幕張、Japan Drone 2026 開幕。

ドローン、空飛ぶ車

UPRT JAPAN INITIATIVE — VOL.11 / FROM MAKUHARI

幕張、
開幕。

— Japan Drone 2026 初日レポートと、
「空×サイバーセキュリティ」という新たな論点 —

執筆:UPRT JAPAN INITIATIVE 代表 吉川 哲也(現役エアラインパイロット)
公開日:2026年6月4日(Japan Drone 2026 会期2日目)
会場:幕張メッセ 国際展示場 5・6ホール


1. はじめに——昨日、ついに開幕

2026年6月3日(水)、第11回 Japan Drone 2026 が幕張メッセで開幕しました。本ブログでも World AAM Series Vol.8〜10 を含む合計10本の記事を通じて、本展示会への期待を皆さまにお伝えしてきました。そしてついに、当日を迎えました。

初日の会場は、想像を上回る活況でした。出展者数300社・団体、会期中24,000名の来場が見込まれる、国内最大級のドローン・次世代エアモビリティ専門展示会。その熱量を、現役エアラインパイロットとして・UPRT JAPAN INITIATIVE 代表として、本日の会期2日目の朝、皆さまにお届けします。

本日の記事は、会場で得た情報・出会い・発見を、「現場からのリアルタイム・レポート」としてお伝えします。中でも、初日に開催された「空×サイバーセキュリティ」セッションで提起された新たな論点は、UPRT JAPAN INITIATIVE として今後深く取り組むべき領域として強く印象に残りました。


2. 第11回 Japan Drone 2026 の規模と注目展示

過去最大規模での開催

指標 2026年
出展者数 300社・団体(前年285)
来場見込み 24,000名(前年23,049)
テーマ(Japan Drone) ドローンによるインフラ革命〜地域創生と街づくり〜
テーマ(AAM EXPO) 空飛ぶクルマ(AAM)の新たな挑戦〜イノベーションが離陸する〜
主催 JUIDA(日本UAS産業振興協議会)/コングレ

11回目を迎える本展示会は、過去最大規模での開催となりました。これは、本ブログ Vol.6 で論じた「競争から協調へ」の業界構造転換、Vol.8 で論じた「ロードマップ 2026」、Vol.9 で論じた「Joby×ドバイ」、Vol.10 で論じた「米国 eIPP」——これらすべての世界的潮流が、いま日本の幕張に結集していることの証明です。

本日のおすすめ注目展示

会期2日目(本日)以降、ぜひ訪れていただきたい注目ブースを、いくつかご紹介します:

01

HIEN Aero Technologies × 矢島工業 共同ブース

本ブログでも何度も紹介してきた、ガスタービンハイブリッドeVTOL「YAJIMA-HIEN SONIC」コンセプトモデル、チルトローター型「Dr-One type TR」を展示。LSA(Orlican M-8 EAGLE・Bristell B23)導入提案パンフレットも配布中。日本のスケーラブル空モビリティ設計の最前線に直接触れられます。

02

NEDO ブース(次世代空モビリティ)

2022年度から開始した次世代空モビリティ事業の成果展示。性能評価手法・運航管理技術の開発成果、スケールモデル機の展示は必見。本ブログ Vol.8 で論じた「ロードマップ 2026」の技術的裏付けを、ここで実物として確認できます。

03

日本気象株式会社ブース(空の安全インフラ)

新型ドップラーライダー 「Beam6x Windpower」 と気象観測ドローン 「Meteodrone MM-670M」 の実機展示。本ブログ Vol.7「同じ滑走路で、4日間に2件」で取り上げた「気象・環境による滑走路リスク」の解として、極めて重要な技術です。

04

NTT e-Drone Technology ブース(本日16:10 屋外デモ)

「インフラ点検」「防衛・安全保障」「農業・鳥獣害対策」の3分野の最新ドローンを展示。本日6月4日(木)16:10より、屋外会場にて鳥獣害対策ドローン「BB102」のデモンストレーション実施。地方創生への実装事例として、地方自治体関係者必見です。


3. 初日の最大の発見——「空×サイバーセキュリティ」

本日のブログで、私が最もお伝えしたいのは、昨日の国際コンファレンスで GMO インターネットグループが主催した 「空×サイバーセキュリティ」 パネルディスカッションです。これは、UPRT JAPAN INITIATIVE がこれまであまり深く扱ってこなかった、しかし極めて重要な論点です。

ドローンや空飛ぶクルマの自律飛行が現実となりつつある今、空のセキュリティをめぐる脅威への対応を、官民・機体メーカー・セキュリティの各専門家が議論する。
これは、これからの航空安全において、UPRT と並ぶ第二の柱になる領域である。

なぜ今「空×サイバーセキュリティ」なのか

本ブログ Vol.10 で米国 FAA の eIPP プログラムを論じた際、26州で実証される対象に 「自律飛行技術」 が含まれることに触れました。Vol.8 で論じた日本のロードマップでも、2030年代後半に「自動・自律運航の一部実現」 が明記されています。つまり、空モビリティの未来は、「機体に乗らないパイロット」「コンピュータが意思決定する飛行」 へと、確実に進んでいます。

そこで突きつけられる本質的な問いがあります——「その意思決定システムが、悪意あるサイバー攻撃を受けたらどうなるのか」

従来の有人航空機では、最終的な安全の砦は「コックピットのパイロット」でした。サイバー攻撃で自動システムが誤作動しても、パイロットがマニュアル操作で安全を確保できる。しかし、自律飛行のドローン・eVTOL では、その最終砦が存在しない。これが、空×サイバーセキュリティの本質的な恐怖です。

世界で起きている、現実の脅威

すでに世界では、ドローンへのサイバー攻撃事案が複数報告されています:

  • GPSスプーフィング:偽のGPS信号を送り込み、ドローンの位置を誤認識させる手法。中東・東欧で複数事案
  • 遠隔操縦ハイジャック:通信プロトコルの脆弱性を突き、ドローンの操縦権を奪取
  • 機体ファームウェアへのマルウェア注入:機体に持続的なアクセス権を獲得し、任意のタイミングで操作不能化
  • サプライチェーン攻撃:機体製造段階で部品に悪意あるチップを混入

これらは「将来のリスク」ではなく、すでに「現実の脅威」です。そして、2027年に商用エアタクシーが日本の空を飛び始めた時、これらの脅威は人命に直結するレベルへと深刻化します。


4. UPRT JAPAN として、新たに考えるべき5つの論点

「空×サイバーセキュリティ」セッションの議論を踏まえ、UPRT JAPAN INITIATIVE として今後深く取り組むべき論点を、5つに整理しました。これらは、本日以降のブログシリーズで、順次掘り下げていきたいと考えています。

論点①

「サイバー UPRT」という新領域

物理的な異常姿勢(Upset)への対処を訓練するのが従来の UPRT。今後は、サイバー攻撃を受けた状態でも安全飛行を継続するための「サイバー UPRT」という概念が必要になる。これは Paul Ransbury 氏(APS CEO)の6つの層フレームに新たに加わるべき第7層となるかもしれない。

論点②

パイロットのサイバー意識訓練

「GPS表示が不自然」「自動操縦が意図しない挙動」「通信に遅延」——これらのサイバー攻撃の前兆を検知する能力を、現代のパイロットは身につける必要がある。これは LSA や eVTOL を扱う未来の単独操縦者にとって、特に重要なスキルとなる。

論点③

機体側の「セキュアバイデザイン」

HIEN×矢島工業の SONIC コンセプト、Joby、Beta、Archer など——次世代機体メーカーは、設計段階からサイバー耐性を組み込む「セキュアバイデザイン」を必須要件としなければならない。完全国産サプライチェーンの優位性は、サプライチェーン攻撃への耐性という点でも大きい。

論点④

運航管理側の「ゼロトラスト」

本ブログ Vol.8 で論じた「AAM コリドー」「運航管理システム」——これらの空のインフラそのものが、サイバー攻撃の対象になる。「すべての通信を信頼しない」というゼロトラストアーキテクチャを、運航管理システムに組み込む必要がある。

論点⑤

国際協調による脅威情報共有

サイバー攻撃は国境を越える。FAA・EASA・JCAB の3当局が連携した脅威情報共有スキームは、これからの空のセキュリティに不可欠。本ブログ Vol.10 で論じた「日本の第三の道」は、この国際協調領域でこそ強みを発揮できる。


5. 御法川 学 教授ご講演——「LSAの視点からのAAMスケーラブル開発」

本ブログでも繰り返しご紹介してきた、法政大学 御法川 学 教授のご講演「日本における AAM のスケーラブルな開発プロセス — LSA の視点から」。会期中の重要な学術的ハイライトです。先生の論点は、本ブログ Vol.2「日本のパイロット養成に革命を」、Vol.4「10秒以内に、命を分ける」、Vol.8「2027年、空が変わる」と完全に共鳴しています。

御法川先生のプレゼンの核心

先生のキーワード 実装としての例
仕様規定型 → 性能基準型へ MOSAIC LSA ルール(2026年7月施行)
シームレスな機体スケール Dr-One (25kg) → HIEN 2 (150kg) → HIEN 6 (600kg) → HIEN X (1,000kg)
ボトムアップ実証 S→M→L クラスへの段階的拡張(SONIC コンセプト)
ルールの輸入から基準の共創へ 完全国産サプライチェーン構築

本ブログを継続的にお読みいただいている皆様には、すでにお分かりかと思います。御法川先生の論理と、HIEN×矢島工業の実装と、UPRT JAPAN INITIATIVE の訓練文化は、同じひとつの絵を異なる角度から描いています。Japan Drone 2026 という場は、その3つが現場で交差する、貴重な機会なのです。


6. 会場でお会いした、忘れがたい方々

初日の会場では、本ブログを継続的にお読みいただいている多くの方々と、直接お会いすることができました。「Vol.5 の規制強化スパイラル、現場の声として共感した」Vol.7 のタイヤ事案、業界として真剣に考えるべき問題提起だった」「Vol.9 の Joby×ドバイ、日本の立ち位置を考え直すきっかけになった」——多くの読者の方々が、ブログを通じて深く考えてくださっていることを、肌で実感しました。

これは、現役エアラインパイロットとしてブログを書き続けてきた者として、何よりの喜びです。心から感謝申し上げます。

会期はあと2日。本日4日(木)、明日5日(金)も、私は会場のどこかにいます。HIENブース、御法川先生講演会場、国際コンファレンス会場、AAMコーナー——どこかで見かけられたら、ぜひ「ブログ読んでます」とお声がけください。皆様との対話が、次のブログ・次の活動を生む原動力となります。


7. 本日(6月4日)の注目イベント・スケジュール

本日の会場で、特にご注目いただきたい時間帯をお伝えします:

時刻 イベント 場所・備考
10:00 会場オープン 国際展示場 5・6ホール
午前 国際コンファレンス各種セッション 国際会議場(事前登録推奨)
午前・午後 Yokoito AM「3Dプリント×ドローン製造」講演 Suzaku ブース内
16:10 NTT e-Drone「BB102」鳥獣害対策ドローン デモンストレーション 屋外会場(必見)
17:00 会場クローズ

8. 結びに——会期はまだ2日ある

Japan Drone 2026 は、まだ始まったばかりです。会期は本日4日、そして明日5日(金)まで。2日間で得られる業界の最新動向、技術トレンド、人脈、そして対話——これらは、お読みになっているあなたの仕事と人生を、確実に豊かにします。

まだご来場の予定がない方も、本日のうちでしたら事前登録で無料入場可能です。京葉線・海浜幕張駅から徒歩5分。お時間が許せば、ぜひ会場にお越しください。本ブログの読者として「お会いしたい」「ブログのテーマを直接お話したい」とお感じいただける方は、特に大歓迎です。

空は、ひとつではなくなる。
有人と無人、自律と他律、平時と有事。

そして、物理空間とサイバー空間が、
今、空モビリティの中で交差し始めている。
その交差点で、未来の航空安全を共に考える3日間が、
幕張でいま、進行中である


9. Japan Drone 2026 ご来場案内

JAPAN DRONE 2026 — MAKUHARI MESSE

会期 2日目/3日目
2026年6月4日(木)〜5日(金)
10:00〜17:00
幕張メッセ 国際展示場 5・6ホール

アクセス:京葉線「海浜幕張」駅 徒歩5分

事前登録(無料):https://ssl.japan-drone.com/


参考資料

📚 公式・主催者情報

  • JUIDA(一般社団法人 日本UAS産業振興協議会)公式発表
  • 株式会社コングレ プレスリリース(2026年4月15日)
  • Japan Drone 2026 公式サイト:https://ssl.japan-drone.com/

📰 出展者・関連企業情報

  • GMOインターネットグループ「空×サイバーセキュリティ」パネルディスカッション
  • NEDO「Japan Drone 2026 出展のお知らせ」
  • NTT e-Drone Technology プレスリリース(2026年5月25日)
  • 日本気象株式会社「Beam6x Windpower / Meteodrone MM-670M」展示
  • HIEN Aero Technologies × 矢島工業 共同ブース

📖 UPRT JAPAN INITIATIVE 関連シリーズ

  • Vol.1:UPRTがパイロットにもたらす本質的な利益
  • Vol.2:日本のパイロット養成に革命を
  • Vol.3:「規制最低基準」のUPRTが、なぜ命を奪い続けるのか
  • Vol.4:10秒以内に、命を分ける
  • Vol.5:処分の繰り返しが、解決をもたらすのか
  • Vol.6:「競争から協調へ」— 25年ぶりの構造転換
  • Vol.7:同じ滑走路で、4日間に2件
  • Vol.8:2027年、空が変わる(World AAM Series ①)
  • Vol.9:米国メーカーが、米国を選ばなかった理由(World AAM Series ②)
  • Vol.10:米国の本気と、26州の実証(World AAM Series ③)
  • Vol.11:幕張、開幕。(本記事)

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