皆さんこんにちは!
コロナのパンデミックが終わって早3年が経とうとしています。この3年間航空業界は大きく飛躍しました。しかし、一方でパイロットなど人材不足は深刻な問題です。
そんな中、パイロット訓練のツールとしてLSA(Light Sports Aircraft)が注目を集めています。
今回から何回かのシリーズを分けて、LSAの魅力と最新情報、そこから見えてくる課題を紹介したいと思います。
LSA Light Sports Aircraft
LSAとは
日本ではあまり馴染みのない言葉です。日本語訳は、『軽量小型航空機』。
有人(人が乗れる)航空機は、空気より軽い気球や飛行船、空気より重い飛行機、ヘリコプター、グライダーに類別されます。
飛行機の中には、小型機、大型機、そしてハンググライダーのように免許の要らないものがあります。
軽量小型航空機と言えば、ハンググライダーや小型のエンジンの付いた超軽量動力機があります。
LSAとは、セスナや小型飛行機と呼ばれる中でも、基本2人乗りで単発エンジンです。
LSAは、超軽量動力機(ULP)と軽飛行機の中間的なカテゴリーに属します。ULPは軽飛行機
に比べてライセンスの取得が容易であり運用コストも安いことなどから世界的に普及が進みました。
軽量航空機の分類(法政大学 御法川教授『LSAとは』より)
LSAカテゴリーに合致する機体の安全基準は、大型旅客機などに適用される国際民間航
空機関(ICAO)による規定ではなく、主に米国試験材料協会(ASTM)によります。
これにより、機体の製造、検査が飛躍的に安価となり、普及を加速させる要因になっています。
例えば、米国LSAの主な制限事項は以下の通りです。
1) 機体の制限
・最大離陸重量 : 1320lbs (600kg)以下
・最大速度 : 120kt (222km/h)以下
・乗員数 : 2人
・エンジン : ピストンエンジン1基
・プロペラ : 固定ピッチまたは地上調整ピッチ
・操縦席 : 与圧式でないこと
・着陸装置 : 固定脚
・失速速度 : 45kt (83km/h)以下
2) 運用制限
・昼間の有視界飛行のみ
・個人のスポーツ、レクリエーションとしての飛行に限る(但し、練習飛行は可能)
・機体のリース、販売が可能
・航空保安装備の義務付け
・航空保険の義務付け
・航空法に従った運航
LSAの概要 (法政大学 御法川教授『LSAとは』より)
日本では、2022年(令和4年)12月26日に国土交通省より『研究開発用航空機等の試験飛行等の許可について』というサーキュラー(通達)が発行されました。
これによりますとLSAは、いわゆる空飛ぶクルマの研究開発航空機と同じ分類です。
1) 機体の制限
・最大離陸重量 : 1320lbs (600kg)以下(陸上機)
1430lbs(650kg)以下(水上機)
・最大速度 : 120kt (222km/h)以下
・乗員数 : 1人または2人
・エンジン : 単発レシプロ機
・プロペラ : 固定ピッチまたは地上調整ピッチ
・操縦席 : 与圧式でないこと
・着陸装置 : 固定脚または引込脚
・失速速度 : 45kt (83km/h)以下
2) 運用制限
・昼間の有視界飛行のみ
・個人のスポーツ、レクリエーションとしての飛行に限る(但し、練習飛行は可能)
(グラーダーの曳航機としても利用可能)
なお、自作した場合は『自作航空機』と見なされます。
細かい規定では、昼間、有視界飛行方式(雲に入ってはいけない)で場周経路(離着陸のため
設定された)での飛行及び人口密集地を回避する2地点間の飛行をすることができます。
つまり、出発飛行場から目的地飛行場の2空港間を飛行できると言うことです。
LSAの歴史
2004 年 7 月、米国 FAA は、空を飛ぶことに参加したい人達に、より容易で低コストの手段
の提供を可能とすることを目的とした LSA について、承認をしました。
LSA は、その目的の達成のために、機体、飛行範囲、パイロット、教育体系、身体検査、整備
士等の扱いをセットにして新規に定めた、新しい空のシステムです。
その種類には、飛行機、体重移動操縦式航空機、グライダー、ジャイロプレーン、動力パラシュート、熱気球と、空を飛ぶための様々な分野が含まれています。
これらの様々な種類の LSA は、従来の、FAA 等の国の機関が定めた耐空性基準による航空機
ではなく、民間の ASTM(American Society for Testing and Materials) 規格によって設計
製造され、FAA 他各国がそれを認める形で、成り立っています。 (ジャイロプレーンの ASTM については FAA 未承認)
以降 LSA は、欧州 EASA 各国、東欧諸国、カナダ、南米、南アフリカ、アジア諸国、オーストラリア等、世界中で認められた存在となり、急速に発展してきました。
日本では、2021年(令和4年)6月30日に、ベルギー・ブリュッセルにて、『民間航空のの
安全に関する日本国と欧州連合との間の協定』(日・EU航空安全協定(BASA))が発効されました。
これによりお互いの航空産業の負担軽減、民間航空製品の自由な流通が促進されるようになりました。
そして、LSAなど航空機の機体の輸入が自由化され、EUから輸入が容易になりました。
LSAの魅力・低コスト
LSAは、何と言っても機体の価格、維持管理、運用コストが安いことです。
代表的な小型機(4人乗り)セスナ172は、本体価格は一般的に、新品のセスナ172は約40万ドルから50万ドル(約5,500万円〜6,800万円)の範囲で販売されています。
アメリカ、トリトン社のスカイトレックはLSAの中でもベストセラー機です。
価格は概ね半分の3000万円~4000万円程度です。
また性能は、ロータックスエンジン100馬力、航続距離は1148km、巡航速度は224km/
h(120kt)です。これは、セスナ172にも引けを取りません。
また燃費も良く、セスナの倍とも言われています。
そのため、初期費用(購入、リース)が安く、訓練機としての需要も高まっています。
また、構造がシンプルなため整備、メンテナンスコストがかかりません。
操縦自体も簡単なため、訓練効率も上がります。
そして、この航空機は中国で生産拠点を持ち、中国国内で販売されています。その経済効果は地元経済に5億5000万人民元、日本円で10兆億円を上回っています。
LSA市場予想
LSAの市場は、EU、アメリカ、アジア太平洋地域と世界中で運用されています。
2024年に11億7000万ドル(日本円1兆7000億円)に達しました。CAGR(年平均成長率)
は5.21%で成長し、2029年までに14億9000万ドル(2兆1600億円)になると予想されています。
2024年にはEUが最大の市場規模を誇っていました。今後(2025年から2029年)にわたって最も高い成長が予測されるのは、中国や韓国などアジア太平洋地域です。
残念ながらLSA後進国の日本は入っていません。
LSA市場は、その利用の高まり(近年はパイロット不足を補うためのフライトスクール)が顕著です。
また、製造拠点を自国内(アジア太平洋地域)に設けることで、地域の経済効果は計り知れません。
それだけLSAはポテンシャル(可能性)を秘めているのです。
それでは次回は、世界で活躍しているLSA企業を紹介していきます。
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