速報:米国エアタクシーが加賀市に来る

ドローン、空飛ぶ車

皆さんこんにちは!

日本の北陸地方、石川県の最南端に位置する加賀市が、米国のエアタクシー(eVTOL)企業ウイスク、日本航空と連携して日本にエアタクシーを導入します。

ウィスク社と日本航空エンジニアリング社が加賀市とMOUを締結

Wisk Aeroは本日、パリ航空ショー(PAS)において、石川県加賀市および日本航空の子会社

であるJALエンジニアリング(JALEC)と三者間覚書(MOU)を締結したとプレスリリース

で発表しました。この提携により、日本における自動運転航空旅行の導入機会が創出されます。

Wiskは日本航空(JAL)およびJALECとの既存のパートナーシップを基に、加賀市との新しい協力関係においていくつかの重要な分野に重点を置きます。

: 規制および空域システムの開発

: 市場分析と開発

AAM と自律航空の社会的受容

: サプライ チェーンのサポートと製造の機会

加賀市は日本政府から「国家戦略特区」に指定されており、次世代エアモビリティコンソーシ

アムの設立により、市内におけるモビリティ関連事業の推進が図られています。これにより、

加賀市は自律型エアモビリティの開発、試験、検証に理想的な立地となっています。

セバスチャン・ヴィニュロン

ウィスクのCEO、セバスチャン・ヴィニヨン氏は、「日本はAAM導入の重要な市場であり、

加賀市の未来のモビリティに対する先進的なアプローチと特区指定は、当社が第6世代航空

機のメリットを探求し、実証するための理想的な環境を提供します」と熱く語りました。

さらに、「このパートナーシップは、日本における自律飛行に必要なエコシステムの構築に向けた重要な一歩です」と付け加えました。

JALECマーケティング&セールス担当副社長の原川浩樹氏は、「この三者間のパートナー

シップは、日本社会における自動運転AAMの実現において中心的な役割を果たすでしょう。

私たちは共に、新興の自動運転技術を実証し、そのような運用の安全性に関する全国的な信頼を築いていきます。」と述べています。

加賀市の宮本陸市長は、「加賀市は人口約6万2千人の地方自治体です。東京や大阪よりも規模

が小さいため、研究開発拠点として自由度が高く、ワンストップで対応できるのがメリットです」と付け加えました。

日本政府「国家戦略特区」と加賀市

「国家戦略特区」とは

日本政府の「国家戦略特区」は、特定の地域に限定して、経済活動を阻害する「岩盤規制」

と呼ばれる既存の規制を大胆に緩和し、税制優遇なども組み合わせることで、国際競争力の

強化や地域経済の活性化を目指す制度です。正式名称は「国家戦略特別区域制度」といいます。

第二次安倍晋三政権下で2013年(平成25年)に制定された「国家戦略特別区域法」に基づき

創設されました。これまでの特区制度(構造改革特区や総合特区)が地方からの提案に基づ

く「ボトムアップ型」が中心だったのに対し、国家戦略特区は国が主導して戦略的に区域を

指定し、国と地域が連携して改革を推進する「トップダウン型」の側面が強いのが特徴です。

目的は、世界で最もビジネスがしやすい環境を整備し、民間の活力を最大限に引き出すこと

で、経済成長につなげることです。規制緩和の対象となる分野は、都市再生、医療、農業、雇用、外国人材活用など多岐にわたります。

加賀市と国家戦略特区

加賀市は、この国家戦略特区に指定されています。具体的には、**「デジタル田園健康

特区」**という枠組みの中で、茅野市(長野県)や吉備中央町(岡山県)とともに指定されています。

加賀市が国家戦略特区に指定された背景には、人口減少や少子高齢化といった地方が抱える

課題に対し、デジタル技術を活用して、健康・医療をはじめとする地域の課題解決に重点的に

取り組むという加賀市の先進的な取り組みが高く評価されたことがあります。

加賀市の国家戦略特区における主な取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 近未来技術の実証と社会実装の推進:
    • **ドローン(無人航空機)**の活用推進(「加賀市フリードローン特区」を宣言し、ドローンを活用した医薬品配送実証なども行われています)。
    • 自動運転技術の導入・実証。
    • AIやIoTを活用した様々な実証事業。
    • これらの実証事業を円滑に進めるための「加賀市近未来技術実証ワンストップセンター」が設置されており、関係省庁や地域との調整を一元的にサポートしています。
  • デジタル技術を活用した健康・医療分野の課題解決:
    • 遠隔医療、地域医療連携、データ活用による健康増進など、デジタル技術を用いた新たな医療・ヘルスケアモデルの構築。
  • 地域の産業振興と起業促進:
    • デジタル技術を活用した新たな産業の創出や、スタートアップ企業の誘致・支援(外国人起業家向けの「スタートアップVISA」の活用など)。
    • 加賀市イノベーションセンターを拠点とした活動。

このように、加賀市は国家戦略特区制度を活用して、特にデジタル技術を用いた地域課題の解決と新しい産業の創出に力を入れている自治体と言えます。

ウィスクエアロ

米国ウィスクエアロ(Wisk Aero)は、自律飛行型の電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発して

いる主要な企業の一つです。ボーイング社からの多額の出資を受けており、将来のエアタクシーサービスを目指しています。

ウィスクエアロは、パイロットが搭乗しない**「自律飛行(Autonomous)」**を大きな

特徴としており、地上にいるオペレーターが複数機を監視・管理する方式を構想しています。

Wiskのエアタクシー。

概要
  • 開発元: ウィスクエアロ(Wisk Aero)
  • コンセプト: 都市内および都市間での短距離移動に特化した「空飛ぶタクシー」サービス。
  • 自律飛行: コックピットにパイロットが搭乗せず、コンピュータが飛行制御を行い、地上のオペレーターが監視します。これは他の多くのeVTOL開発企業が「有人の航空機」を先行して開発しているのと対照的なアプローチです。
  • 安全への注力: 簡素化された設計と、単一障害点のない冗長化されたシステムにより、極めて高い安全基準(商業用航空機と同等以上)を目指しています。事故の可能性を「10億分の1」に減らすことを目標に掲げています。
  • 環境性能: 全電動(バッテリー駆動)であるため、ゼロエミッションを実現し、騒音も大幅に低減されています。
最新の機体:第6世代機 (Generation 6)

ウィスクエアロが現在開発を進めている最新の機体は、過去5世代の機体開発で得た知見を基にした「第6世代機」です。

  • 座席数: 4人乗り(乗客向け)
  • プロペラ配置:
    • 特徴的な12個のプロペラを持つ独自の設計です。
    • 前部に6個のティルティング(傾斜可能な)プロペラ、後部に6個の固定式リフトファン(垂直方向の推力を生み出す)を配置しています。
    • これにより、垂直離着陸(VTOL)と水平飛行(巡航)の両方で効率的な性能を発揮します。巡航時には後部のプロペラは位置を固定し、抵抗を減らします。
  • 客室:
    • 快適性を重視した設計で、車のようなインテリアデザイン。
    • 広々とした空間、大きな窓、Wi-Fi、充電ポート、カップホルダーなどを備え、快適な移動体験を提供することを目指しています。
    • 車椅子でのアクセスなど、ユニバーサルデザインも考慮されています。
  • 翼幅: 50フィート(約15メートル)未満
  • 充電時間: 約15分(急速充電に対応)
性能(第6世代機)
  • 最高速度: 約120ノット(時速約222 km)
  • 航続距離: 約90マイル(約145 km)+予備分
    • 都市圏内やその近郊の短距離移動に適した航続距離を目指しています。
  • 飛行高度: 地上約2,500~4,000フィート(約760~1,220メートル)
展望

ウィスクエアロは、FAA(米国連邦航空局)の型式証明取得を目指しており、特に**

「自律飛行による乗客輸送用eVTOL」として世界初のFAA認証候補**となることを目指して

います。ボーイング社との提携も、認証プロセスや将来的な商業運航に向けた大きな強みとなっています。

将来的には、1マイルあたり3ドルというタクシーに近い料金設定で、手軽に利用できる空飛ぶ

タクシーサービスの提供を目指しており、都市の交通渋滞緩和や新たなモビリティの創出に貢献することが期待されています。

まとめと解説

2024年4月26日に、加賀市、日本航空(JAL)、ウィスク・エアロが、共同でeVTOL(電動垂直離着陸機)の運航事業の社会実装に向けた協定を締結したことが発表されています。

加賀市・JAL・ウィスクエアロ提携の経緯

この提携は、各者が持つ異なる強みと、未来のエアモビリティに対する共通のビジョンが合致した結果と言えます。

  1. 加賀市の先進的な取り組みと「デジタル田園健康特区」

    • 加賀市は、日本政府の国家戦略特区である「デジタル田園健康特区」に指定されており、デジタル技術を活用した地域課題解決や新たな産業創出に意欲的です。
    • 特に、ドローンや自動運転といった近未来技術の実証に積極的で、空のモビリティに関する規制緩和や社会実装の場として、非常に魅力的でした。
    • 加賀市は、地域活性化や人口減少対策の一環として、次世代の交通手段であるeVTOLに大きな期待を寄せていました。
  2. JALのエアモビリティ事業への参入意欲

    • JALは、将来のエアモビリティ市場への参入を戦略的に進めています。これには、都市部での交通渋滞緩和や、地方の移動手段の確保といった社会課題の解決に貢献する目的があります。
    • 既に、米国アーチャー・アビエーション社(Archer Aviation)と提携し、同社のeVTOL機「Midnight」の日本での導入・運航を目指していますが、自律飛行型という異なるアプローチを持つウィスクエアロとも連携することで、ポートフォリオを多様化し、将来の選択肢を広げようとしています。
    • JALは航空運航のノウハウと安全管理体制を持っており、これがeVTOLの社会実装において不可欠です。
  3. ウィスクエアロの自律飛行型eVTOL技術とボーイングとの連携

    • ウィスクエアロは、パイロットが搭乗しない自律飛行型のeVTOLというユニークな技術を持つ企業です。これは、将来的に運航コストを大幅に削減し、より手軽なエアタクシーサービスを実現する可能性を秘めています。
    • 世界的な航空機メーカーであるボーイングからの大規模な投資と技術支援を受けており、認証取得や安全性の確保において強固な後ろ盾があります。
    • 日本市場への参入を模索する中で、先進的な取り組みを行う加賀市と、既存の航空運航事業者であるJALは、ウィスクにとって最適なパートナーでした。

経緯のまとめ: 加賀市の「新たな技術を導入し地域課題を解決したい」というニーズと、JALの「未来のエアモビリティ市場をリードしたい」という戦略、そしてウィスクエアロの「自律飛行eVTOLを世界に広めたい」という目標が合致し、加賀市という実証フィールドを得て、今回の提携が実現しました。

今回の提携における主な課題

この提携は大きな可能性を秘めている一方で、解決すべき多くの課題も存在します。

  1. 法規制と認証プロセス:

    • 自律飛行の法制化: 最も大きな課題は、パイロットが搭乗しない自律飛行機の商業運航を認めるための日本の法整備です。現在の航空法では原則として有人の航空機を想定しており、無人機の旅客運送に関する具体的な法規制はまだ確立されていません。
    • 型式証明の取得: ウィスクのeVTOLが日本で商業運航を行うためには、国土交通省からの型式証明(安全性を保証する証明)を取得する必要があります。これは非常に厳格で時間のかかるプロセスであり、特に自律飛行という点がハードルとなります。
    • 運航規則の策定: 空域の管理、離着陸場の設置基準、運航ルートの選定など、eVTOLに特化した新たな運航規則の策定が必要です。
  2. 社会受容性(安全性と騒音):

    • 安全性への懸念: パイロットがいない自律飛行の乗り物に対して、一般の市民がどの程度安全性を受け入れるかが重要です。提携各社は徹底した安全性アピールと実証が必要です。
    • 騒音問題: eVTOLは従来のヘリコプターよりは静かですが、それでも住宅地近くでの離着陸には騒音問題がつきまといます。適切な離着陸場所(バーティポート)の選定と、地域住民への理解促進が不可欠です。
  3. インフラ整備:

    • バーティポート(離着陸場)の建設: eVTOLが離着陸するための専用施設であるバーティポートの建設が必要です。場所の選定、建設費用、地域との合意形成などが課題となります。
    • 充電インフラ: 電動機であるため、高速充電が可能な充電ステーションの整備も必須です。
  4. 技術的課題と運航コスト:

    • バッテリー技術: 航続距離やペイロード(積載量)を確保するためには、高性能かつ軽量なバッテリー技術のさらなる進化が必要です。
    • メンテナンス: 新しい種類の機体であるため、整備士の育成やメンテナンス体制の確立も課題です。
    • 運航コスト: 自律飛行はコスト削減に寄与するものの、機体価格や維持費、バーティポート運営費などを含め、既存の交通手段と競争できるレベルの運賃設定が可能かどうかが問われます。
  5. 人材育成:

    • 地上のオペレーターや整備士など、eVTOLの運航・管理に必要な専門人材の育成が急務となります。

これらの課題を乗り越え、加賀市でのeVTOLの社会実装が成功すれば、日本のエアモビリティの未来を大きく前進させるモデルケースとなることが期待されます。

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