2026年7月24日まで、あと119日。
皆さんこんにちは!吉川哲也です。
今日はとても大切な話をします。私がこのブログを書き続け、UPRT JAPANとともに「日本初のLSAフライトスクール創設」を目指す理由——その核心にある話です。
2026年7月24日。この日、アメリカの航空規制が大きく変わります。FAA(米国連邦航空局)の新ルール「MOSAIC」——Modernization of Special Airworthiness Certification——の最終フェーズが施行されます。
EAAは「過去20年以上で最大の航空変革」と評価しています。小さな日付に見えますが、世界の空の歴史が変わる日です。そして日本の航空界はまた、この変革を素通りしようとしています。
■ MOSAICとは何か——22年分の規制改革
まず基礎から説明します。LSA(ライト・スポーツ・エアクラフト)は、2004年にFAAが創設した「軽量スポーツ機」の新カテゴリーです。
それ以前の小型機は、どんな機体でも型式証明(耐空証明)が必要で、パイロットも厳しい身体検査と多くの訓練時間が必要でした。LSAはこれを根本から変えました——軽量・低速・シンプルな機体に限定することで、認証コストを下げ、運転免許証で飛べる「スポーツパイロット証明」を生み出したのです。
これが航空の裾野を一気に広げました。欧米で爆発的にフライトスクールが増え、パイロット人口が増え、航空産業全体が活性化しました。
しかし2004年当時のLSA規定は、すでに時代遅れになっていました。最大重量600kg、2座席、最高速度120ノット——この制限が、新技術の導入を阻んでいたのです。そこで20年以上の議論を経て生まれたのが、MOSAICです。
■ MOSAICで何が変わるのか——フェーズ別に整理
フェーズ1:2025年10月22日施行済み(スポーツパイロット特権の拡大)
- 失速速度上限を45KCASから59KCASへ引き上げ
- 4座席機での飛行が可能に(同乗は1名まで)
- 夜間飛行が可能に(訓練・BacicMed取得が条件)
- 引込脚・可変ピッチプロペラが使用可能に(訓練・教官認定が条件)
- セスナ172・パイパー・チェロキーなど多数の従来型機がスポーツパイロット対象に
フェーズ2:2026年7月24日施行(LSA機体認証の刷新)
- 重量制限を完全撤廃→失速速度ベースの性能基準へ
- 最高速度を250KCASまで拡大(従来の2倍以上)
- 電動・ハイブリッド推進系がLSA認証対象に
- eVTOL(パワードリフト機)もLSAカテゴリーに含まれる
- 商業飛行(条件付き)が一部解禁
- フライトスクールでの訓練機として使用可能な機体が大幅拡大
端的に言えば——「重くて速くて電動でもOK、夜も飛べる、4人乗れる」時代になったのです。これはもはや「小さなLSA」ではなく、本格的な訓練・移動手段としての航空機です。
以下の表で、旧LSA・新MOSAIC・日本の現状を一気に比較します。
| 項目 | 旧LSA(〜2025) | MOSAIC(2026〜) | 日本(現状) |
| 最大重量 | 600kg(1,320lb) | 重量制限なし(失速速度基準) | 225kg(超軽量機) |
| 座席数 | 2座 | 最大4座(教育は2座) | 2座 |
| 最高速度 | 120KCAS | 250KCAS | 185km/h(約100KCAS) |
| 電動推進 | 不可 | ✅ 対象 | 規定なし |
| 夜間飛行 | 不可 | ✅ 訓練後可能 | 不可 |
| 引込脚 | 不可 | ✅ 訓練後可能 | 不可 |
| 商業飛行 | 限定的 | ✅ 条件付き可能 | 原則不可 |
| 身体検査 | 運転免許証でOK | ✅ 運転免許証でOK | 航空身体検査必要 |
■ LSAの「震源地」はもうアメリカではない
ここで重要な認識を改めてほしいことがあります。
LSAはアメリカで生まれました。しかし今や、その中心地はヨーロッパとアジアです。
ヨーロッパ——機体製造の世界リーダー
世界市場をリードするLSAの多くは、チェコ・スロバキア・スロベニアなど中欧の精密機械技術を持つ国々で製造されています。
- Bristell(チェコ・BRM Aero)——世界1,000機以上納入。Rotax 916iS搭載の最新機はクルーズ320km/h超。訓練から長距離ツーリングまでこなす万能機
- Pipistrel(スロベニア)——電動LSA「Velis Electro」でFAA型式証明を世界初取得。Electric Trainer部門の世界標準に
- Sling Aircraft(南アフリカ)——4座席MOSAIC対応機を2025年投入。コストパフォーマンスが高く飛行学校での採用が急増
- Tecnam(イタリア)——エアライン系訓練校にも採用されるP2008・P2010シリーズ
アジア——急成長する新興市場
中国はすでに独自のLSA産業を確立し、国内だけで年間数百機規模の生産体制を整えつつあります。オーストラリア・韓国でもLSAを活用したフライトスクール網が整備されています。
日本だけが、この世界的潮流から取り残されています。
■ 日本の現実——「法律がない」という壁
なぜ日本でLSAが普及しないのか。結論から言えば——日本の航空法にはLSAの定義が存在しないからです。
日本の現状(2026年3月時点)
- 日本でLSAに相当する機体は「超軽量動力機」として扱われる
- 超軽量動力機の自重制限は2座席で225kg——BristEllは空虚重量340kg超のため「超軽量機」に該当しない
- LSAとして輸入・飛行するには航空法第11条の「試験飛行等許可」が必要
- この許可は最大4ヶ月ごとに更新が必要——事業として継続する訓練には事実上使えない
- 航空身体検査が必要——スポーツパイロット相当の簡易資格がない
- 夜間飛行・商業運航は原則不可
2022年8月、国土交通省がサーキュラーを改定し、輸入LSAの試験飛行が「条件付きで」認められるようになりました。しかしこれはあくまで「試験飛行扱い」。フライトスクールとして継続的に訓練に使うには、依然として大きな壁があります。
米国・欧州・オーストラリアでは「週末に気軽に飛べる」存在であるLSAが、日本では事務処理と申請の迷路の中に閉じ込められている——これが今の日本の現実です。
「乗りものニュース」の取材記事でも指摘されています。「LSAが普及していない日本だけがこのトレンドの波に乗ることができず、航空産業全体の衰退が進んでいる」と。
■ 私が目指す「日本初LSAフライトスクール」——具体的な構想
では、この現状の中で私はどうするのか。正直に、具体的に話します。
① 機種選定——Bristell B23(Rotax 916iS)
私が第一候補として考えているのは、チェコのBRM Aero社製「Bristell B23」です。理由は明確です。
- MOSAIC対応の最新型LSA。空虚重量340kg、最大離陸重量600kg(旧基準)から720kg(MOSAIC基準)へ拡大予定
- Rotax 916iS(141馬力ターボ)搭載——高度での出力低下が少なく、山岳地帯・北海道の地形に適応
- コックピット幅130cm——2人が並ぶと窮屈な旧世代LSAとは別物。訓練でのインストラクターと学生の並列着席が快適
- Garmin G3X Touch採用——ガラスコックピットで現代のエアライン訓練に接続できる計器環境
- BRS(バリスティック・リカバリー・システム)対応——機体全体用パラシュートで安全性が大幅に高い
- 世界1,000機以上の納入実績——部品供給・整備ネットワークが安定
副候補として、訓練コスト重視の場合はSling 4(4座席・MOSAIC対応)、電動訓練機導入を視野に入れる場合はPipistrel Velis Electroも検討します。
② 拠点空港——ニセコ周辺・北海道
私が考えている訓練拠点は北海道、特にニセコ周辺です。理由は3つあります。
- 訓練空域が広大——北海道は低高度の訓練空域が確保しやすく、都市圏に比べ管制混雑が少ない
- インバウンド需要——ニセコは世界有数のスキーリゾート。海外からの富裕層・ビジネス需要と「フライト体験」の親和性が高い。将来的な体験飛行・観光フライト事業への展開も視野
- eVTOL拠点としての先行性——将来の空飛ぶクルマ運用を見据えた訓練ハブとしても機能させたい
近郊の候補空港として、中標津空港・帯広空港・旭川空港周辺の飛行場、またはニセコ周辺の自家用飛行場(将来的な滑走路整備を含む)を検討中です。
③ 訓練空域と訓練内容
- 基本訓練:非管制空域(Class G)・1,000ft AGL以上での通常操縦訓練
- UPRT組み込み:LSA訓練にUPRT(異常姿勢回復訓練)を標準カリキュラムとして統合——これが他のフライトスクールとの最大の差別化点
- イメージフライト訓練:飛行前の脳内シミュレーションを訓練標準として採用
- 将来展開:夜間訓練(MOSAIC対応後)、計器飛行基礎、eVTOL操縦訓練への接続
「安く、簡単に、安全に空を飛ぶ」だけのフライトスクールは作りません。LSAの機動性と低コストを活かしながら、プロが認める訓練品質を実現する——それが私の目指すスクールです。
■ 日本の空に必要なこと——規制改革への提言
現実を変えるためには、規制も変えなければなりません。私が国土交通省航空局に望むことを明記します。
- LSAの定義を航空法に正式に組み込む(超軽量動力機とは別カテゴリーとして)
- スポーツパイロット相当の簡易操縦資格を創設する(運転免許証レベルの身体検査で取得可能な資格)
- LSAを用いた飛行訓練事業の継続的許可制度を整備する(4ヶ月更新という現行制度の抜本的見直し)
- 日本版MOSAIC相当のLSA性能基準を策定し、最新機体の導入を促進する
日本の航空産業が世界から取り残されていることは、パイロット不足の問題とも直結しています。裾野が広がらなければ、エアラインへの新しい人材も育ちません。LSAは「遊びの飛行機」ではなく、航空産業の未来を支える「入口」です。
■ 7月24日に向けて——今、私は動いています
あと119日。
私は今、機種選定・空港調査・パートナー探し・規制当局との対話を同時に進めています。一人での立ち上げは簡単ではありません。でも、やらなければ誰もやらない。
LSAとMOSAICを、日本で「知っている人」はまだほんの一握りです。このブログを読んでいるあなたは、今日からその一人になりました。ぜひ、周りの方に話してください。空への扉が、もっと広く開く日が来ると信じています。
7月24日、私は何かを動かします。続きは、このブログとYouTube「吉川空塾」(準備中)でお伝えします。
今日も、空は待っています。
【参考資料】
・AOPA「MOSAIC Explained FAQ」(2025年8月)
・FAA MOSAIC Final Rule(2025年7月18日署名・10月22日第1フェーズ施行)
・EAA AirVenture Oshkosh 2025 MOSAIC発表
・国土交通省航空局サーキュラーNo.1-006(LSA試験飛行許可)
・「乗りものニュース」LSA特集記事(2022年・2023年)
・Bristell by BRM Aero 公式仕様
吉川哲也 / 元航空自衛隊戦闘機パイロット・現役民間航空機パイロット
UPRT JAPAN設立準備中 / 日本初LSAフライトスクール構想中
ブログ「遙かなる大空」 / YouTube「吉川空塾」(準備中)



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