定であり、調達は160機以上という
大規模なものになるだろうと予測されています。
ボーイングKC-135タンカー（写真：ボーイング）
ボーイングは、これが民間機767-200ERをベースにしたKC-46Aの単独ソースの後続発注
になると考えています。ロッキード・マーチン社（LMCO）はエアバスと提携し、商用機
A330-200をベースにした多目的タンカー輸送機（MRTT）のバージョンを検討。
日本の自衛隊にも配備されているボーイングKC-46A（写真：ボーイング）
大きな問題は、空軍がボーイング社に後続の単独発注を行うのか、それとも競争力のある
ベイクオフ（パンやケーキなどを焼く競争）を求めるのかということです。後者であれば
ロッキード・マーティン社（LMCO）による入札が競合となります。（他の企業も入札する
かもしれませんが、注目されるのはボーイング社とロッキード社の対決になります。）
これにより、ボーイングとエアバスの 3 回目の競争が始まり、前の 2 回の競争と同じくらい
熾烈な争いになる可能性があります。
代理人の一人はエアバスの安全記録に疑問を呈しています。ボーイング 737 MAX の歴史と
開発中に明らかになったすべてのスキャンダルを考慮すると、これは驚くべき発言でした。
2013年には安全上の理由からボーイング787が運航停止になった事例がありました。
エアバスは、航空機の設計に起因する安全上の理由から、規制当局によって運航停止となっ
た機種はこれまでに一度もありませんでした。（インドの規制当局は、エンジンの耐久性に
関する問題のため、プラット＆ホイットニー GTF エンジンを搭載した A320neo の運航を
停止しました。これは、エンジンの問題です。）
より関連性があるのは、空軍がボーイングのKC-46AとA330 MRTTという2つの主力タンカ
ー艦隊を保有することが経済的、財政的に合理的かどうかです。
先月、防衛事業の多くが拠点を置くマリエッタ（ジョージア州）のLMCOでの取材において
ロッキード社がその製品と呼んでいるLMXTは、LMCOが契約を獲得した場合、つまり調達が
競合した場合、エアバスのモバイル（AL）航空宇宙複合施設で生産された後、マリエッタが
軍事化（アメリカ空軍用にカスタマイズ）される場所になっています。
競争の歴史
ボーイング KC-135 を置き換えるためのアメリカ空軍のタンカー調達には、悲惨な歴史があ
ります。2001 年 9 月 11 日のニューヨークとワシントン (DC) での旅客機を使ったテロ攻
撃 (およびシャンクスビル (ペンシルベニア州) で終わった失敗) の後、ボーイングの旅客機
事業は壊滅的な打撃を受けました。当時、ボーイングの主力事業は米国の航空会社が独占し
ていました。長期にわたる旅客需要の低迷により航空会社は壊滅状態となり、それに伴って
ボーイング社の旅客機事業も壊滅状態となりました。
ボーイングは767ベースの給油機100隻を空軍に20年間リースすることを提案しました。
このアイデアは新しいものではありませんでしたが、これまでに行われたことはありませんで
した。ボーイングが提示した価格、条件は、ジョン・マケイン米上院議員の非難を浴びました。
強力な上院軍事委員会の委員であるマケイン氏は、アメリカ空軍の主任調達責任者とボーイン
グ社の最高財務責任者による不正行為を暴露しました。両者は投獄され、ボーイング社の最高
経営責任者（CEO）フィル・コンディット氏（関与はなかった）は辞任しました。
この契約はキャンセルされ、新たな調達プロセスが始まりました。エアバス・グループ（当時
はEADSとして知られていた）はノースロップ・グラマンと提携して契約を争いまし。驚いた
ことに、アメリカ空軍はノースロップ・グラマンに契約を与えました。空軍がボーイング社に
報告したところ、調達プロセス中にアメリカ空軍が要件の一部を変更したが、ノースロップ社
には伝えながらボーイング社には伝えなかったことが明らかになりました。ボーイング社が抗
議し勝訴しました。3回目の調達が行われました。その時はノースロップ社が入札プロセスを
見送ることを決定した後、エアバス社が単独で行いました。
空軍パラメータには最低価格、技術的に許容可能な LPTA) 手順が必要でした。入札価格が相
互に 1% 以内であれば、MRTT の航続距離、燃料補給、貨物能力の追加が考慮されることに
なる予定でした。ワシントン州のノーマン・ディックス下院議員からの圧力を受けて、ボー
イングは価格を引き下げました。入札額はエアバスを10％下回り、KC-46Aが落札されたの
です。
ボーイング社の業績
KC-46Aタンカー179隻の契約は固定価格でした。ボーイング社の非常に低い入札により、最
終的にはこれまでに約60億ドルの超過費用と手数料が発生しました。さらに納期は18か月遅
れたのです。
一方、エアバスは、2001年空軍調達用に最初のタンカー8隻を設計した日本とイタリア、そ
して政治的に米国に近いイスラエルを除く、タンカーを探していたすべての国にMRTTを販売
しました。エアバスは当初、給油ブームに独自の問題を抱えていました。
しかし、給油タンカーの市場としては米国が世界最大です。そしてLMCOとエアバスは、事業
の一部を獲得しようと再び挑戦しています。生産ラインはエアバスのモバイル（AL）航空宇宙
施設に設置され、飛行機の軍事化はジョージア州マリエッタにあるロッキード社の施設で行わ
れます。
新しい競争
今後の調達においてボーイングとLMCOの間で新たな競争が予想される場合、要件、コスト、
運用実績、リスク要因が考慮されることになります。
ボーイングは、共通性と機材のシンプルさが重要な要素であると主張しています。ロッキード
社は主導権を握り、エアバス社はバックグラウンドで事業を行っていますが、保有機の規模が
大きいと共通性は重要な要素ではないと主張しています。2 種類のフリートを使用することで、
リスク要因も軽減されます。LMCOは、KC-46Aプログラムにおけるボーイングの間違いなく
ばらつきのある業績を指摘しています。
NATOタンカー輸送機にA330 MRTTが選ばれる
エアバス・ディフェンス・アンド・スペースは、NATO支援調達庁（NSPA）から別のA330
多目的タンカー輸送機（MRTT）航空機を発注しました。最新の注文が引き渡されると、多国
籍MRTT艦隊（MMF）の規模は10機に増加します。
新たな購入は、年間使用時間をさらに1,100飛行時間追加するというベルギーの決定に続くも
ので、追加の需要に応えるには新しい航空機が必要となります。ベルギーはMMFプログラム
にさらに2億6,500万ユーロ（2億8,700万ドル）を投資しており、2027年までに割り当てられ
る時間の合計は2,100時間に増加する予定です。
「2020年に最初の航空機が到着して以来、特にウクライナ戦争が始まって以来、MMFは欧州の
主権を守り、多目的タンカーとしての能力を示している」とエアバス社軍用航空システム責任
者のジャン・ブライス・デュモン氏は語っています。「この新たな発注により、NSPAはすでに
以前に契約した9機以外に要求されたオプションのMRTT4機のうち1機を獲得しており、顧客満
足度の高さを示しています。」
この発表は、MMFが初期作戦能力を正式に宣言した数日後に行われました。3月23日、オランダ
のアイントホーフェンにある主要作戦基地でこの節目を記念する式典が開催され、NATO事務総
長イェンス・ストルテンベルグやオランダ国防大臣カイサ・オロングレンを含む多くの高官が出
席しました。
IOC加盟が宣言されたばかりにもかかわらず、多国籍MRTT部隊（MMU）はすでに、2021年の
カブール撤退や、ウクライナ戦争勃発以来同盟の東部国境を守るNATO戦闘機を支援する給油作
戦など、数多くの作戦に参加しています。 年間 500 回以上のこのようなミッションが飛行され
ました。
現在、ベルギー、チェコ共和国、ドイツ、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェーが参加する
MMUには、7機のA330 MRTTがアイントホーフェンとドイツのケルン・ボンにある前線運用基
地から運用されています。8号機と9号機は2024年に納入される予定で、完全運用能力の宣言は
同年半ばに予定されています。新たに発注した10号機は2026年に引き渡される予定。
A330 MRTT （写真：エアバス）
まとめ
いずれにしても、160機の受注となれば、相当な金額になります。
現在、ウクライナ戦争で世界経済は停滞したままですが、皮肉なことに軍事産業は
ますます勢いを増しています。平和にはお金がかかる。そのことを改めて思い知らされる
出来事でした。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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