エミレーツはなぜ大型機を欲しているのか?

飛行機

皆さんこんにちは!

コロナのパンデミックからいち早く復活した中東の雄、エミレーツ航空

世界経済が縮小すると共に航空機もよりコンパクトで燃費の良いA321XLRにシフトする中

大型機にこだわるエミレーツ。その真相はいかなるものなのか?

ガメコとエミレーツ、777とA380のMRO契約を延長

エミレーツ航空A380機内

クレジット: ロブ・フィンレイソン

エミレーツ航空と広州飛機メンテナンス工程有限公司(Gameco:ガメコ)は、エミレーツ

航空のエアバスA380およびボーイング777フリートの重整備サポートを延長する新たな複数年契約を締​​結した。

ガメコは2023年9月、中国・広州の施設でエミレーツ航空のA380の全機重整備を開始し

2025年4月には777フリートにもサポートを拡大しました。最新の契約では、777重整備

契約が新たな3年契約として2029年まで延長されました。

ガメコによると、現在約20機種の航空機にわたって31の重整備ラインを運用しており、

うち4ラインは777専用です。これまでに同社はエミレーツ航空の777型機9機の重点検を

完了しており、777 C型機の点検の平均所要時間は約25日だという。

エミレーツ航空は、世界最大のA380と777の航空機群を運航しています。

AviationWeekネットワーク フリートディスカバリーデータベースによると、同社は96機

のA380と135機の777ファミリーの航空機を運航しています。

【時代に逆行?】世界が「小型機」に走る中、なぜエミレーツ航空だけが「超大型機A380」にこだわり続けるのか?その驚愕の戦略を徹底解剖!

航空業界のニュースを見ていると、最近のトレンドは明らかに「ダウンサイジング」ですよね。

燃費が良く、長い距離を飛べる単通路(ナローボディ)機、エアバスA321XLRの登場に

より、多くのエアラインが「大型機で大量輸送」から「中・小型機で直行便を増やす」戦略へとシフトしています。

しかし、そんな世界の潮流をあざ笑うかのように、我が道を行く巨人がいます。 そう、ドバイを拠点とするエミレーツ航空です。

彼らは世界最大の旅客機エアバスA380を100機以上保有し、今後もボーイング777Xという

超大型機を主力として導入しようとしています。「燃費が悪い」「時代遅れ」と揶揄される

こともある大型機に、なぜ彼らはこれほどまでに執着するのでしょうか?

今回は、エミレーツ航空が「時代に逆行」してまで貫く、計算し尽くされた「超・大量輸送戦略」の裏側を、深掘りしていきます。


そもそも「ビジネスモデル」が世界と違う

まず大前提として、エミレーツ航空は他の航空会社とは戦っている土俵が全く違います。

欧米の航空会社(ユナイテッドやルフトハンザなど)や日本のJAL/ANAは、需要に合わせて

適切なサイズの飛行機を飛ばすことを重視します。地方都市から地方都市へ、需要が少ない

なら小型機で飛ばせばいい、という発想です(これが「ポイント・トゥ・ポイント」方式へのシフト)。

しかし、エミレーツの戦略は完全なる「ハブ・アンド・スポーク」の一点張りです。

  • 世界中の乗客を、一度ドバイに集める。

  • ドバイで乗り換えさせて、世界中に再分配する。

世界人口の3分の2が、ドバイから飛行機で8時間以内の場所に住んでいると言われていま

す。この地理的優位性を活かすには、チマチマと小型機を飛ばしていては追いつきません。

世界中からドバイに集まる何万人もの人間を、巨大な掃除機のように吸い込み、巨大な

ポンプのように吐き出す。そのためには、「バス」ではなく「巨大客船」が必要なのです。

彼らにとってA380は、ただの飛行機ではなく、効率よく人をさばくための「空飛ぶパイプライン」なのです。

「スロット(発着枠)」という物理的な限界

これが意外と知られていない、しかし最大の理由かもしれません。

エミレーツが就航したい世界の主要空港(ロンドン・ヒースロー、東京・羽田、ニュー

ヨーク・JFKなど)は、すでにパンク状態です。飛行機を飛ばしたくても、離着陸の権利(スロット)に空きがありません。

もし、ヒースロー空港の貴重なスロットを1枠しか持っていないとしたら、あなたはどちらを選びますか?

  • A. 最新鋭のA321XLRで、200人を運ぶ。

  • B. 超大型のA380で、500人を運ぶ。

答えは明白ですよね。スロットが制限されている以上、1回のフライトで運べる人数を最大化するしか、売上を伸ばす方法がないのです。

特にエミレーツにとって最重要市場であるロンドン線などは、A380を1日何便飛ばしても

満席になるほどの需要があります。ここで小型機を使うことは、みすみす利益をドブに捨てるようなものなのです。

「圧倒的な体験」という差別化戦略

「A321XLRで10時間のフライト」と聞いて、どう思いますか? 「最新機材だから快適」と

思う反面、「狭い通路一本の機内で10時間は息が詰まる」と感じる人も多いはずです。

エミレーツはここを逆手に取っています。「狭くて効率的な移動」を提供する他社に対し、

「広くて豪華な体験」を提供することで差別化を図っているのです。

A380の広大なキャビンだからこそ実現できる、ファーストクラスの「シャワースパ」や

ビジネスクラスの「機内ラウンジ(バーカウンター)」。これらは単なる贅沢ではなく、

「エミレーツを選ぶ理由」を作るための強力なマーケティングツールです。

「どうせ同じような値段なら、狭いA321より、バーで酒が飲めるA380に乗りたい」

顧客にそう思わせた時点で、エミレーツの勝ちなのです。機材の経済性(燃費)だけで

見れば小型機が有利ですが、「集客力(単価×搭乗率)」まで含めたトータルの経済性では、A380が勝るケースが多々あるのです。

 隠されたドル箱「ベリーカーゴ」

旅客機の床下(ベリー)には、乗客の荷物だけでなく、商業用の貨物が積まれています。実はこれが航空会社の利益を大きく左右します。

A321などのナローボディ機は、乗客の荷物を積むと、商業貨物を積むスペースはほとんど

残りません。 しかし、B777やA380などのワイドボディ機は、大量のコンテナを積むことができます。

ドバイは世界的な物流ハブでもあります。 「乗客のチケット代」+「大量の貨物収入」

この二階建ての収益構造を作れるのも、大型機ならではの強みです。特にコロナ禍で旅客が

激減した際、エミレーツが比較的軽傷で済んだのは、大型機による貨物輸送能力があったからこそと言われています。

エミレーツの未来:A380の次はどうする?

とはいえ、A380は生産が終了してしまいました。エミレーツも永遠にA380を飛ばせるわけではありません。

そこで彼らが次に選んだのが、ボーイング777X(777-9)です。 これは双発機であり

ながら、かつてのジャンボジェット(B747)並みの大きさを誇る、現代における最大級の

航空機です。また、少しサイズを落としたエアバスA350-900も導入を開始しています。

しかし、注目すべきは、彼らが決して「単通路機(ナローボディ)」を長距離国際線の主力にしようとはしていない点です。

あくまで「ワイドボディ(広胴機)」にこだわり、大量輸送と快適性を維持する。 世界中の

航空会社が「効率化・小型化」という同じ方向を向いてコモディティ化していく中で、

エミレーツの「豪華一点主義・大量輸送」という逆張り戦略は、今後ますますその輝きを増していくでしょう。

まとめ:逆行ではなく「王道」

エミレーツの戦略は、決して時代遅れの意地などではありません。

  • 地理的優位性(ドバイハブ)

  • 空港の混雑(スロット制限)

  • 顧客体験(ラグジュアリー)

  • 貨物収益

これら全ての要素をパズルのように組み合わせた結果、「大型機を飛ばすことが最も合理的である」という結論に至っているだけなのです。

次に空港でエミレーツのA380を見かけたら、「燃費の悪いデカい飛行機だな」ではなく

「世界中の戦略をあざ笑う、最強の稼ぐマシーンだな」と敬意を表して眺めてみてくださ

い。その巨大な翼には、緻密な計算と野望が詰まっているのですから。

コメント

タイトルとURLをコピーしました