AAMは新しいパイロットを生み出すのでしょうか?

ドローン、空飛ぶ車

皆さんこんにちは!

後10年後の2032年には、航空関連の従事者が約130万人不足すると言われています。

パイロットや整備士、管制官、運航管理者などです。

そして、AAM(アドバンスドエアモビリティ)と呼ばれる新しい産業は、2025年から

世界各地で運行される予定です。自動化が本格化するまでの間(約10年は必要とされて

いる)パイロットが操縦(監視・オペレート)します。同じ様にパイロットや整備士が

新たに必要になります。

AAMの未来はどうなるのでしょうか?今日はシュミレータープロバイダー・CAEのレポー

トから考察していきます。

CAEレポート

人材不足

CAE Inc. (旧Canadian Aviation Electronics ) は、航空会社、航空機メーカー、医療

専門家、防衛顧客向けにシュミレーションテクノロジー、モデリングテクノロジー、トレ

ーニングサービスを提供するカナダのメーカーです。CAE は 1947 年に設立され、35 か

国に製造事業とトレーニング施設を持っています。

航空会社のパイロットと整備士の両方の世界的な不足は今後数年間でさらに悪化すると予想

される中、スティーブン・ブリッジウォーター氏はCAEのステラ・マリッサ・ヒューズ氏

10年以内に私たちの空を飾ると約束されているeVTOL航空機を誰が運用するのかと尋ね

ました。

航空業界は2020年の世界的なパンデミック以降、大幅なパイロット不足に悩まされており、

その不足は2020年代半ばまでに3万5,000人から5万人にまで拡大すると予測されています。

この夏のパリ航空ショー中に、飛行訓練プロバイダーのCAEは、2032年までに130万人の

航空専門家を新たに採用する必要があると予測。同社の2023年の航空人材予測では、商業

航空およびビジネス航空分野でパイロット28万4,000人、整備技術者40万2,000人、客室乗

務員59万9,000人の必要性が見込まれています。退職や人員削減、航空業界の拡大による欠

員を埋めるために、セクターのみを利用することも考えられます。

一方、人材採用コンサルタント会社エアロプロフェッショナルによる航空エンジニアリング

部門に関する最近の調査では、航空機エンジニアリング従業員の27%が今後10年以内に退職

する予定であると主張しています。さらに、エンジニアの45%が別の業界への転職を検討し

ています。

労働者の減少と旅行者からの航空需要の増加という「完璧な嵐」により、航空業界やビジネス

ジェット業界にとって懸念材料となっていますが、これは新興エアモビリティ(AAM)市場を

どうするのでしょうか?

CAE の高度航空モビリティ戦略、ビジネス開発およびパートナーシップのリーダーであるステ

ラ マリッサ ヒューズは、エンジニアとして訓練を受け、2015 年にエンジニアリング イノベ

ーション グループの一員としてカナダに本拠を置く CAE に入社しました。R&D 戦略に取り

組んだ後、OEM と協力するために民間ビジネス開発部門に移り、過去 3 年間は AAM チーム

の一員として働いています。

白書

ベータ テクノロジーズは、2021 年から CAE のシミュレーションおよびトレーニング サービスを採用しています。(CAE)

「約 3 年前、CAE は Uber Elevate と協力してパイロット トレーニングに関するホワイ

ト ペーパー(白書)を作成し始めました」とヒューズ氏は説明しました。「すべての議論

が車両に集中しており、人々は必ずしも初日の業務を立ち上げるために何が必要かについ

て話しているわけではないことに気づきました。業界がインフラストラクチャやリースな

どに注力し始めたのはつい最近ですが、私たちは特定の乗組員のトレーニングが必要であ

ることを早い段階で認識していました。」

2020 年、CAE は設計、規制問題、シミュレーションの専門家を含む専任チームを立ち上

げました。「私たちはパイロットのトレーニングとメンテナンス側のトレーニングの両方

を検討しています。なぜなら、両方が必要であり、すぐにでも必要だからです。しかし、

私たちは彼らが同じレベルの安全性を身につけるように訓練されていることを確認する必

要があります。同時に、私たちはどうすれば人口の異なる部分にこの分野への参入を促す

ことができるだろうかと考えました。」

正しい文化を創造する

今後の AAM 車両群を操作するには、新世代の整備士と地上スタッフが必要になります。(ベータ テクノロジーズ)

CAE のチームは、OEM および将来のオペレーターとの協力を通じて、AAM の正しい文

化を構築する必要性に特に注意を払ってきました。「シングルパイロットの AAM に関し

ては、安全性と認識の文化を築くことが不可欠です」とヒューズ氏は説明します。「これ

らのパイロットは単独で操縦することになるため、2番目の座席に座る誰かの指導を受け

ることはありません。多くの場合、これらの新しい航空会社の多くは既存の航空会社と

提携していますが、それでも、別の AOC に所属することになります。では、有効な人事

ポリシーをどのように確立し、候補者をどのように選出するのでしょうか?

「新しい雇用文化を生み出すことで、よく知られている「オールドボーイズ」の考え方か

ら業界を積極的に構築する機会が形成される可能性があるため、私たちはこれを実際にポ

ジティブに捉えています。新兵が現代の価値観と一致していることを確認することで、伝

統的に女性や少数派グループへの支持や包摂が希薄だった元軍人や他の文化から距離を置

く機会が得られる可能性がある。」

個人的なレベルでは、ヒューズ氏は AAM 部門への移行が特に啓発的であると感じていま

す。「多くの時間、私はこの分野で私と似たような人々、つまり30代の若いプロフェッシ

ョナルな女性たちと一緒に仕事をしています。航空業界の伝統的な部門で働いているため、

年齢や資格を尋ねられることに以前は慣れていましたが、AAM は、キャリアの初期段階に

ある多くの女性に権限を与える機会を与えてくれました。私たちはプロジェクトを与えられ

一緒に実行するように言われました。そして私たちは皆、全力で取り組んでいます!

カリキュラムの作成

飛行前チェックは完了しましたが、将来の eVTOL を操縦するのは誰でしょうか? (ベータ テクノロジーズ)

CAE はすでにさまざまな OEM と協力して、訓練カリキュラムの設計、特定の飛行訓練装

置の設計と構築、または英国に本拠を置く垂直エアロスペース社との提携のように全体的

な飛行訓練装置の構築など、訓練プログラムの準備を整えています。

トレーニングエコシステム。「私たちがやろうとしているのは、各事業者に初日から実装

できる『既製』のソリューションを提供することです」とヒューズ氏は説明しました。

CAE は、Vertical に加えて、Volocopter、Joby、Beta Technologies、Jaunt Air Mobility

ともパートナーシップを締結しました。「彼らのニーズはすべて少しずつ異なります」と

ヒューズ氏は続けました。

「しかし、EASAでもFAAでも規制はまだ固まっていないため、私たちは規制当局と積極的

に協力し、軍や航空会社の訓練から学んだベストプラクティスのいくつかを導入しようとす

る機会があります」その他の業界 [CAE には大規模な医療トレーニング子会社があります]。

たとえば、コンピテンシーベースのトレーニングに焦点を当てる必要がありますか?学生が

16 のモジュールを学習する必要がある規範的なトレーニングに焦点を当てるのではなく、

学習の成果に注目する必要があります。 航空業界は後者のスタイルで運営されており、

何世代にもわたってそうしてきたため、規制当局がその事前定義されたシラバスを変更する

にはかなりの慣性が必要になります。しかし、所定の訓練プログラムがない場合、「この

パイロットは有能ですか?」などの質問をする機会があります。「カリキュラムの一部が失

敗しているのではないか?」目的に適合するまでコースを微調整し続ける機会がありますが

そのためにはデータが必要です。それが、私たちが非常に早い段階で規制面に取り組み始め

た理由の 1 つです。」

2023 年の夏の時点で、CAE は OEM パートナーと協力し、技術文書やパイロット操作ハン

ドブックなどの成熟度を高めるのを支援しています。「すべてが完成したら、これをコース

ウェアに組み込むことができます」とヒューズ氏は説明しました。「代表的な航空機が承認

された場合にのみコースの承認を得ることができ、規制当局は航空機が型式認証されるまで

何も承認する必要はありません。しかし、私たちは型式証明に合わせてトレーニング プログ

ラムを進めており、その時が来たときに確実に準備ができるように、事前に実行できる作業

がたくさんあります。」

現実を拡張する

CAEは、昨年のファンボロー国際航空ショー中に、eVTOL市場向けにCAE 700MXR複合現実フライトシミュレータを発売しました。(CAE)

CAE は、昨年のファンボロー国際航空ショー中に、eVTOL 市場向けの新しい複合現実

フライト シミュレーターを発表しました。没入型で忠実度の高い CAE 700MXR シミュ

レーターは、複雑な都市環境で飛行することが予想される飛行士に、コスト効率が高く、

現実的でスケーラブルな飛行訓練を提供するように設計されています。このシステムは、

コンパクトなミニモーション プラットフォームと 360° の視野のビジュアルを使用して

単一パイロットの低空飛行操作に合わせた物理ベースのシミュレーションを提供します。

同社の革新的なパイロット トレーニング プログラムは、Mixed Reality や AI などの高

度なテクノロジーを活用して学習体験を強化します。

「AR や VR などの没入型テクノロジーを飛行訓練に使用することは、規制当局の間で

注目を集め始めています」とヒューズ氏は説明しました。「これは、トレーニングをよ

り速く、より良く、より手頃な価格で行えることを意味します。しかし、繰り返しにな

りますが、検証には多くの時間と大量のデータが必要です。そのため、これも私たちが

早くから始めた活動です。」

ヒューズ氏は、トレーニング体制でイマーシブ テクノロジーを使用することのもう 1 つ

の利点も強調しました。「私と友達は VR で遊んでおり、多くの子供たちが自宅でそのテ

クノロジーにアクセスできるので、私たちはこのようにして人々を惹きつける必要があり

ます。新しいトレーニング カリキュラムには VR が含まれている必要があります。今日、

どこの大学に行っても、学生が YouTube ビデオを見ているのを見かけるでしょう。書籍

や教室のツールが、情報を素早く得ることに慣れている現代の学習者に合わせて調整され

ていないからです。したがって、AAM トレーニングはこれを反映する必要があります。」

候補者

Joby Aviation の運航乗務員は試験出撃後、eVTOL について話し合います。航空機が商業運航を開始したとき、誰がその航空機を操縦するのでしょうか? (Joby Aviation)

AAM eVTOL クラフト用に提案されている無数の設計には、マルチコプター機械からリフ

トや巡航プラットフォームに至るまで、あらゆるものが含まれています。それでは、将来

のパイロットには固定翼機、ヘリコプター、あるいはその両方の操縦経験が必要なのでし

ょうか?

「EASA は、CPL A コミュニティと CPL H コミュニティの両方から eVTOL 対応タイプの

評価を取得する経路を作成しました」とヒューズ氏は説明しました。「私たちは、そのタイ

プ評価の中核部分が共通のものになることを期待していますが、これら 2 つの非常に異な

るコミュニティから得られるスキルセットを見ると、それを補うためには、ある種の移行

タイプのコースが必要になるでしょう」欠けている能力のために。米国では、車両は軽量

クラスにあるため、FAA は完全な型式評価を要求しません。ただし、各機体には、リスク

プロファイルによる型式評価のような車両固有のトレーニングが必要になります。」

「EASAもFAAも、少なくとも初期の段階では、eVTOL飛行へのab initio(ラテン語で最初

からと言う意味)の経路を用意していない」とヒューズ氏は強調し、「そのため、AAM車

両を飛行させたい人は商用パイロットである必要がある」と述べました。

これは採用の観点からは制限的であるように思えるかもしれませんが、いくつかの興味深

い機会をもたらします。多くの民間パイロットは、パンデミックによるロックダウンの後、

仕事に戻らなかった。また、生活の中で定期的に夜間に家を離れたくないという状況に達

した人や、単純に飛行機の運航を減らしたいと考えている人もいます。

重要なのは、AAM飛行をキャリアの選択肢として実現できるよう奨励することです」と

ヒューズ氏は強調しました。「業界として、私たちはeVTOLでの飛行時間がパイロットの

将来のキャリアにカウントされるという点に向けて取り組む必要があります。それは規制

当局が業界の意見に耳を傾けるべき重要なことだ。」

仕事と生活のバランス

「システムは従来の航空機とは大きく異なります。従来のヘリコプターというよりもコンピューターに似ています。それに携わる人々には、ソフトウェアのバックグラウンド、おそらくサイバーセキュリティのスキルセットなどが必要になるでしょう。」(リリウム)

英国における商用パイロットの平均年間賃金は約5万ポンド(約1000万円)といわれて

おり、全国平均賃金より約21%高いが、AAM eVTOL航空機の運用の経済的観点からは、

さらに低い給与が要求される可能性があります。そのため、この分野は、より良いワー

クライフバランスと引き換えに、より少ない給与で働く意欲のあるパイロットを惹きつ

ける、別のビジネスモデルの検討を余儀なくされる可能性があります。より少ない賃金

で喜んで働くパイロット。「これはパイロットのワークライフバランスとのトレードオ

フでなければなりません」とヒューズ氏は続けました。「AAM のキャリアが提供する機

会は、個人的な約束がある人や、パイロットであり続けたいがビジネスでパートタイムで

働いたり、勉強を続けたりする可能性がある人にとって、特に魅力的である可能性があり

ます。さらに、フルタイムではなく、まだ飛行をしたいと考えている「キャリアの終わり」

のパイロットもいます。」

ワークライフバランスを考慮する必要がある要因の 1 つは、パイロットの疲労です。AAM

の乗組員は 8 時間の区間や一晩の乗り継ぎのストレスを避けることができますが、平均的

な出撃時間は短く激しいものとなります。固定翼の民間パイロットは通常、1 日に 2 ~ 4

回の重要な飛行フェーズ (離陸と着陸) を行いますが、eVTOL のパイロットは 1 時間に同じ

数の操縦を行う可能性があります。「さらに、あなたのすぐ後ろの隣に座っている乗客が質

問してくるのです。つまり、あなたはパイロットであると同時に客室乗務員でもあるのです」

ヒューズ氏は付け加えた。「さらに、都市部の下層空域は非常に混雑する可能性があり、非

常に堅牢な UTM システムが導入されるまでは、航空交通との通信が大量に発生することにな

ります。」

運用費用

AAM トレーニングの未来はバーチャルになる可能性がありますか? (CAE)

直接的な非経験なしeVTOL 操縦への参入ルートでは、潜在的な乗組員は商用操縦士のラ

イセンスに多額の投資をする必要があります。現時点で英国ではこのような格付けの費用

が 70,000 ポンドから 120,000 ポンドの間であり、これは AAM 企業の運営コストに悪

影響を与えることは必至です。したがって、客が座席ごとに支払うマイル料金は Uber

タクシーと同等であるという大々的に宣伝されている主張は、単純に加算されません。

ヒューズ氏もこれに同意し、「(AAM の)初期には、業界の予測を立てようとする人々

に誤解を招くようなものがあったかもしれない」と指摘しました。しかし、今では経験豊

富な航空会社が参入し、ビジネスケースを検討することで間違いを指摘できるようになり、

パイロットの給与もその1つです。」

「業界がトレーニングのコストと複雑さを軽減するためにできる限りのことを行い、規制

当局と協力してARやその他の高度なトレーニング補助具を組み込む機会を捉えることも重

要です」とヒューズ氏は述べました。「データ分析を組み込んでトレーニングを合理化し、

学生が本当に取り組む必要がある要素に焦点を当てることで、これを別のレベルに引き上げ

ることができます。現在、一部の単独パイロットによるヘリコプター運航はほとんど保険が

適用できないため、最終的にはそのデータは保険会社にとっても非常に重要になるでしょう。

これに、一人のパイロットが操縦し、混雑した都市環境上を飛行する斬新な新型航空機を加

えると、保険会社との早期の協議が不可欠となります。実際にループを閉じて、AAM が効果

的で安全であることを証明するには、トレーニング データにリンクバックできることが重要

です。」

まとめ

CAEのインタビューレポートを見てきました。

CAEは、あくまでも1企業としての考え方を述べていますが、この訓練(ARや特別なシュミ

レーター)を使用することで、世界の標準(スタンダード)を構築しようとしています。

このレポートの指摘通りに、AAMのパイロットや整備士は新たに養成しなければなりませ

ん。それは、若年層やリタイヤしたパイロット経験者に雇用の機会を与えてくれるものに

なります。規制機関も、新たな規則作成などに取りかからなければなりません。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

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