済州航空機墜落事故の怪

飛行機

皆さんこんにちは!

12月29日の午前中(9時過ぎ)に済州航空機が墜落したニュースが飛び込んできました。

衝撃的な映像は、乗員乗客のほぼ全員が亡くなったものでした。

まだ、事故調査が進んでいるものの、そのフライトにはいくつかの疑問点が・・・

済州航空のボーイング737-800が韓国の空港で墜落

済州航空737機墜落現場

2024年12月29日に務安国際空港で墜落した済州航空737-800の残骸。クレジット: チョン・ソンジュン/ゲッティイメージズ

韓国の格安航空会社の済州航空が運航するボーイング737-800型機が12月29日、務安空港で

着陸装置を格納したまま着陸を試みた後、コンクリートの壁に衝突して墜落しました。

7C2216便は、バンコクから韓国南西部の務安へ向かう途中、乗客175人と乗員6人を乗せて

出発。墜落機には、乗客175名(韓国人173人、タイ人2人)、乗務員6人を含む181人が搭

乗していました。助かったのは最後尾にいた乗務員の男女2人のみ。179人が犠牲となりました。

同機は韓国とタイを結ぶクリスマスチャーター便で、今月8日から就航していました。タイ・

バンコクを午前1時30分頃に経ち、務安国際空港には、8時30分に到着する予定でした。

同省は、飛行データとコックピットのボイスレコーダーが回収されたと付け加え、現場には航

空事故調査官8人と航空安全担当官9人からなるチームがいたと述べました。

この事故は2024年の世界では断然最悪の事故であり、12月25日にアゼルバイジャン航空の

エンブラエル190がロシアの対空砲火を受けて カザフスタンのアクタウで墜落して以来、 2件目の死亡事故となりました。

済州航空の航空機は当初、務安の滑走路01に進入中だった。事故の約6分前、管制官は付近の

鳥について警告を発したと同省は述べました。同省によると1分後(現地時間午前8時58分)

乗務員は最終進入中に緊急事態を宣言し、着陸復行を選択しました。飛行追跡ウェブサイト

Flightradar24によると、航空機はその時ADS-Bデータの送信も停止したのです。

Flightradar24が発表したデータによると、機体は滑走路01への進入の最後の2分間はおおむ

ね毎分700~800フィートの標準降下率で飛行し、その後一時的に毎分2,000フィートまで上昇しました。

滑走路01への最終進入中に空港に接近する航空機のビデオには、フラップと着陸装置が上がっ

た状態の737が映っていました。右エンジンから一時煙と炎が出たこともわかっています。

その後、同機は現地時間午前9時3分に着陸を試みたのと同じ反対方向の滑走路19への着陸を許可されました。

墜落のビデオには、着陸装置もフラップも展開されていない状態で機体が滑走路を滑走する様

子が映っていました。機体は2,800メートル(9,200フィート)の滑走路の端をオーバーラ

ンしました。その後、機体は滑走路から数百フィート離れたコンクリートの外周壁に衝突し、炎上したのです。

データによりますと、この航空機(登録番号HL8088、シリアル番号37541)は2009年に

最初にライアンエアーに納入され、2017年にSMBC Aviation Capitalによって済州航空

にリースされました。15年前に製造されたこの航空機は、24,230時間と13,254サイクルを記録していました。

済州航空は声明で「今回の事件で被害を受けたすべての方々に深くお詫び申し上げます。状況

の解決に全力を尽くします。ご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます」と述べました。

済州航空とは

済州航空は、韓国のLCCとして2005年、済州島(済州特別自治道)と中堅財閥・愛敬

(エギョン)グループ)が合弁で設立しました。愛敬グループは、化学や日用品の製造を中

心にAKプラザなどのショッピングセンターも運営しています。

韓国のLCCとしては急速な成長を果たしており、シェアでは大韓航空に次ぐ規模(15.4%)

にまでなっています。日本には、東京・成田はもちろん、関西、福岡などにも就航しており、

利用した人も多いでしょう。事故が起きた務安国際空港では、つい先日、長崎との就航便を始めたばかりでした。

しかし、急成長する一方で、3年前には韓国の航空会社の中での総合安全度スコアは最下位

となり、同社に対する政府の管理監督官が2倍に増員されてもいました。航空機の平均稼働時

間が他社よりも長く、機体の老朽化が早いという点も指摘されています。これは、格安航

空会社(LCC)ではよくあることですが、急成長を遂げた航空会社の弊害でしょうか?

フリート・ディスカバリーによると、同社は現在、737-800が39機、737-8が2機の計41機

の737を運航しています。さらに確定発注済みの737-8が38機あります。

務安(ムアン)国際空港

滑走路の短さが指摘されていた務安国際空港では、滑走路の延伸工事が進められていた(写真:Bloomberg)

滑走路の短さが指摘されていた務安国際空港では、滑走路の延伸工事が進められていた(写真:Bloomberg)

長さ2800mの滑走路1本を有し、年間14万回の離着陸を処理する能力を持つ国際空港です

滑走路長の3200mへの延長が計画されていますが、予算が獲得できず計画は進展していません。

務安国際空港は、1999年に建設が始まり、2007年に完工。韓国にある14の空港の中で5

番目の規模を誇りますが、開港翌年に金融危機が起きたことなども重なり、赤字空港としても知られました。

コロナ禍後には海外旅行熱が高まり、就航数を増やしていましたが、滑走路は、仁川国際空港

では最大4000m、金浦国際空港では3600mと比べると2800mと30%ほど短いことが指摘されていました。

大型機の就航を誘致する目的もあり、務安国際空港がある全羅南道では2010年から滑走路の

延長工事を申請し、2021年、ようやく国土交通省の基本計画に含まれ、3160m滑走路を延

長する工事が始まってましたが、事故当日は工事のため、2800mの滑走路はさらに2500mに縮小されていたということです。

疑問点

バードストライクそして離陸復行

空港近くに湿地もあり、渡り鳥が多く発生する場所になぜ空港を建設しなければならなかった

のでしょうか?そして、滑走路の短さも指摘されました。

1回目の着陸で、管制塔からの情報でバードストライクに対する注意喚起が行われています。

おそらく着陸間近の低高度でバードストライクにあったと予想されますが、通常はそのまま

着陸する方が安全な場合が多いのです。最悪、エンジンへのダメージが大きい場合でも、エン

ジンは回転し続けているために出力の損失は少ないと考えられるからです。

また、着陸復行後に全ての着陸装置(ギア、ファラップ)をクリーン状態(全て上げている

状態)にしていることも疑問が残ります。緊急事態を宣言しているならばすぐに2回目の着陸

を行うのがセオリーです。そのために着陸装置はギアは上げるものの、フラップはある程度

降ろしておくのがベストだと考えられます。

胴体着陸

事故機はなぜ胴体着陸をしなければならなかったのでしょうか?

バードストライクによって、右側のエンジンがダメージを受けたことは視聴者の映像から

わかっています。そのことによって、着陸装置を作動させる油圧が全て喪失したとは考え

にくのです。特にギアは油圧が無くても手動で降ろすことができるのです。

わざわざ、リスクの高い胴体着陸を選ぶことは最終手段と考えるべきです。

また、胴体着陸する場合には速度をできる限り少なくして、衝撃を少なくするとともに

オーバーランを防止しなければなりません。そのためにはフラップを最大に出して失速速度を

最小にしておく方が良いのです。今回は全てアップの状態でしたので着陸速度はかなり出ていたと想像できます。

胴体着陸を試みる場合には、爆発の被害を最小限にとどめるため、燃料を空中に強制噴出した

り、旋回するなどして通常であれば燃料を消耗させますが、これを行っていないことがわかっ

ています。同機体には燃料放出機能がなかったことがわかっており、そのため、旋回する時間

がないほど一刻を争う事態が起きていたのではないかと言われています。

右翼から白い煙りがあがっている映像が提供されていることもあり、機内に有毒ガスが入り、

燃料を排出させるような非常措置がとれなかったのではないかとも推測されています。

務安国際空港の管制塔は、ランディングギアが下りないことがわかっていれば、事前に燃料消

耗を促し、着陸時の衝撃を減らすための特殊泡も撒くことができたと話していますが、同機は

バードストライクの注意警報を受け取った後、わずか5分ほどで胴体着陸をしており、機内で

何が起きていたのか、解明が待たれます。

韓国の国土交通省は、滑走路は着陸に十分な長さだったとして事故の原因とは関係がないという立場を明らかにしています。

また、当初、着陸予定だった滑走路とは反対側で着陸を試みたのはなぜかという疑問を呈示さ

れています。一部では、民家のある方向を避けたのではないかという見方も出ているが確かなことはまだ分かりません。

政治的な混乱が招いたもの

今の韓国は、政治の混乱と大韓航空とアシアナ航空の統合という航空業界も混乱しています。

そんな中、起きた今回の墜落事故。

済州航空は、整備については不備はなかったと説明しました。同機の機長は、空軍出身で、

2014年に済州航空に入社。飛行時間も6000時間を超えるベテランパイロットでした。

非常戒厳から政治の混乱も続く中で起きた大惨事に、「もうやりきれない」というため息も

聞こえます。この大惨事への対応指揮を執るのは、チェ・サンモク大統領権限代行です。

チェ氏は副総理兼企画財政相ですが、事故が起きる2日前の12月27日、大統領権限代行を務め

ていたハン・ドクス国務総理も野党から弾劾訴追され職務停止となり、職務を引き継いだばか

り。しかも、このチェ代行も弾劾訴追される可能性が高いといわれており、「野党はいったい

何がしたいのか」という声も上がっています。

チェ代行は、当日すぐに現場に入り、遺族と面会しています。全羅南道務安郡を特別災害地域

に指定し、国土交通省は、中央事故収拾対策本部を設置するなど、現在のところ着々と収拾措

置が進められています。30日、韓国政府はアメリカ当局と合同で事故原因の調査を行うことを明らかにしました。

今回の務安国際空港での事故は韓国国内で起きた飛行機事故では、史上最悪の大惨事となりま

した。韓国自治体の空港誘致合戦がうんだ悲劇という見方もでています。

まとめ

今回の事故の第一報を聞いて、メディアの衝撃的な映像を目の当たりにして私も襲撃を受けま

した。そして、事故の当事者(機長)だったらどうしたかを私なりに解析しました。

事故に至る「チェーン」をいかに断ち切るかが機長の役目です。今回の事故は、数多くの

「チェーン」が存在しました。

バードストライクの対応

着陸復行後の操作(着陸装置の扱い)

胴体着陸の判断と準備

この中には、燃料という鍵があります。想像ですがマニラから務安国際空港へは、LCCという

わけではありませんが、天気が良ければ余分な燃料は搭載しません。昨今の燃料高騰により

会社の経営を圧迫するために燃料はギリギリしか積みません。そのため、飛行できる時間は

限られていたと思います。その中で究極の判断を下さなければならなかった乗員の精神状態は

いくばかりだったのでしょうか?そして、一瞬の判断が人々の人生を奪ってしまうことも明らかです。

3月に結婚する予定のカップルも・・・

乗客のほとんどは、空港からアクセスのよい周辺地域に住む人々だったと伝えられました。

両親の傘寿の祝いにと一家9人でタイ旅行に出かけた家族、昇進を祝い、忙しくなる前に家族

で旅行に行こうと乗り込んだ家族、なかには3月に結婚式を控えていた2人もいたそうです。

娘の父親は、韓国メディアの取材に嗚咽を堪えながら、「私の末娘です。3月9日に結婚式を控

えていたのに。お父さん行ってくるねと言って新郎と一緒に旅行に行きました。とても、とて

も苦しい……」と最後は言葉にならなかったといいます。

乗客と空港に迎えにでていた家族とのやりとりも公開されました。

「ちょっと(上空に)いる。鳥が翼に挟まったみたい」→「えっ」→「着陸できない」→

「いつからそうなの」→「ちょっと前。遺言残さないといけないかな」‥(通信社「NEWS1」12月29日)。

事故で亡くなられた方々へのご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

 

 

 

 

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