進む超音速ジェット機開発、その2

飛行機

皆さんこんにちは!

進む超音速ジェット機の開発、2番目はハーメウスの次期高速飛行試験機「クォーターホースMk 2.1」です。

ハーメウス、より先進的な超音速実証機を飛行

日の出とともに滑走路へ牽引されるクォーターホース Mk 2.1

遠隔操縦のクォーターホースMk 2.1は、ニューメキシコ州のスペースポート・アメリカで、ホワイトサンズ・ミサイル実験場の上空を使用してテスト中である。© Hermeus

ハーメウスは水曜日、次期高速飛行試験機「クォーターホースMk 2.1」の初飛行に成功

し、 同社によると無人機による超音速飛行を目指すキャンペーンの幕開けとなりました。

Mk 2.1の飛行試験は、2025年5月に初飛行したオリジナルのMk 1をベースにしています 。

アトランタに拠点を置くハーメウスは、20人乗りのハルシオンを含む、複数の軍事および

民間用途向けの極超音速航空機の開発計画を進めています。

「スピードは、当社の飛行システムと会社にとって基本的な要件です」と、ハーメウス社

のCEO兼創業者であるAJ・ピプリカ氏は述べています。彼は、クォーターホース社の

「迅速かつ反復的な開発ロードマップ」を通じて開発される能力が、「米国が数十年後

ではなく、今必要な高速能力の獲得に近づく」のに役立つと考えています。

デルタ翼のMk 2.1試作機は、前任機の4倍の重量と3倍の大きさを誇ります。F-16戦闘機

とほぼ同等の大きさで、ハーメウス社は「史上最大級の無人航空機の一つ」と主張しています。

動力は、改良型アフターバーナー付きプラット・アンド・ホイットニーF100エンジンに

よって供給されます。ハーメウス社は、次期Mk 2.2設計において、自社製の空気吸入式

キメラIIエンジンを活用し、世界最速の無人航空機となることを期待しています。同社の

目標は、この10年間で「ラムジェット推進による持続的な飛行を実現する」ことであり、

米国国防総省と協力して高速の「新たな運用防衛能力」を提供することを目指しています。

エドワーズ空軍基地の湖底に停泊するハーメウス・クォーターホース Mk 1

ハーメウス・クォーターホースMK1はエドワーズ空軍基地で飛行試験中です。2025年5月

超音速ジェット機の行方

X-59とハーメウスの「クォーターホース」、それぞれが超音速・極超音速飛行という次世代

の空の扉を開く非常にエキサイティングなマイルストーンですね。

一見すると、NASAとロッキード・マーティンという「伝統的な巨大組織のプロジェク

ト」と、ハーメウスという「新進気鋭のスタートアップ」では、アプローチが全く異なる

ように思えます。しかし、航空宇宙エンジニアリングの視点から紐解くと、両者は驚くほど合理的な「共通の戦略」を採用しています。

両社に共通する戦略の深掘りと、今後の開発予測を解説します。


■ 3つの共通戦略:なぜ彼らは「完成機」を急がないのか?

過去の超音速旅客機開発(コンコルドの後継機など)がことごとく失敗してきた歴史から

学び、両者は「いきなり最終形態(商業用旅客機)を作らない」という徹底したリスクヘッジ戦略をとっています。

1. 「単一の壁」に絞った技術実証(One Problem at a Time)

両プロジェクトとも、最終目的の前に立ちはだかる最大の技術的・法的な「壁」を一つだけ突破するための専用設計になっています。

  • X-59の場合(最大の壁:衝撃音と法規制)

    超音速旅客機が普及しない最大の理由は、ソニックブーム(衝撃波音)による「陸上での超音速飛行禁止」という法規制です。X-59は速く飛ぶことや乗客を乗せることには見向きもせず、「音をいかに小さくするか(低ソニックブーム技術)」だけを実証し、ルール(法規制)を変えるためのデータ収集に特化しています。

  • ハーメウスの場合(最大の壁:推進システムの切り替え)

    マッハ5(極超音速)で飛ぶための最大の壁は、低速用の「ターボジェット」から高速用の「ラムジェット」へ空中でエンジンモードを切り替える技術(TBCC:タービンベース複合サイクル)です。クォーターホースはこのエンジン切り替えと耐熱性のテストだけに絞った実験機です。

2. 既存部品(オフザシェルフ)の徹底流用によるコスト削減

革新的な機体でありながら、実は中身の多くは「既存の戦闘機の寄せ集め」です。これにより、開発期間とコストを劇的に圧縮しています。

プロジェクト 流用している主な既存コンポーネント 独自開発しているコア技術
X-59 F/A-18のエンジン、F-16の着陸脚、F-117の操縦桿、T-38のキャノピーなど 「機体の形状設計(空気力学)」
ハーメウス GE J85エンジン(F-5戦闘機などに搭載される枯れた技術)をコアに使用 「予冷器とラムジェットの統合機構」
3. ハードウェア・リッチ(作って飛ばして直す)の反復開発

シミュレーション(ソフトウェア)だけに頼るのではなく、実際の機体(ハードウェア)

を段階的に素早く作って飛ばすアプローチです。ハーメウスはMk0(地上試験)、Mk1

(離着陸試験)、Mk2(超音速実証)と、バージョンを小刻みに分けて開発するソフト

ウェア的な手法(アジャイル開発)を航空機に持ち込んでいます。X-59も風洞実験と実証機を細かく往復させて完成に至りました。


■ 今後の開発予測(2026年〜2030年代)

これらの試験機の成功を踏まえ、今後の超音速・極超音速市場は次のように動くと予測されます。

① X-59のデータによる「ゲームチェンジ(規制緩和)」

X-59が米国内の都市上空を飛行し、「地上で生活する人々に不快感を与えない」という音響データが証明されれば、FAA(米国連邦航空局)やICAO(国際民間航空機関)へ提出されます。早ければ2020年代後半から2030年代前半にかけて、「陸上での超音速飛行禁止」という長年のルールが撤廃、または基準値ベース(○デシベル以下ならOK)へと改正されるでしょう。これにより、ブーム・スーパーソニック社などの民間超音速旅客機ビジネスが一気に現実味を帯びます。

② ハーメウスの「軍事先行・民間後追い」モデルの加速

ハーメウスのクォーターホースMk2以降(極超音速領域への到達)の成果は、まずは間違いなく米国防総省(国防イノベーションユニット等)に買い上げられ、軍事用無人機(Darkhorse)として先行実用化されます。極超音速技術は軍事機密の塊となるため、Hermeusが最終目標とする「マッハ5の民間旅客機(Halcyon)」が空を飛ぶのは、軍事技術としての成熟とコストダウンが進んだ2030年代後半以降になる可能性が高いです。

③ ハイブリッド技術の波及

超音速飛行のために開発された新しい耐熱素材や、Hermeusの「予冷器(プレクーラー)」技術は、既存の航空機や宇宙往還機のエンジン効率を上げるための技術として、他の航空宇宙企業へスピンオフ(技術転用)されていくでしょう。


これら2つのアプローチは、超音速飛行の未来において「ルールを変える側(X-59)」と「物理の限界を突破する側(ハーメウス)」という、見事な両輪となっています。

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