皆さんこんにちは!
カーボンニュートラルに向けて各航空機エンジンサプライヤーは、新しいエンジンの
模索を行っています。
それが電気だったり水素だったり様々です。今あるエンジンに改良を加えたタイプが
支流になって来るでしょうが、新たな試みも始まっています。
エンジンメーカーの脱炭素化への取り組み
研究開発作業は短期的な改善と 2030 年代に向けた飛躍を目指します
航空機エンジンメーカーが航空輸送の脱炭素化に向けた取り組みの先頭に立っている
ことから、今後10年ほどで推進技術はジェット機時代の幕開け以来最大の進歩を遂
げるでしょう。CFM インターナショナル、プラット・アンド・ホイットニー、ロー
ルス・ロイスの 3 大ターボファン メーカーは、持続可能な航空燃料 (SAF) の使用の
標準化から始まり、電気および水素推進に向けて進む多段階の作業に多額の投資を行
っています。
プラット・アンド・ホイットニーは、現在から 2050 年までに、よりクリーンでより
効率的なエンジンを導入するためのいくつかの道を追求し始めています。米国グルー
プの先進推進および材料技術担当副社長であるフランク・プレリ氏によると、目標
は二酸化炭素の削減だけでなく、その他の有害物質の削減にも重点を置いていると
のことです。窒素酸化物(NOx)を含む排出ガスも含まれます。
同社は短期的には、ギア付きターボファンの GTF Advantage バージョンを
A320neo 旅客機で利用できるようにすることに引き続き注力しています。このエン
ジンは現行の GTF と比較してさらに 1% 燃費が向上し、V2500 などの初期のエン
ジンと比べて性能マージンが 17% に増加します。
RTX グループはハイブリッド電気の進歩を推進
さらに、RTX 技術グループの一員であるプラット・アンド・ホイットニーは、来年初め
にカナダで飛行試験を開始することを目指して、ハイブリッド電気技術の実証機の開発
を続けています。パワートレインは、姉妹会社のコリンズが開発した1メガワットの電
気モーターと1メガワットのエンジンを組み合わせ、ミッションベースでエネルギー性
能の30パーセント向上を目指します。先月、プラット・アンド・ホイットニーは、
スイス企業H55がこのプロジェクトにコミットした1,500ボルトのバッテリーをサポート
するモバイル充電ユニットの開発を発表したばかりです。
「各エンジンの電気モーターを使用して推力能力の 5% を達成することについて話し合
っています」とプレリ氏は語りました。「これにより、[電気モーターまたは発電機の]
一方または両方からエネルギーを取り出してサイクルを変更できるようになり、空気力
学や熱力学サイクルに完全に依存する必要がなくなる、非常に興味深い機能が得られま
す。電力は、たとえばタキシングに使用したり、2 つのモーター ジェネレーターを使用
してコンプレッサーの高回転数と低回転数を個別に変更できるため、エンジンのサージ
マージンを管理したりすることができます。」
イリノイ州ロックフォードにあるコリンズ運営の新しい研究開発センターであるグリッ
ドが、この研究で重要な役割を果たしています。進行中の進歩の規模を示す指標として
RTX ハイブリッド電気飛行デモンストレーター用に開発された 1 メガワットの発電機は
250 キロワットの発電機と比べて 4 倍の電力と 2 倍の電圧を供給し、熱損失と重量は
半分になるとプレリ氏は説明しました。ボーイングの 787 ワイドボディに電力を供給
するために 10 年前に開発された発電機です。
プラット・アンド・ホイットニーは、水素が寄与する可能性を排除するわけではありま
せんが、その推進方式は航空輸送における長期的な役割であると考えています。
「当分の間、水素が広く利用可能になるとは予想していません。また、(水素推進シス
テムの開発には)最初に開発する必要のある基礎技術が数多くあります」とプレリ氏は
述べました。「水素推進コンセプトについては機体製作者との研究が進行中であり、私
たちは(水素エンジンと航空機の)統合に非常に緊密に取り組んでいます。」
プラット・アンド・ホイットニーはまた、エンジン燃焼器からのさまざまなタイプの排
出物に対処するための 2 つのコンセプトを検討しています。これは、水素エンジンでの
水再生と蒸気噴射を使用し、NOx 排出量を 80% 削減できる可能性があります。「また、
材料の耐久性を制限する温度上昇を招くことなく、より高い作動圧力比でエンジンを作
動させることができるため、水サイクルでより高い効率を得ることができます」とプレ
リ氏は説明しました。
CFM は炭素削減に向けた上昇エンジンを活用
CFMは2025年半ばまでに、Riseオープンファンエンジンの技術実証機の飛行試験を
開始する予定です。GEアビエーションとサフランの合弁事業は、エアバスやボーイン
グなどの新型狭胴旅客機のサポートに間に合うように、現在のリープエンジンと比較
して燃料消費量と二酸化炭素排出量を少なくとも20パーセント削減することを目標と
しています。
1月、Safran Aircraft EnginesとフランスのOnera航空宇宙研究機関は、EcoEngine
の5分の1スケールのオープンファン実証機による風洞試験を開始しました。この2つ
のパートナーは、ファン モジュールを実際の風速にさらし、ファン ブレードの設計
を検証することで、ファン モジュールの空気力学と音響特性を成熟させることを目
指しています。
2022年2月以来、CFMとエアバスは、この10年半ばまでにA380の推進システムの
飛行試験を目標に、水素実証プログラムに取り組んできました。この研究は、2035年
までに約200人を乗せて最大2,000海里まで航行できる水素燃料旅客機の開発を中心と
するエアバスのZeroEプログラムに貢献する計画です。
このデモンストレーターでは、GEパスポートのビジネスジェットエンジンを水素で
作動するように改造する予定。この設計では、飛行テストベッドの後部胴体にエンジ
ンを取り付けることが求められています。
エアバスが発表した「ZEROe」の想像図 (C) Airbus
ロールスロイス、UltraFan による燃料消費量の削減を期待
ロールス・ロイスは、英国ダービーの本社で、トレント・ファミリーのターボファン
と統合すると燃料消費量を 25% 削減できると期待される UltraFan テクノロジーの
テストを続けています。同社は、2030年代に就航する可能性のあるナローボディお
よびワイドボディ旅客機向けに、推力25,000ポンドから110,000ポンドの範囲の2軸
3軸、ダイレクトドライブ、ギア付き推進システムのファミリーを導入する予定です。
欧州連合が支援するクリーン・アビエーション・プログラムの一環として取り組んで
いるこのエンジン会社は、吸気口の短縮などのアーキテクチャ変更を通じて、バイパ
ス比を拡大し、ターボファンのエネルギー効率を向上させることを期待しています。
同グループのブリストル施設では、電動スターター発電機と小型エンジンを統合する、
いわゆるマイクロハイブリッド化にも取り組んでいます。このアプローチには、エネ
ルギー効率の改善を補うために飛行のいくつかの段階で電力を利用することが含まれ
ます。
2023年9月、ロールスロイスとパートナーは、パール700ビジネスジェットエンジン
を100パーセントの水素燃料で稼働させる地上試験を実施しました。この研究は英国
のラフバラー大学とドイツの航空宇宙研究機関DLRの支援を受けており、将来の狭胴
機用の水素燃焼エンジンを開発する長期的な取り組みの一環となっているのです。
11月下旬、ロールスロイスは、垂直航空宇宙用eVTOLモデルなどの新型航空機向けの
バッテリー電気推進システムの開発に携わる電気部門の買い手を探す意向を発表しま
した。
水素への取り組み
大手航空会社グループが世界一周水素飛行の夢を支持
ベルトラン・ピカール氏とパートナーは、グリーン水素を動力源として世界中をノンストップで飛行するクライメート・インパルス航空機を製造している。(画像:クライメート・インパルス)
材料専門家であるシエンスコ、エアバス、ダエア・ソカタ(フランスの航空機メーカ
ー)キャップジェミニ(フランスのコンサルタント会社)、アリアネグループ(エア
バスとサフランの合弁会社)を含むパートナーは、スイスの探検家ベルトラン・ピカ
ールが2028年に世界一周無着陸飛行を計画しているクライメート・インパルス航空
機の建設に着手しました。複合材エンジニア兼航海士のラファエル・ディネリによっ
てフランスで組み立てられたこの航空機は、気候変動に対する行動の必要性を促進
するピカール社の取り組みの一環として、グリーン水素燃料のみで動作するように
開発されています。
クライメート・インパルスチームは、2026 年に三胴航空機のテストを開始する準備
を整えることを目指しています。そのパワートレインは燃料電池を使用して発電し
ます。主な課題の 1 つは、9 日間の航海の間、液体水素を摂氏マイナス 253 度とい
う低い温度で安全に保管することです。ディネリ氏はピカール氏に同行する予定。
航空機実証機の専門家である 49Sud がプロジェクトの技術統括責任者であり、主に
水素推進システムの開発を担当しています。エアバスとダーハーは空力学と構造問題
の専門知識に貢献し、サフランは電気モーターを、アリアンは極低温燃料タンクを提
供します。ダッソー システムズは、エンジニアリング チームにデジタル ツインおよ
びその他の技術ソフトウェアを提供しています。
2015 年、ピカール氏らは太陽光線をすべての動力源とするソーラー インパルス 2 航
空機を世界中で飛行させました。彼のソーラー インパルス財団は、環境利益と経済的
実行可能性の両方をサポートするプロジェクトに取り組んでいます。
「環境への不安に満ちたこの世界では、持続可能な進歩につながる破壊的な解決策を
示すことで希望を取り戻し、行動を刺激する必要がある」とピカール氏はコメントし
ました。「効率的な解決策は、市民や環境活動家から政治家やビジネスリーダーに至
るまでの人々を団結させ、物語を犠牲と恐怖から熱意と行動に変えるでしょう。」
ベルトラン・ピカール氏は、スイスの飛行家です。パイロットとしてブライトリング
オービター3(ロジェ気球)で、1999年3月1日から21日にかけての20日間弱の飛行
で気球による初の無着陸世界一周飛行を達成しました。
彼のの祖父は、著名な気球飛行家、深海探検者で気球による高度記録を達成。父は、
は有人潜水深度記録を作った海洋探検者という冒険家一族です。
ピアセツキ、軍の支援を受けて水素動力PA-890ヘリコプターの開発
ピアセツキのPA-890水素動力ヘリコプターはパイロット1名と乗客7名を乗せて200海里を航行する。(画像: ピアセツキ航空機)
ピアセツキ・エアクラフト・コーポレーション(PiAC)は、10年末までに水素燃料ヘリ
コプターを市場に投入する計画を強化しています。米空軍の支援で大幅に加速した開発
作業には現在、推進システム用の660キロワットのテストリグをアイアンバードユニッ
トに進化させ、同社が開始を目指している本格的なプロトタイプへの道を切り開く作業
が含まれており、 2028年に飛行予定です。
PA ー890スローローター翼複合ヘリコプターは、 200 海里を超える航行でパイロット
1 名と最大 7 名の乗客を乗せることができると予想されています。予想ペイロードは
1,660ポンド、最大離陸重量は7,000ポンドです。
ペンシルベニアに拠点を置くPiACは、この航空機が緊急医療飛行、貨物物流、人員輸
送などの商業用途と防衛用途の両方に使用され、商業エアタクシーの運行にも採用さ
れる可能性があると期待されています。同社は、PA-890 が現在のタービン ヘリコプ
ターと比較して運用コストを 50% 削減し、さらに静粛性が高く、排出ガスもゼロで
あると期待しています。
「私たちはいくつかの重要な進歩を遂げており、私たちが目指しているのは、垂直飛行
に利用できるエネルギー密度をバッテリーに比べて約5倍高めることです」と社長兼最
高経営責任者(CEO)のジョン・ピアセツキ氏は語りました。「私たちは、eVTOL航
空機から得られるよりも長い航続距離を必要とする通信事業者の需要を満たすために、
この投資を正当化するのに十分な堅実性があると思われる市場を目指しています。」
PA-890は、ゼロアビアが開発中の高温陽子交換膜(HTPEM)燃料電池システムを搭載
する予定で、ゼロアビアは最大約80人乗りの既存旅客機を改造する計画を進めていま
す。アメリカ空軍との協力の一環として、PiAC はすでに 80 キロワットの推進システ
ムを使用した 2 人乗りの概念実証デモンストレーターを製作しました。
同社によれば、5 社の発売予定顧客が PA-890 に興味を示しているという。今のとこ
ろ、彼らの身元は非公開のままですが、動作要件や好みに関する情報をプログラムに
提供しています。「例えば、救急医療分野における新たなトレンドにより、顧客はよ
り高度な機器を搭載できるように、運航する航空機の積載量の増加を推進しています」
とピアセツキ氏はコメントしました。
航空輸送に対する脱炭素化への圧力は高まっているかもしれないが、ピアセツキ氏は、
潜在的な顧客が水素に示している関心は主に経済学によってもたらされていると述べ
ました。同氏は、「民間ヘリコプターの運航者の利益率はわずか約4%であるため、
手頃な価格で運航することが彼らにとって存続の課題である」と述べ、水素燃料電池
システムはタービンエンジンよりも可動部品がはるかに少ないため、メンテナンスコ
ストが大幅に削減されると付け加えました。
まとめ
このように各メーカーやサプライヤーは、完全なるカーボンニュートラルに向けての
取り組みを行っています。全電動型の航空機は、エンジンのパワーが不足しているた
めに、搭載量や航続距離に問題があります。そこで、水素エンジンやハイブリッド型
のエンジンを模索しています。
水素エンジンは、日本の企業がお得意とする分野です。日本から、水素ベンチャーが
誕生するのを心待ちにしています。
それでは今日はこの辺で・・・
またお会いできる日を楽しみにしています。
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