皆さんこんにちは!
自動操縦の知的財産権で争っていたウイスクとアーチャー、ここに来て和解が成立しま
した。
ウィスク VS. アーチャー
訴訟
ボーイングとキティホークの合弁事業として運営されていたウイスクは、2015年から
数世代のeVTOL技術デモンストレーターを開発しており、今後10年以内に完全自律型
の4人乗りeVTOLエアタクシーを認証する予定です。
一方2018年に設立されたアーチャーは、4人乗りeVTOLエアタクシー・ミッドナイト
を開発しています。アーチャーは2025年までに自社の操縦航空機を運航させる予定。
ウィスクは2021年4月、アーチャーが企業秘密を盗んだとしてカリフォルニア北部地区
連邦裁判所に訴訟を起こしました。訴訟では、2020年1月にアーチャーに入社するため
にウイスクを退職した元従業員が、航空機やそのさまざまなコンポーネントやサブシス
テムの設計、製造データや試験データなど、専有情報や機密情報を含む数千のファイル
を盗んだと主張していました。
ウィスクは、アーチャーが自社のeVTOLエアタクシー、具体的には2人乗り技術実証機の
開発において、ウィスクが保護している知的財産の使用を差し止める差し止め命令を求め
ました。ウイスクが訴訟を起こしてから2ヶ月後の2021年6月、アーチャーは初のeVTOL
技術実証機、メーカーと呼ばれる複座航空機を発表しました。ウイスク独自の複座技術実
証機、Cora と呼ばれる第 5 世代航空機が 2018 年に公開されました。昨年 10 月、ウイ
スクは第6世代航空機を公開し、わずか数週間後にアーチャーは実物大のミッドナイト航空
機を公開しました。
両社の設計は、二人乗りの技術デモンストレーターとその後の実物大モデルを含めて、垂
直揚力と前方への推進力の両方を提供する傾斜プロペラを備えた固定翼を特徴としていま
す。このタイプの構成は、eVTOL 航空機の中でまったくユニークというわけではありま
せん。しかし、ウィスクは、アーチャーズ・メイカーの航空機の設計は、まだ公表されて
いないウィスクの第6世代航空機の特許取得済みの設計に疑わしいほど似ていると主張し
ました。
アーチャーの2人乗りメーカー eVTOL技術実証機(右)は主にウイスクの第6世代eVTOL航空機の特許取得済みの設計(左)に基づいていると主張。(画像:ウィスクエアロ)
和解と協力
驚くべき事態の展開として、ウイスクとアーチャーは、自動飛行技術で協力することに合
意しました。
今週の木曜日の投資家との電話会議で、アーチャーの最高経営責任者(CEO)アダム・ゴ
ールドスタイン氏は、同社は将来、ミッドナイトeVTOLエアタクシーの自律型無操縦バー
ジョンを生産するつもりであり、ボーイングの子会社であるウィスクがアーチャーの自律
飛行技術の独占プロバイダーになると述べたと伝えています。
ゴールドスタイン氏は、「ボーイングおよびその子会社ウィスクとの協力は、当社の航空機
の将来のバリエーションにおける西側の自律技術の統合をサポートすることに重点を置くこ
とになる」と述べました。「この提携により、アーチャーは自社開発コストを大幅に削減し
ながら、世界をリードする自律技術にアクセスできる可能性が得られます。」
法的和解の全条件は公表されていませんが、アーチャーの財務書類によると、同社はウィス
クに1300万株強の株式(名目価値7300万ドル)を引き渡しています。アーチャーは、木曜
日に発行した株主への書簡の中で、これは「即時に権利が確定する新株予約権部分に対する
当初の2,500万ドルの請求と、特定の権利確定基準の対象となり決して実現されない可能性
がある未権利部分に対する4,800万ドルの請求」で構成されていると説明しました。
この和解は、証券取引委員会への提出の一部として説明されており、8月14日からサンフラ
ンシスコ連邦裁判所で審理が始まる予定の数日前に発表されました。
ボーイング、ユナイテッドらが新たに2億1,500万ドルの資金調達を実施
ウィスクの親会社ボーイングも、非公開額をアーチャーに投資することを決定しました。
アーチャーは木曜日に発表した声明で、ボーイングと数名の以前の投資家が参加した2億
1500万ドルの資金調達を報告しており、その中にはステランティスからの7000万ドルと
ユナイテッド航空、ARKインベストメント・マネジメントなどからの非公開額が含まれて
います。最新の資金調達により、アーチャー のこれまでの資金調達総額は 11 億ドルを
超えました。アーチャーは株主への書簡の中で、現金4億760万ドルを保有していると
報告しています。
アーチャーは、8月10日遅くに第2四半期決算を報告する予定です。同社は、2030年まで
にミッドナイトeVTOL航空機6,000機を「配備」すると投資家に語っていましたが、
3月31日時点で4億5,000万ドルの準備金があると報告していました。これに加えて、以前
に発表された自動車グループ ステランティスによる 1 億 5,000 万ドルの戦略的投資が行
われます。5月11日に第1四半期決算を発表し、アーチャー氏は同期間の営業費用が1億1,2
00万ドル(非GAAPベースでは8,000万ドル)であると報告し、第2四半期には1億1,000万
ドルから1億2,000万ドルになる可能性が高いと予測しています。
連邦訴訟ではない
米連邦検察は、ライバルのeVTOL航空機開発会社ウィスク・エアロが機密データを盗んだ
と主張したアーチャー・アビエーションの従業員を起訴しないことを決定しました。
ウィスクは、データはアーチャー氏を雇用した後に渡されたと主張していました。
ウィスクと進行中の知的財産民事訴訟におけるアーチャーの弁護士は本日、2021年3月
に始まったFBIと司法省(DoJ)による捜査を受けて、米国検察庁がジン・シュエ(当該
技術者)を告訴しないと発表したと報告しました。(2022年2月3日)
当時アーチャーはこれを勝利として宣伝したが、ウィスクの弁護団は、この刑事捜査は
アーチャーに対する民事訴訟とは別のものであり、訴訟の結果には影響しないと主張。
ウィスク対アーチャーの訴訟は8月14日に公判が行われる予定でしたが、両当事者が和
解したため、出廷は行われないことになりました。
まとめ
ウイスクとアーチャーの訴訟は、アーチャーに軍配が上がったようです。
ウイスクとしてもこれ以上、訴訟を長引かせるよりは、今の開発競争に少しでも早く
勝利することを選んだ形になります。その裏には、大株主であるボーイングの存在が
あるでしょう。ボーイングとしては、本業のエアライン航空機製造事業の回復を追い
風に、あわよくばウイスクとアーチャーの合併も視野に入れているのかもしれません。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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