ジェットネットサミットを振り返る

飛行機

皆さんこんにちは!

9月24日、25日にアメリカユーヨークで開催されたビジネスジェット業界の国際的な会議

「ジェットネットサミット」。

今後のビジネスジェットの未来を占う大事な会議。このサミットから見えたものとは?

未来に焦点を当てたジェットネットサミットが開幕

ジェットネット サミットが24日ニューヨーク市で開幕し、ジェットネットの営業担当副社長

ポール・カルダレッリ氏が司会を務め、ビジネス航空の「今後の進化」に焦点を当てたオープ

ニングパネルなど、将来に焦点を当てました。

パネリストのWingXのリチャード・コー氏は、現在中東とウクライナで行われている2つの

「熱い戦争」が業界にどのような影響を与えているかを尋ねられました。

「私たちの業界の周期的な性質は、過去20年から25年の間に起こった出来事の影響によって強

調されてきました」と彼は語りました。「9/11の比較的短い影響であれ、世界金融危

機であれ、明らかに業界は10年間停滞しました。最近では、パンデミックによる地政学的影

響が明らかにあり、当初は足踏み状態になりました。基本的に、1、2か月で活動の60%から

70%を失いました。」

同氏は、ウクライナ戦争は航空業界の業績が好調だった時期に起きましたが、世界的不安定化

の「間接的な影響」は感じられるようになったと述べました。「その一部は紛争の直接的な影

響ではないが、グローバル化の崩壊や米中間の緊張といった要因から生じる長期的なリスクだ」。

パネリストのエアロダイナミック・アドバイザリーのケビン・マイケルズ氏は、航空機の数が

減り飛行時間が長くなる時代に航空業界のビジネス環境はどうなるのかと質問され、現在のコ

ロナ後の市場動向について言及しました。

「出発便数は2019年に比べて25%増加し、稼働率は30%上昇していますが、これは何を意味

するのでしょうか?」と彼は言いました。「他に何も変化がなければ、MRO支出も30%増加

します。

そして、このミクロトレンドを、航空機OEMが積極的にサービス事業と回復力を拡大しようと

しているという事実と組み合わせると、興味深い組み合わせになります。航空機OEMは、アフ

ターマーケットサービスから収益の30%から40%を得ており、それがビジネスモデルの回復

力を高めています。」

同氏は、独立したビジネスジェット機メーカーとして疑念を克服した企業の例として、ボンバ

ルディアの成功を挙げました。

パネリストでジェットネットのマネージング ディレクターのロリー ヴィンセント氏は、個人的

にこの業界で 10 億ドルを 2 倍にするにはどうしたらよいかという質問を受けました。「トレ

ーニングを修正して最適化するというアイデアは、本当に気に入っています」と同氏は述べ

規制環境を考慮すれば航空宇宙産業や新しいエンジンに直接投資するというアイデアには肩を

すくめました。

「[人工知能]にはツールがあると思うが、もっと賢くなることができるところまで到達でき

る」と最適化に関して同氏は語り、「だから私はそのビジネスモデルが気に入っている」と言

及しました。

ジェットネットの調査で、ビジネスジェット 業界の決断力が鈍っていることが判明

ジェットネットは 1988 年にニューヨーク州ユティカで設立され、サブスクリプション ベース

の航空データ製品を提供する世界的に有名な企業です。当社の使命は、世界中の航空データを

収集し、航空業界のあらゆるセグメントで簡単にアクセス、使用、および価値あるものにする

ことです。

ジェットネットが主催するジェットネットサミットは、国際航空機ディーラー協会(IADA)

や全米ビジネス航空協会 (NBAA)やサプライヤーが年に一度開催する会議です。

ローランド・ヴィンセント JetNet iQ 創設者兼ディレクター

ローランド・ヴィンセントは、​​ニューヨークで行われた年次 JetNet iQ サミットで、最新の四半期 JetNet iQ 調査の結果について説明しました。© Curt Epstein/AIN

ジェットネットの最新の四半期調査では、ビジネス航空業界で不確実性と悲観論が高まってい

ることが示されています。本日午後、同社の年次 iQ サミットで講演した iQ 調査の創始者であ

り、ローランド ヴィンセント アソシエイツの代表であるローランド ヴィンセント氏は、同社

の第 3四半期調査では、回答者 400 人のうちほぼ 60% が、航空業界が現在のビジネス サイ

クルの最低点にはまだ達していないと感じており、経済が上向きであると信じる回答者のほぼ

2 倍に上ったことを指摘しました。

世界最大のビジネス航空市場である米国では、業界全体の楽観度は2020年の新型コロナウイ

ルス感染拡大以来最低水準に達しており、航空機運航会社セグメント間で大きな差はありま

せん。「私たちは少し奇妙な状況にあります」とビンセント氏は言います。「その一因は地政

学的緊張大統領選挙の不確実性、金利の変動、インフレ、これらすべての事柄、そして富を

めぐる全般的な緊張です。これは、私たちの社会で再び見られる持てる者と持たざる者の課題

と関係があると思います。」

しかし、この短期的な悲観論にもかかわらず、調査回答者は、今後 5 年から 10 年の間に、

半数が航空機の利用を増やすと予想し、46% が現在のビジネス航空機群の拡大を予想してい

ると回答しました。

米国の国内総生産は引き続き増加しているものの、米国のビジネスジェットの運航数は2022

年のピークである540万機から過去2年間は500万機強で横ばいにまで減少している一方、

米国のビジネスジェット機保有数は過去3年間1万5000機以上で推移しているのです。

ほぼすべての業界セグメントの中古在庫は引き続き増加していますが、大型超長距離ジェット

機は市場に出回っている航空機群の約 6.4% で安定しており、個人用ジェット機は 8 月に

7.2%に減少しました。

ヴィンセント氏は、中古ジェット機市場が安定を続けており、数年ぶりに新しい航空機が市場

に出回り始めていると指摘。「市場は動いており、航空機全体の 7 ~ 8 パーセントまで正

常化しつつあります」と同氏は聴衆に語りました。「2 年分のバックログ(積み残し)がある

ため、[中古] は業界に人材を投入するもう 1 つの方法であるため、このような数字が見られ

るようになることを期待しています。」

航空機メーカーは、材料費や人件費などのコスト上昇に直面しても価格をうまく抑えてきまし

がヴィンセント氏は値上がりを予想しています。「需要が落ち込む前に価格を上げることは

限界があるので、注意する必要がある」

現在、ビジネス航空機市場は510億ドルの受注残を抱えています。受注残比率はコロナ後の高

水準から通常の1対1に低下しています。「ここ数年、工場の観点から見ると、私たちは非常に

良い立場にあり、より多くの注文を受け、受注残を埋めてきました。今は納品しなければなら

ず、それを現金化するのが課題です。」

ジェットネットは、2024年までにビジネスジェット機が808機納入されると予測しており、

最新の業界予測では、今後10年間で8,644機の新しいビジネスジェット機が納入され、その価

値は2,620億ドルに達すると予測しています。これは昨年の予測から40機の純減となりそのう

ち、軽量および大型の超長距離ジェット機セグメントがそれぞれ22.6%と22.2%と、最も大き

な割合を占めています。予測では、今後10年間で約4,000機のジェット機が退役するとも予測

されているのです。

ターボプロップ機市場では、10年間の予測では、4,332機のターボプロップ機(そのうち約

10%が双発機)の納入が見込まれており、その価値は250億ドルに上ります。一方、約3,500

機が退役する見通しです。

リーダーシップの必要性を強調

エンブラエル・エグゼクティブ・ジェットの社長兼CEOのマイケル・アマルフィターノ氏と

ダッソー・ファルコン・ジェットのCEOティエリー・ベトベゼ氏は、ニューヨーク市で開催さ

れたジェットネットサミット2日目の今朝の「リーダーシップの洞察と方向性」パネルで、

ポストコロナ時代のビジネス航空のリーダーシップに焦点を当てました。

「最優先課題は雇用ではなく、充実感と目的を創出することです」とアマルフィターノ氏は

言及しました。「誰かが成功できるよう、昇進の機会を創出する必要があります。誰も永遠に

同じことをしたいとは思っていません。」

同氏は、若い世代がビジネス航空部門で働くことに熱心になりつつあり、昇進の機会と公正な

報酬を創出することが重要だと指摘しました。

「問題は単に雇用することではない。人材を訓練し、資金を投資して、彼らが熟練の職人にな

れるようにすることだ」と同氏は語りました。「パンデミック中に起こったことは、航空宇宙

のあらゆる側面で最高の人材を失ったことだ。人材を雇用し、やる気を出させる必要がある

が、訓練には資金を投資する必要がある」

ベトベゼ氏は、成長を続ける業界はコロナ後の労働力の面で課題に直面していると述べました。

「サプライチェーンについて話すとき、多くの場合、これは原材料や物流の問題ではありません。

下請け業者に適切な人材がいないことが問題なのです」と同氏は指摘。「コロナ禍で多くの下

請け業者に起こったことは、最良の人材を失ったことです。」

「サプライチェーンはさまざまな意味で分断されている」とアマルフィターノ氏は付け加えま

した。「失った人材の回復には時間がかかる」

同氏は、優れたリーダーシップにはサプライヤーとの重要な関係を維持することも必要だと説

明しました。「サプライヤーのところへ行かなければなりません。当社には何百人ものスタッ

フがいて、サプライヤーと一緒に直接問題に対処し、パートナーとして彼らの領域で問題を解

決して、彼らがより迅速に成果を出せるようにしています」とアマルフィターノ氏。

「仕事をしなければなりません。魔法の粉でできることではありません」

ジェットネットサミットがSAFの楽観論と気候変動への反発で開幕

サミットの初日は、持続可能な航空燃料 (SAF) ソリューションに対する慎重な楽観論と、気候

変動におけるビジネス航空業界の役割を批判してきた政界関係者に対する厳しい批判が相次ぎ

ました。

「ネットゼロ:高度、真対気速度、燃料備蓄、目的地までの距離」と題されたパネルで、パネ

リストのマレット・ガレデュー氏は、CO2を燃料源として利用できるようにするための同社の

取り組みについて語りました。ガレデュー氏は、エア・カンパニーのイノベーション・プロ

グラム・マネージャーです。

「私たちのプロセスは二酸化炭素に依存しません。二酸化炭素は発電所からでも、生物起源の

源からでも、直接空気からでも得ることができます」と彼女は語りました。「それが私たちの

モデルのようなもので、ニューヨーク市でもどこでも技術を展開できるのです。」

続く「ビジネス航空と気候変動:現在、明日」と題されたパネルでは、欧州ビジネス航空協会

(EBAA)の事務局長ホルガー・クラマー氏が、欧州委員会のこれまでのビジネス航空に対

する姿勢を遠慮なく批判しました。

「ブリュッセルでの20年間の経験から見て、前欧州委員会は、これまでで最も企業に非友好的

な欧州委員会だった」と彼は皮肉りました。

まとめ

多くの問題を抱えたまま閉幕した今年のサミット。はたしてこのサミットから見えてきたこと

とはなんだったのでしょうか?

一つには、アメリカビジネスジェット業界が抱えている今後の需要の鈍化に対する懸念です。

アメリカ経済の約7%以上を占める航空業界。11月の大統領選挙の結果次第では大きく変って

きます。民主党のハリス氏は、富裕層に対する増税。一方の共和党のトランプ氏は富裕層重視

の政策です。また、トランプ氏の最大の懸案は、対中国制裁と移民排除政策です。そして、

地球温暖化対策のパリ協定からの一方的な離脱です。これら全ての政策が実行されると、アメ

リカ経済だけでなく世界経済が再び混乱の渦に巻き込まれてしまうかもしれません。アメリカ

経済の落ち込みによって、全米ビジネスジェット業界も不況に陥ってしまうかもしれないのです。

また、環境問題でも欧州との溝が更に深まる懸念があります。このサミットでも、欧州との温

度差が顕著に表れた結果となりました。

そしてもう一つは、人材不足と強いリーダーの不在です。コロナのパンデミックがもたらした

ものは、優秀な下請け企業の倒産と人材の損失です。多くの下請け企業は、倒産したり人材整

理を行った結果、航空機産業そのものが衰退しました。結果、ボーイングは事故が相次ぎ存続

の危機に陥っているのです。また、優秀な経営者も業界から離れてしまった現状があります。

ビジネスジェット業界の生き延びる道は、若手の指導者(経営者)を育成すること、そして異

業種との連携を模索し新たなビジネスモデルを立ち上げることです。

また、今後成長が期待できる東南アジア、インド、ブラジルなどの需要を掘り起こしていくこ

とが大切です。

日本もこの流れに乗り遅れないようにしなければなりません。これは、数年後の日本の姿なの

ですから。

 

それでは今日はこの辺で・・・

またお会いできる日を楽しみにしています。

 

 

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